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行政書士と司法書士はどちらも法律および法律事務の専門家であり、違いがわからないと思う人も多いかもしれません。
今回は行政書士と司法書士の違いや、どちらを取得するべきかの判断基準について詳しく解説します。
行政書士と司法書士の違い①仕事内容
行政書士と司法書士の大きな違いは2つあり、そのうちの1つが仕事内容です。
それぞれの独占業務について詳しく解説します。
行政書士の独占業務
行政書士の独占業務は、官公署に提出する書類や事実証明・権利義務に関する書類の作成代行です。
官公署に提出する書類とは、いわゆる許認可に関する書類を意味します。
事実証明・権利義務に関する書類については、以下の例が挙げられます。
- 遺言書や遺産分割協議書などの相続関係
- 売買契約書や賃貸借契約書などの契約書関係
- 定款や株主総会の議事録等の会社関係、会計帳簿
- 帰化申請書や永住許可申請書などのビザ関係
行政書士が扱える書類の種類は1万点以上と膨大な数です。
特定の分野に絞って活動する行政書士も多くみられます。
許認可やビザ関係等、司法が絡まない手続きの大半は行政書士の独占業務です。
司法書士との大きな違いとして「取り扱い分野が広い」点が挙げられます。
司法書士の独占業務
司法書士の独占業務として、以下の5つが挙げられます。
- 登記または供託に関する手続きの代理
- 登記または供託に関する審査請求の手続きの代理
- 法務局へ提出する書類の作成
- 裁判所や検察庁へ提出する書類の作成
- 上記手続きや書類作成に関する相談対応
中でも特に件数が多いのが、登記関連の書類作成や手続き代行です。
また、成年後見人や不在者財産管理人に関する業務、簡易裁判所における訴訟代理人業務も多くみられます。
登記や裁判所・検察庁関連の業務は、行政書士には対応できません。
司法書士は、行政書士に比べて取り扱う範囲自体は狭いものの専門性が高いといえるでしょう。
行政書士と司法書士の違い②難易度
続いて行政書士と司法書士の違いについて、難易度という面から解説します。
合格率
行政書士と司法書士の合格率には、大きな違いがあります。
まずは行政書士の合格率です。
一般財団法人行政書士試験研究センターの公式サイトで公開されているデータによると、直近5年間の合格率は以下のようになっています。
年度 |
合格率 |
令和4年度 |
12.13% |
令和3年度 |
11.18% |
令和2年度 |
10.72% |
令和元年度 |
11.48% |
平成30年度 |
12.70% |
引用元|一般財団法人行政書士試験研究センター「試験結果分析-試験結果の推移」
平均すると約11.6%となります。
続いて司法書士の合格率です。
合格率の公開はされていませんが、受検者数および合格者数は公開されているため、これらの情報を基に直近5年分の合格率を紹介します。
年度 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
令和5年度 |
13,372人 |
695人 |
約5.2% |
令和4年度 |
12,727人 |
660人 |
約5.2% |
令和3年度 |
11,925人 |
613人 |
約5.1% |
令和2年度 |
11,494人 |
595人 |
約5.2% |
平成31年度 |
13,683人 |
601人 |
約4.4% |
参照元|法務省「司法書士試験」
毎年4~5%程度と、行政書士に比べて合格率が低めです。
合格率という面から見ると、行政書士よりも司法書士の方が難易度が高いといえます。
出題範囲
行政書士と司法書士はどちらも法令等の科目が出題されますが、科目数に大きな違いがあります。
行政書士 |
司法書士 |
|
法令等 |
憲法 行政法 民法 商法 基礎法学 |
憲法 民法 刑法 商法・会社法 民事訴訟法 民事執行法 民事保全法 司法書士法 供託法 不動産登記法 商業登記法 |
一般知識等 |
政治・経済・社会 情報通信・個人情報保護 文章理解 |
なし |
司法書士試験の方が扱う法律の数が多いため、出題範囲が広く高度な法律知識が問われるといえるでしょう。
したがって、出題範囲という観点から見ても司法書士試験の方が難易度が高いと考えられます。
必要な勉強時間の目安
行政書士試験の合格に必要な勉強時間は、600〜1,000時間がひとつの目安です。
法律の予備知識がある人や予備校に通う場合は、500時間程度で合格できるケースもみられます。
法律初学者や独学の場合、最低でも800時間は必要といわれています。
一方、司法書士試験の合格に必要な勉強時間の目安は約3,000時間です。
3,000時間は合格に必要な勉強時間の最低ラインであり、より多くの勉強時間をこなすケースが珍しくありません。
司法書士試験は前述のように出題範囲が広く、どの科目も法律系で内容が専門的であるため、多くの勉強量が必要となります。
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行政書士と司法書士 どちらを取得するべき?
行政書士と司法書士の違いについて、仕事内容と難易度という2つの面から解説しました。
最後に、行政書士と司法書士のどちらを取得するべきかの判断基準を3つ紹介します。
判断基準①法律初学者であるか否か
法律初学者である場合、行政書士の方がおすすめです。
司法書士の仕事は、専門性が求められる上、試験難易度も行政書士に比べて高いといえます。
法律初学者が11科目の法律科目を勉強し、高度な知識が求められる業務を行うのは非常にハードルが高いです。
行政書士も国家資格の1つであり、決して難易度が低いわけではありませんが、司法書士に比べると資格を取得しやすいです。
必要な勉強時間が少ないため、働きながら勉強しやすい点もメリットとして挙げられます。
判断基準②資格取得の目的
資格取得の目的が明確である場合、目的に合う方を選ぶのが良いでしょう。
行政書士が向いている人として、以下の例が挙げられます。
- 早く独立開業をしたい
司法書士よりも行政書士の方が独立開業のハードルが低めです。 - なるべく早く何らかの国家資格を取得したい
資格の内容に特別なこだわりがない場合、より難易度の低い行政書士が適しています。
以下のケースに当てはまる場合、司法書士の方がおすすめです。
- 依頼者の権利や利益を守る仕事をしたい
登記関係や裁判所・検察庁へ提出する書類の作成ができる司法書士は、依頼者の権利や利益を守る仕事に携わる場面が多くみられます。 - 幅広い場面で活躍できる資格を取りたい
司法書士の資格は司法書士事務所だけでなく一般企業での評価も高く、転職に有利です。
判断基準③興味のある分野
興味のある分野の試験に挑戦するのも1つの選択肢です。
興味が明確であるにも関わらず別の分野の勉強を続けようとしても、モチベーション維持の難易度が高くなってしまうでしょう。
勉強への意欲がない・集中できない等の恐れがあります。
法律に関する高度な勉強をしたいと考える人は、難易度が高くても司法書士の勉強の方が前向きに取り組める可能性があります。
法律初学者でなくても、許認可やビザに興味がある人は行政書士の勉強が向いているでしょう。
難易度や資格取得の目的を考えることも大切ですが、自分の興味がどこに向いているのかも考慮するのが理想です。
行政書士と司法書士のダブルライセンスもおすすめ
行政書士と司法書士の資格を両方取得することで、活躍の幅が非常に広がります。
たとえば会社設立関係のうち、法務局での登記申請を代行できるのは司法書士、許認可関係の業務ができるのは行政書士のみです。
ダブルライセンスを取得すれば、会社設立に関する一連の業務をすべて1人で引き受けられるようになります。
会社設立に限らず、法律事務について非常に幅広い面で活躍できるようになるといえるでしょう。
また、行政書士と司法書士は学習面での相性も良いといえます。
どちらの試験でも憲法・民法・商法の3科目が出題されるため、一方の資格取得に向けての学習が、もう一方の試験勉強にも活かせるのです。
ダブルライセンスを目指す場合、まずはより難易度が低い行政書士から勉強することをおすすめします。
まとめ
行政書士と司法書士は混同されがちで似ているイメージを持たれやすい資格ですが、仕事内容や難易度に大きな違いがあります。
行政書士は対応できる範囲が幅広く、司法書士は範囲は狭いものの専門性の高い資格です。
また、合格率・出題範囲・必要な勉強時間のいずれをとっても、司法書士の方が難易度が高いといえるでしょう。
行政書士と司法書士のどちらを取得するべきかは、人によって異なるため一概にはいえません。
今回紹介した3つの判断基準から、自分に適している方を選びましょう。
行政書士と司法書士のダブルライセンスを目指すのもおすすめです。
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