転職お役立ち情報
日商簿記1級は2級までに比べて遥かに難易度が高い資格です。会計や財務に関する高度な知識を有していると証明できる資格であり、就職や転職でアピールポイントとなります。
そんな簿記1級について「簿記1級はやめとけ」「他の資格を取った方が良い」という意見を見聞きした経験のある人もいるのではないでしょうか。
今回は「簿記1級はやめとけ」と言われる理由や噂の真偽、簿記1級取得後の主な就職先等を紹介します。
なぜ簿記1級はやめとけと言われる?
簿記1級はやめとけと言われる理由として、主に以下の3つが挙げられます。
難易度が高く、合格率が10%前後と低い
「簿記1級はやめとけ」と言われる理由の1つが、難易度が高く、合格率が10%前後と低いことです。
前提として、簿記1級の1つ下である簿記2級の合格率は15~30%程度で、40%を超える回もあります。
合格率が特別高いわけではありませんが、しっかり勉強すれば合格できるレベルといえるでしょう。
一方、簿記1級の直近10回分の合格率は以下の通りです。
試験回 | 合格率 |
165回(2023年11月) | 16.8% |
164回(2023年6月) | 12.5% |
162回(2022年11月) | 10.4% |
161回(2022年6月) | 10.1% |
159回(2021年11月) | 10.2% |
158回(2021年6月) | 9.8% |
157回(2021年2月) | 7.9% |
156回(2020年11月) | 13.5% |
153回(2019年11月) | 9.8% |
152回(2019年6月) | 8.5% |
※155回(2020年6月開催分)は中止
合格率は毎回10%前後と非常に低く、難易度の高い試験といえます。
また、簿記1級は2級と違い、開催回による合格率の違いがあまり大きくありません。
そのため上位11%程度が合格者になるように調整されていると考えられます。
簿記1級の合格基準は70点ですが、正答率70%以上で合格とは限らず、実質的には相対評価の試験といえるでしょう。
未経験で経理を目指す場合は2級からでも良い
「簿記1級はやめとけ」と言われる2つ目の理由は、未経験で経理を目指す場合は2級からでも十分なためです。
未経験歓迎の経理求人を見てみると、簿記2級合格を必須とする求人は多く存在します。
資格不問でも、必要スキルに「簿記2級程度のスキル」を掲げるケースが多くみられます。
経理として転職するには簿記2級のスキルは必須といえるでしょう。
一方、未経験歓迎で簿記1級を必須とする求人は非常に稀です。
簿記1級を必須とする求人の大半は経理経験者を対象としたものになります。
したがって、未経験で経理を目指すのであれば簿記2級で十分といえるでしょう。
簿記2級でも転職に問題がないという考えから「(あえて難易度の高い)簿記1級をとるのはやめとけ」と言う人もみられます。
簿記1級取得には多くの勉強時間がかかる
簿記1級の取得には非常に長い勉強時間を要します。
簿記3級から簿記1級までのそれぞれの勉強時間の目安は以下の通りです。
勉強時間の目安 |
|
3級 |
約100時間程度 |
2級 |
独学:250時間~350時間程度 通学・通信講座:150時間~250時間程度 |
1級 |
独学:1,000時間~2,000時間程度 通学・通信講座:600時間~800時間程度 |
1日に3〜4時間の勉強時間を確保しても、合格までに半年〜1年近くはかかる計算となります。
このように勉強量の負担が大きいため「簿記1級はやめとけ」という意見を持つ人も多いです。
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簿記1級取得者の平均年収
簿記1級取得者は上場企業や大会社の経理部門等、会計に関する高度な知識が必要な職場に勤める可能性が高いでしょう。
そこで今回は、簿記1級取得者の割合が高いと考えられる大規模な会社の平均年収を紹介します。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模1,000人以上の職場における会計事務従事者の給与等は以下の通りです。
a.決まって支給する現金 | b.年間賞与その他特別給与額 |
a×12ヶ月+b |
35.9万円 |
133.5万円 |
564.9万円 |
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、令和4年度の給与所得者の平均給与は458万円でした。
企業規模1,000人以上の職場における会計事務従事者の給与等は、日本の平均給与を大きく上回る結果です。
したがって、簿記1級取得者の平均年収は日本の平均年収よりも高いと考えられます。
簿記1級は難易度の高さや負担の重さから、「やめとけ」という意見が出るのも珍しくないでしょう。
しかし簿記1級の取得によって高年収が期待できる以上、取得する価値はあるといえます。
簿記1級取得後の主な就職先
簿記1級を取得すれば、会計に関する高度な知識が求められる職場に転職できる可能性が高いです。
今回は簿記1級取得後の主な就職先を2つ紹介します。
上場企業や大会社の経理
簿記1級は上場企業や大会社の経理求人に応募する際に強いアピールポイントとなる可能性が高いです。
前提として、上場企業や大会社の経理求人でも、簿記1級を応募資格としているケースはあまり多くありません。
しかし上場企業や大会社では、連結決算や在外支店を含む本支店会計等、特殊な会計処理が必要な場面が多くみられます。
そのため簿記1級が必須資格ではなくても、簿記1級相当の知識やスキルが必要な可能性が高いです。
簿記1級を取得していれば、高度な会計知識を保有している旨を証明できます。
また、簿記1級の勉強を通して得た知識やスキルを活かし、即戦力として働ける可能性が高いでしょう。
上場企業や大会社の経理は、簿記1級取得者の就職先として有力な選択肢といえます。
会計事務所
会計事務所は記帳をはじめとした業務の代行や税務相談等、会計・税務・経理に関する幅広い業務を行います。
そのため、会計事務所へ就職するには会計・税務に関する専門知識が必要不可欠です。
会計事務所の求人は簿記2級以上を必須資格とするケースが多くみられます。
簿記1級を条件とする求人は多くありませんが、会計関連を専門とする以上、簿記1級取得者が高く評価されるのは間違いないでしょう。
特にクライアントに大手企業やグローバル企業が多い会計事務所では、簿記1級相当の高度な知識を持つ人材が必要です。
そのため、簿記1級取得者が会計事務所で活躍できる場面は多く存在します。
会計事務所への転職活動において、簿記1級は強いアピールポイントになります。
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簿記1級取得で応募できる求人例
簿記1級取得者を歓迎する求人は、会計・税務・経理に関する高度な知識を求めるものが多いです。
会計事務所や大規模な企業、コンサルティングファーム等の様々な選択肢があります。
中でも今回は経理の求人情報について詳しく解説します。
経理の求人情報
一口に簿記1級歓迎の経理求人といっても、業種や仕事内容は様々です。
今回は経理求人のうち例として2つを紹介します。
1.スタンダード上場企業/老舗商船会社での経理求人
業種 |
物流・ロジスティクス |
仕事内容 |
|
想定年収 | 500万円~650万円 |
2.財務経理マネージャー/グロース上場企業/フレックス/フォローアップ体制充実
業種 |
コンサルティングファーム |
仕事内容 |
グローバルコーポレート部経理マネージャーとして
|
想定年収 | 600万円~1,000万円 |
簿記1級歓迎の経理求人
まとめ
簿記1級は難易度が高く資格取得までの負担が大きい資格です。
また、未経験歓迎の経理求人は求める資格が簿記2級までのものが多く、未経験から経理に挑戦する際に簿記1級までは必要ないといえます。
このような理由から「簿記1級はやめとけ」という意見があるのも事実です。
しかし簿記1級の取得により、高年収を得られる・転職活動で有利になる等の様々なメリットがあります。
したがって、簿記1級は決して無駄な資格ではありません。
高度な経理業務を行いたい・転職活動でのアピールポイントを増やしたいと考える人は、簿記1級の取得を検討しても良いでしょう。
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