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経理・財務で働く方の年収はどれくらいなのでしょうか。
経理・財務は大きく事務職という分類に含まれますが、実際は専門職としての色合いも強いため、持っているスキル水準によって年収の相場が大きく変わってきます。
本コラムでは、経理・財務における平均年収に触れつつ、経理のスキル一覧を見ながら、スキルと年収の関係についても説明していきます。
経理・財務の平均年収は?
経理・財務で働く正社員の平均年収は550万円程度です。
厚生労働省が出している「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、正社員として働く事務従事者の平均年収は497万円となっておりますが、経理職や財務職は事務職の中でも専門性の高い職種です。
資格の必要性や会社経営上の重要性を踏まえても、事務職平均より1割程度は高いと想定され、550万円程度と考えるとよいでしょう。
同調査で他の職種も含めた正社員の平均値を計算すると520万程度となることから、経理・財務職の平均年収は日本全体平均よりやや高い程度と言えます。
関連記事:経理職の転職後の平均年収はいくら?スキルアップも鍵
ただし経理・財務職の場合、持っているスキルによって、適切な年収相場が変わってきます。また550万円というのは20歳-60歳まで、幅広い年齢の方の平均値になることから、まずはスキルの全体像と、持っているスキルごとの適正相場を考えていくことが重要と言えるでしょう。
例えば大企業と中小企業では求められるスキルが違い、平均年収も変わってきます。
- 大企業勤務の経理職の平均年収は700万円程度です。
- 中小企業勤務の経理職の平均年収は500万円程度です。
大企業では、単純な記帳業務以外の予算の策定や経営戦略の策定など、難易度の高い業務が多く、豊富な知識が必要とされます。
一方、中小企業の経理職では、記帳業務が業務の中心となっており、大企業の経理職ほど求められる専門知識は高くないため年収に差があります。
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経理・財務職のスキル一覧と年収の関係
ではここからは経理の基礎スキルを中心に説明をしていきます。
それぞれの基礎スキルを持っていることで年収にどのような影響があるのか、見ていきましょう。
①仕訳・入力スキル
経理職として一番最初に学ぶスキルが「仕訳」です。
日常の取引におけるお金や物品の流れを伝票に記帳し、伝票の内容を社内の会計システムへと入力する作業です。その際に、取引の内容に基づいて、現金・預金・売掛金といった勘定科目への振り分けを行い、資産・負債・純資産・収益・費用といったグループに分類します。
「仕訳・入力」ができるかどうかは、未経験・経験の境目になってくるため、年収相場に影響しますが、あくまでスタッフ層としての採用には変わりないため、影響としては限定的になります。
②月次決算スキル
決算スキルの中で基本となるのが、月次決算のスキルです。
日々の仕訳・入力によって蓄積された取引データを元に、お金の動きをまとめます。
月次決算の目的は、会社の業績をタイムリーに把握することと、年次決算の効率化があり、より重要なのは「会社の業績をタイムリーに把握すること」の方です。スピード重視で、簡易的に決算をまとめます。
月次決算のスキルを持っていることで、仕訳・入力スキルのみの人と比べ、年収相場が上がります。月次を締めることができれば、ある程度自立的に仕事をこなしてくれる人だとみなされ、経理としての価値が上がるためです。最初は決算補助として一部を担いますが、徐々に一人で月次決算を完結できるようになることで、年収を上げることが可能になります。
③年次決算スキル
月次決算スキルの次に来るのが、年次決算のスキルです。
年次決算は納税のための基礎データにもなるので、高い正確性が求められます。
また年次決算は決算資料として銀行からの融資を受ける際などにも使われる他、上場企業であれば投資家に向けての報告義務もあります。
そのため、引当金や減価償却費の計算、売掛金のチェックはもちろん、預金や在庫に相違が無いか等、在庫の棚卸などを行って確認していきます。
そして、日々の取引をまとめて、1年間の業績や財政状況をまとめた財務諸表を作成していきます。
年次決算のスキルがあれば、チームリーダーとして活躍することが可能になるため、スキルに対する年収アップに加え、管理職となる事での年収アップも期待できるようになります。年次決算スキルのあるなしで、年収相場も100万円以上変わってくると思ってよいです。
④連結決算スキル
連結決算スキルとは、子会社も含む企業グループとしての財務諸表を作成するために行われる会計処理のスキルです。
親会社と子会社で全く別の事業を営んでいて取引が無く、経営資源の共有も行っていないという場合であれば手続きは簡単ですが、実際は取引があるケースが大半です。
一般的には、連結パッケージといわれる、親会社が子会社から収集する基礎資料に基づいて連結決算が行われます。
連結パッケージには個別BS・個別PL、グループ間取引明細、科目別増減内訳、セグメント別情報などがあり、これらを使って連結BS、連結PL、連結CF、注記を作成します。
連結決算スキルを持っていると、年収相場が上がります。というのも、大手の上場企業であれば連結決算を行っていることも多いですし、たくさんの子会社を持っている上場企業の場合、連結決算のためのポジションもあるくらい重要なスキルであるため、年収を上げることが可能です。
⑤開示スキル
開示のスキルとは、上場企業であれば必要になってくるスキルで、株主向けに有価証券報告書や四半期報告書、決算短信などを作成するスキルです。
上場企業となると、株主に対してフェアな情報開示をする必要があるため、当局の定めるルールに従って開示を行う必要があります。
これらは監査法人の確認を経て世の中に出ますが、遅延などが発生すると大変なため、きちんとコントロールして進めることが必要です。
有価証券報告書や四半期報告書、決算短信は記載の形がある程度決まっていますので、一度経験しておけば、ある程度対応が可能になります。
年次決算スキルに加えて開示スキルを持っていることで、上場企業でもリーダーとして活躍できるようになるため、年収相場はさらに上がります。上場企業の課長クラスとなればそれなりの年収相場になってきます。
⑥原価計算スキル
次に原価計算のスキルです。原価計算は必ずしもすべての企業で求められるわけではありませんが、製造業の場合、必須スキルとなっていることもあります。
原価計算はその名の通り、製品を作るうえでかかったコストを計算するものですが、いくつか特徴があります。
まず仕入れ原価は一定ではないため、常に原価が変わります。
特に為替の影響を受ける場合等、為替の影響を反映させていくことが必要です。
また、事業部ごとにPLを作る必要があるが、製造人員が共通の場合等、どのように人件費を割り振るか、といった問題も出てきます。
原価計算スキルについては、専門性の高いスキルのため市場での希少性が高く、年収相場アップが期待できますが、製造業の会社限定の話でもあるため、製造業で働いていきたい経理の方は持っておくべきスキルといえるでしょう。
⑦税務・労務スキル
最後に税務や労務のスキルです。税務や労務のスキルは経理として必ず持っていなければいけないものではありませんが、特に中小企業の場合、持っていることで重宝されるスキルです。
税務スキルは、申告書の作成スキルです。法人税などの税金の申告を内製化するために、求人の歓迎要件として「税務スキル」「会計事務所経験」が書かれているものもあります。
労務スキルは給与支払いや社会保険料の計算等ですが、実務の中で社労士等とやり取りをしながら学んでいくものになります。
労務や税務のスキルは、どこでも年収アップにつながるというものではありませんが、必要としているところでは年収アップにつながるため、特に中小企業で年収を上げていく上では役に立つことがあります。
経理・財務の管理職の年収と必要なスキル
経理・財務領域でステップアップしていくと、経理部長、財務部長、経営管理部長、CFOといったポジションを目指すことができます。「令和5年賃金構造基本統計調査」によると管理職における平均年収は約900万円となっており、大きく年収アップが見込めます。
上場企業の経理部長となれば年収1,000万円の大台も視野に入ってきます。
ここからはそうしたポジションを目指すうえで必要になる、応用スキルについて説明していきます。
関連記事:ベンチャー企業のCFOとは
①予算管理スキル
予算管理スキルは、毎年の予算を策定し、実績との差分を管理していくスキルです。
売上・コスト・人員計画・投資計画といった数字に加えて、売上を達成するための主要KPIの数値までを予算化します。
上場企業やIPO準備企業の場合、投資家や当局が納得する野心的な成長水準を満たしつつ、確実に達成可能な予算とする必要があります。予算通りに進めばよいですが、予算未達の場合は、なぜ達成していないのか、設定したKPIを見ながら課題の特定を行います、IPO準備企業の申請期ともなれば、予算の達成はマストになります。
数値の管理がメインですが、その過程で事業部と連携が必要になるため、コミュニケーションスキルも求められます。上場企業やIPO準備企業で経営管理業務の経験を積むか、あるいは会計コンサル・IPOコンサルのようなところで学ぶ必要があります。
関連記事:【初心者必見!】管理会計の仕組みをわかりやすく簡単に解説
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②監査対応スキル
監査対応スキルは、上場企業やIPO準備企業等、監査法人からの監査を受ける必要がある企業において、監査法人に対応するスキルです。
監査はリスクの高い取引についてはかなり細かくチャックしていくので、対応していく上でも専門の知識が必要になってきます。
そのため、多くの場合は公認会計士を持っている方が対応にあたりますが、会計士資格を必ず持っていなければいけないというものではありません。
会計士資格がない場合、IPO準備企業や上場企業で、会計士の下で監査法人対応業務にあたることで、スキルを学んでいくことができます。
③内部統制スキル
内部統制のスキルは、上場企業やIPO準備企業等、高いレベルでのコンプライアンス順守が求められる企業における、仕組みづくりと、運用管理のスキルです。
具体的には「業務の有効性及び効率性」「財務報告の信頼性」「事業活動に関わる法令等の遵守」「資産の保全」を目的に、「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」「ITへの対応」を行います。
実際は監査法人対応と同じく、公認会計士を中心に行う部分で、会計士資格ない状態で学ぶためには、上場企業やIPO準備企業で類似の業務に携わることが必要です。
④資金調達スキル
資金調達スキルは上場企業とベンチャー企業で意味合いが変わります。
上場企業であれば、銀行借り入れや株式市場での調達になりますし、ベンチャーであれば、投資家からの調達になります。これらは全く異なるスキルです。
大企業の場合、基本的には借り入れをどのように行っていくかがメインなのですが、近年増えている大型のM&A等のタイミングでは、大規模な調達が必要になります。
そこで全額デット(銀行借り入れ等)で調達すると格付けが悪化するといった懸念があるため、どのように調達するか考えるといったことがあります。こういったスキルは、上場企業の経理で働く中で学ぶことができます。
一方でベンチャー企業の場合、資金を燃やしながら進んでいくので、常に調達が必要になるケースが多いです。この場合の資金調達は銀行借り入れとは全く異なります。
なぜなら、銀行は安定性を見て資金を貸し付けるのに対し、投資家はリスクリターンのバランスを見て投資を行うからです。
こうした投資家との調達は、営業的な色が強く、事業の魅力を語れる必要もあるため、一般的な経理系スキルの延長線上にはありません。実際にベンチャーで資金調達を経験するか、VC等で経験するかして学ぶ必要のあるスキルです。
⑤IRスキル
IRスキルは、Investor Relations、つまり投資家向け情報開示のスキルです。
基礎スキルの中で説明した「開示スキル」とは異なり、より多くの株主に投資をしてもらうための、積極的な情報提供がIRです。
IRとして作成していくのは、「決算説明資料」や「成長可能性に関する資料」といった、事業のより具体がわかるものになります。
またIRニュースなどを通じて、M&Aや事業提携といった、成長性を見せていくことも必要です。とはいえ事業の中身を投資家にとって魅力的に語るというのは、事業サイドを中心に行うことになってくるので、経理系のスキルとしては、基本的なお作法の習得と、市場がどういったIRを求めているかの分析になります。
経理・財務職で年収を上げるには
新しいスキルを身に着ける
これまで説明してきたように、経理・財務においては、一人で決算を完結できるようになる、開示ができるようになる等、スキルアップが年収アップに直結します。そのため、新たなスキルを学んでいくことが、年収アップの近道です。もし今の環境では新たなスキルが学べない、といった場合、思い切って環境を変えるのも手です。
関連記事:経理職におすすめのスキルアップ方法とは
資格を取得する
また、業務に関連する資格取得を行い、高いスキルをアピールするというのもよいでしょう。
日商簿記1級に加え、グローバル展開しているところであれば米国公認会計士(USCPA)などの資格を積極的に取得するのをおすすめします。
資格を取得すれば、資格手当として給料が増えるだけでなく、任せてもらえる業務が増えキャリアアップに役立ちます。
関連記事:財務・経理職におすすめの資格3選!
まとめ
これまで説明してきた通り、経理・財務はスキルと年収が極めて直接的に結びついているため、年収を上げていくためにはスキルを身に着けるのが近道です。
どのようなスキルを獲得していくのか、どのような時間軸で獲得していくのか、しっかり考えていくことが大切です。
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