転職お役立ち情報
公認会計士を志望する場合、勉強の道筋を把握するために簿記の資格は必要なのか、難易度とともに押さえていかなければなりません。
今回は、公認会計士志望で簿記資格は必要なのか、試験の難易度とともに解説していきます。
公認会計士と簿記の関係性とは?
公認会計士は、企業が会社法や金融商品取引法に基づいて作成する、計算書類や財務諸表の監査を行います。
計算書類や財務諸表である、「貸借対照表」や「損益計算書」などは、簿記を活用して作成しなければなりません。
公認会計士が監査を行うのは、大会社や上場会社が基本であり、取引を帳簿に記録するためには、専門的な知識が必要です。
財務諸表に適正な表示がなされているのか意見として表明するためには、会計処理を正確に把握していなければなりません。
簿記を活用した会計処理を理解していなければ、形式的に表示されている内容が適正なのか不適正なのかを実質的に判断することができないからです。
公認会計士試験の中にも簿記の内容が含まれており、公認会計士と簿記は密接に関係していると言えます。
公認会計士試験と簿記試験の違い
日商簿記検定1級を学んだ経験のある人が、公認会計士を目指すパターンは多く、実際に知識を活用していけます。
日商簿記検定1級の出題科目は、前半が「商業簿記」と「会計学」、後半が「工業簿記」と「原価計算」の4科目です。
記述式で各科目25点満点、合計100点満点のうち70点以上かつ各科目満点の40%以上が合格基準点として設定されています。
公認会計士試験は、短答式試験(1次試験)がマークシート形式、論文式試験(2次試験)が記述式の試験です。
簿記だけではなく、法律に関する知識や税法、経営学や統計学などの選択科目もあり、簿記以外の知識も必要とされています。
公認会計士試験においても、短答式試験(1次試験)だと「財務会計論」で商業簿記や会計学、「管理会計論」で工業簿記や原価計算が問われます。
論文式試験(2次試験)でも、会計学(午前)で管理会計論、会計学(午後)で財務会計論
が出題されています。
いずれにしても、公認会計士の学習範囲のほうが広範囲であり、多くの知識を必要としているので、合格までに必要な時間も多いです。
一方で、日商簿記検定1級程度の学習ができていると、簿記に関しては重複している内容も多く公認会計士の効率的な学習につながります。
簿記の資格は公認会計士試験の免除になるか?
残念ながら簿記の資格を取得したとしても、公認会計士試験の免除にはならないので注意が必要です。
公認会計士試験で免除を受けるのを前提に、簿記試験を受験して合格を目指すのは意味がありません。
ただし、公認会計士試験において簿記はとても重要な科目であり、簿記ができないと合格は不可能です。
1次試験にあたる短答式試験では、簿記の内容が出題される財務会計論と管理会計論で300点満点であり、総合で500点満点の試験なので全体の6割にも及びます。
2次試験の論文式試験でも、会計学(午前)の管理会計論と会計学(午後)の財務会計論で300点満点であり、総合で700点満点の試験で全体の4割以上です。
簿記の資格取得を通じて、公認会計士試験学習の基礎が身についていればかなりのアドバンテージになります。
簿記を取得せずに公認会計士になることはできる?
簿記を取得せずに公認会計士になることは、不可能ではなく状況によっては可能と言えます。
通常は、日商簿記検定3級や2級に合格した後に、公認会計士試験の学習をはじめる人が多いです。
簿記検定で基礎を学び、その後詳細な内容、応用論点などにチャレンジしていくのが効率的な学習方法と言えます。
簿記を取得せず、全くの初心者で公認会計士の学習をはじめるのは、かなりの労力を要するので、現実的ではありません。
一方で、簿記を取得していなくても、日商簿記検定2級や3級の内容を学習した経験のある人は、公認会計士試験学習の基礎ができている状況です。
努力次第で公認会計士試験に合格することは可能であり、簿記検定取得はあくまでもアドバンテージに過ぎないと言えます。
「公認会計士・公認会計士試験合格者限定」
履歴書・職務経歴書 個別添削サービス
公認会計士志望者が簿記を取得するメリット・デメリット
公認会計士を志望する人は、簿記を取得することで得られるメリットやデメリットを正確に理解しておかなければなりません。
日商簿記検定を取得すると言っても、どこまでの級を取得するのかが議題となり、それによるメリットやデメリットも異なってくるでしょう。
メリットとデメリットを比較衡量して、自分にとって最適な意思決定を行っていくのが大切になってきます。
日商簿記検定1級は、公認会計士試験と学ぶ論点が似ているので、総合的に基礎を身につけられるのがメリットです。
公認会計士試験の学習を効率的にこなすためには、日商簿記検定1級の学習程度を行っているのが望ましいと言えます。
実際に日商簿記検定1級を取得できれば、内容の理解だけではなく応用も利かせられるレベルです。
公認会計士試験でも、基礎は絶対に落とせない問題であり、応用問題で差がついてきます。
一方で、日商簿記検定1級は合格率1割前後しかない難関資格であり、合格するのは容易ではありません。
最低でも1,000時間程度の学習は必要になってくるので、多くの時間を日商簿記検定1級の学習に取られてしまいます。
学習をすれば合格できる試験とは異なり、学習をしっかり行ったとしてもなかなか合格できない場合も多いです。
公認会計士試験の学習時間は、最低でも3,000時間程度であり、かなりの時間を要します。
学習時間のことを考えると、日商簿記検定1級に時間を費やして合格を狙うよりも、公認会計士試験に進んでしまうほうが効率的です。
簿記を取得するメリット
簿記検定を取得できれば、公認会計士試験を学習するうえでアドバンテージになりますが、何より大きなメリットは学習方法が身についているところです。
簿記検定は、学習範囲が広く内容も難しいので、効率的に学習を行うためには学習基礎を身につけなければなりません。
会計処理の仕方、理論的な理解、表示方法について学び方を知っておくのが、公認会計士試験の学習を行う際に活用可能です。
また、日商簿記2級まで取得できれば、中小企業や会計事務所で働けるようになり、求人も数多くあります。
日商簿記1級を取得していると、大企業で働いたり、税理士試験における税法科目の受験も可能です。
時間を費やして勉強しても合格できるとは限らないのが公認会計士試験なので、別の道も目指していける簿記資格取得は重要と言えます。
簿記を取得するデメリット
簿記を取得したとしても、級によってはメリットにならない場合に注意しなければなりません。
求人で考える場合、日商簿記検定2級から上が有利になりやすく、日商簿記検定3級だと応募要件に該当しない場合もあります。
また、大手の場合には税理士や公認会計士が在籍している場合もあり、高いレベルが求められるかもしれません。
働きたい環境を事前にチェックして、必要な級を取得できるように日頃から心掛けていくのが賢明です。
公認会計士を志望している場合には、簿記検定とは異なる勉強も必要になるので、簿記検定に集中し過ぎるのも良くありません。
公認会計士を取得するために簿記検定にチャレンジしようと考えている人は、簿記検定取得という手段が目的にならないように注意が必要です。
簿記試験の難易度と勉強方法
簿記試験には、種類があり難易度が異なるので、自分が受験するべき試験を正確に把握していかなければなりません。
いずれにしても、専門性が高く闇雲な勉強では合格できないので、戦略的に勉強を行っていくことです。
難易度は、「日商簿記」が最も難しく、次いで「全経簿記」、最後に「全商簿記」の順番となり勉強時間も難易度に応じて増えていきます。
効果的かつ効率的な勉強方法としては、インプットのみならずアウトプットを積極的に行う方法です。
簿記は、上位級になればなるだけ範囲が広く、応用を利かせた難しい内容の出題が増えてきます。
本試験では、実際に電卓を叩いて計算を行い、問題に対して正確に解答していかなければなりません。
問題集や過去問を日頃から解いていき、ミスをしやすい箇所を把握して、ミスせず解くコツを身につけていくのが重要です。
テキストを暗記して理解しているつもりでも、実際に問題を解いてみると解けない場合も多いと言えます。
勘定科目が貸借どちらにくるかだけではなく、計算や集計などの作業も入ってくるからです。
合格するための配点を意識しながら効率的に解いていき、点数を積み重ねられるように、戦略的な学習が必要になります。
簿記試験の種類
簿記試験は、「全商簿記」・「全経簿記」・「日商簿記」の3種類あり、1番有名なのが「日商簿記」で、受験者層がそれぞれ異なります。
「全商簿記」は、『全国商業高等学校協会』主催の簿記検定であり、受験しているのは主に商業高校の生徒です。
「全経簿記」は、『全国経理教育協会』主催の簿記検定であり、主に経理専門学校の生徒が受験します。
「日商簿記」は、『日本商工会議所』主催の簿記検定であり、受験しているのは主に社会人全般です。
一般的に「簿記〇級」と言われたら、「日商簿記」を指す場合が多く、就職や転職に有効になります。
試験の内容が微妙に異なり、それぞれの良さもあるので試験の内容を理解しながら今必要な種類の簿記検定を学習していかなければなりません。
簿記試験の難易度
簿記試験の具体的な難易度としては、合格率から言えば日商簿記1級が10%程度、全経上級が12〜15%程度であり、日商簿記1級が簿記検定としては最難関です。
日商簿記2級を基準にした場合、全経簿記1級が次いで難しく、最後に全商簿記1級と言われています。
全経簿記上級の場合には、会計学において理論が出題されてくるので、理論が苦手な人にとっては難易度が高いかもしれません。
難易度を正確に理解して、今の自分に合ったレベルの簿記試験を受験するのが効率的な学習につながります。
簿記試験の勉強時間・勉強方法
簿記試験の勉強時間は、日商簿記1級の次に難易度が高いと言われている全経簿記上級で500時間程度です。
最も汎用性が高いと言われる日商簿記2級で、300時間程度と言われており、専門的な学習に慣れていない人にとっては難しいかもしれません。
勉強方法は、簿記試験において最も重要なのが「過去問」を完璧にこなしていくことと言えます。
簿記試験は、範囲が広く多くの問題に手をつけてしまいがちですが、すべてを完璧に解くのは難しいです。
実際に出題された問題を完璧にこなして、応用を利かせられるように理解していくのが正しい勉強法になります。
点数を基礎から着実に積み上げていけば、いつか合格点にたどり着くので、その日を夢見て学習を継続していきましょう。
簿記1級・2級の求人
まとめ
今回は、公認会計士志望で簿記資格は必要なのか、試験の難易度とともに解説してきましたがいかがだったでしょうか。
公認会計士を目指していくにあたって、簿記資格を取得すると良いですが、絶対ではありません。
資格を取得しているか否かに関わらず、基礎から少しづつ簿記の学習を進めておくと、公認会計士の学習におけるアドバンテージになります。
日商簿記1級レベルが理解できれば、公認会計士の問題にも抵抗がなくなり、効率的に得点できます。
一方で、日商簿記1級を取得するために多くの時間を費やし、公認会計士の学習に進めないのは本末転倒です。
公認会計士志望の場合、日商簿記1級を取得できなくても積極的に公認会計士の問題に挑戦していくのが賢明と言えるでしょう。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
■公認会計士・税理士・経理の転職サイトREX
https://www.career-adv.jp/
■株式会社レックスアドバイザーズ
https://www.rex-adv.co.jp/
公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
レックスアドバイザーズへ