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税理士試験には、会計学に属する科目があり簿記の知識が必要ですが、試験にどのような違いがあるのか知っている人は少ないかもしれません。
税理士を受験する際には、必要な簿記に関する知識について把握しておくと計画的に学習していけるようになるので有益です。
地道で計画的な学習を継続していくのが、税理士になるための近道であり、事前に理解しておかなければなりません。
今回は、税理士試験と簿記の違いや税理士に必要な簿記のレベルについて解説していきます。
税理士試験と簿記の関係とは?
税理士試験の概要
税理士は、独占業務資格なので資格を取得すると特定の業務を行うことが認められています。
税理士に認められている独占業務は、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3種類であり、税理士以外が行うことは禁止です。
税理士法に基づいた国家資格であり、資格の取得には税理士試験に合格しなければならないのが特徴と言えます。
試験科目
税理士試験の試験科目は、会計科目2科目と税法科目9科目あり、その中から5科目取得しなければなりません。
会計科目は、必須科目なので「簿記論」と「財務諸表論」の2科目について、どちらも取得する必要があります。
税法科目は、9科目の中で選択必須科目と選択科目があるので、違いについて把握しておくのが大切です。
選択必須科目は、法人税と所得税の2科目で負担は大きいですが、どちらかは必ず取得しなければいけない科目と言えます。
これに対して、選択科目については税法科目9科目の中から2科目を選択して取得すれば良い科目です。
選択必須科目は、どちらかを取得すれば良い科目ですが、法人税と所得税を2科目取得して選択科目の1つとしても問題ありません。
受験資格
会計学に属する科目については、令和5年より受験資格が撤廃された為、誰でも受験できるようになりました。
一方で、税法に属する科目については「学歴」・「資格」・「職歴」による受験資格が認められています。
「学歴」による受験資格は、大学や短大などの卒業や大学3年次以上において、社会科学に属する科目を一定数以上取得ないし履修している者。
他には、司法試験や公認会計士短答式試験に合格している者が該当し、現状要件に当てはまっていない人にとっては難易度が高いです。
「資格」による受験資格は、日商簿記検定1級や全経簿記上級の合格者であり、日商簿記検定1級は就職や転職時にも有利になるため有益な資格と言えます。
「職歴」による受験資格は、会計に関する事務や銀行・信託会社、税理士や弁護士、公認会計士の補助業務など、一定の職業に2年以上従事した者です。
税理士を志して試験を受験する際には、原則税法に属する科目を受験することになる為、受験資格について事前に確認しておく必要があります。
簿記試験の概要
簿記試験は、会社における認知度が高く、どのような会社でも経理部などにおいて必要とされている資格です。
就職や転職の際に役立つ資格であり、学生が取得しておくと有利になるだけではなく、実務にも役立ちます。
また、既に働いている社会人にとって簿記の知識があると、経理部や会計事務所で働けるようになり、職業選択の幅が広がるので有用です。
種類
簿記検定の有名な資格は、通称で「日商」・「全経」・「全商」の3種類に分かれています。
それぞれ1級から3級 までありますが、「全経」は1級より難易度の高い上級があるのが特徴です。
また、「日商」は3級の下に簿記初級や原価計算初級があるので、基礎から身につけられます。
税法に属する科目を受験する場合、受験資格を得るためには上級 を取得しなければならないので、注意が必要です。
一般的に、「簿記検定」と言われる時は「日商」を指している場合が多く、難易度は同じ級であれば「日商」が1番高いと言われます。
関連リンク:日商簿記と全商簿記の違いとは
試験科目
簿記一級の試験科目は、「商業簿記」・「会計学」・「工業簿記」・「原価計算」の4科目です。
「商業簿記」は、商品を購入して販売することで利益を得る企業において、どのように会計処理を行うのか幅広く問われます。
「会計学」は、企業結合や事業分離、連結会計に至るまで高度な会計処理や理論的背景に至るまで出題されるのが特徴です。
「工業簿記」は、製品を製造するところから販売までの過程における会計処理について出題されます。
「原価計算」は、予算管理や意思決定など企業が、どのように利益を追求していくのかが出題範囲です。
区分が曖昧になる場合もありますが、それぞれの試験科目について満遍なく学習をしていかなければなりません。
税理士試験に必要な簿記のレベル
税理士試験では、会計に属する科目である簿記論と財務諸表論で、簿記の知識が必要になってきます。
日商簿記検定1級や2級レベルだと、基礎知識が身についているので有利に進められるようになりますが、十分なレベルとは言えません。
また、税理士試験には税法に属する科目もあり、所得税や法人税、消費税などは簿記の知識を必要としていますが、簿記があまり関係しない科目があるのも事実です。
各科目の特徴を把握して、税法について効率的な学習を行っていかなければならないので、初学者は苦労します。
簿記のレベルについては、どちらが難しいと一概に言えるものではなく、日商簿記検定1級、簿記論や財務諸表論のそれぞれに特徴があるので注意です。
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税理士試験と簿記一級の違いとは?
税理士試験と簿記一級の試験形式の違い
試験名 |
税理士試験 |
簿記一級 |
試験における税法科目の有無 |
会計に属する科目(簿記論・財務諸表論)以外の9科目 |
科目としては無し |
出題範囲の公表 |
大まかに開示 |
詳細に開示 |
出題傾向 |
過去問からの出題はあまりない |
過去問から類似問題が出題される場合も多い |
試験委員のサイクル |
おおよそ3年程度 |
基本的に変わらない |
合格基準 |
全体の60%以上が基準 |
100点中70点以上 |
試験形式 |
相対的試験 |
絶対的試験 |
簿記論は、計算による出題が多く財務諸表論は理論と計算が半々なので、特徴を理解した学習が必要です。
合格基準点で言えば、日商簿記検定1級は70点、税理士試験は全体の60%以上が基準であり、一見すると税理士試験が簡単に思えます。
ですが、日商簿記検定1級は、絶対評価の試験であり税理士試験は相対評価の試験なのが特徴です。
簡単な出題となれば、日商簿記検定1級は合格する人が増えるのに対して、税理士試験は、出題の難易度が合格者数に影響を与えることはありません。
税理士試験は、難しいと言う人も多いですが、難しい問題を必ずしも解く必要はなく、合格する人が落とさない問題を確実に解くのが大切です。
日商簿記検定1級は、類似している問題が出題されるのに対して、税理士試験は新しい問題が出題されると言われます。
類似している問題が出題されるか否かは、過去問の重要性に関わってくるので、試験形式を把握することでしっかり戦略を練っていきたい部分です。
税理士試験と簿記一級の試験内容の違い:簿記論
税理士試験における簿記論と日商簿記検定1級との大きな違いが、工業簿記や原価計算です。
工業簿記については、試験範囲に含まれていますが日商簿記検定1級ほど詳細な知識は必要ありません。
また、原価計算は簿記論の出題範囲ではなく簿記論のほうが日商簿記検定1級よりも工業分野の出題は少ないです。
簿記のレベルで考えると、簿記論では基礎知識だけではなく、細かい知識が必要な場合も多いので簿記一級よりも難易度が高いと言えます。
簿記一級は、基本的に作問者が変わらないので出題に特徴があり、対策が可能です。
一方で、簿記論は作問者が3年程度で入れ替わると言われており、簿記一級と比較して出題傾向が読みづらくなります。
簿記一級は、過去問対策を徹底していれば点数が伸ばしていきやすいのに対して、簿記論は過去問対策だけでは点数が伸びづらいです。
基礎を徹底した学習を継続しながら、日頃よりさまざまな出題に対応できるように訓練していかなければなりません。
柔軟に応用を利かせて、点数を獲得していけるようにならなければ、簿記論の合格は難しいです。
税理士試験と簿記一級の試験内容の違い:財務諸表論
税理士試験における財務諸表論は、簿記一級と異なり理論による出題が多いのが特徴と言えます。
財務諸表論の出題は、およそ理論と計算が半分であり、簿記一級よりも理論の重要性が高いです。
簿記論は、帳簿への記帳方法による出題がメインであり、財務諸表論は利害関係者への開示が出題の主となります。
利害関係者への開示は、「財務諸表」で行われるため計算方法や仕訳などを覚えるだけではなく、表示区分や勘定科目名などを正確に覚えていなければなりません。
簿記一級は、会計学において理論が数問出題されるのに対して、財務諸表論は、第一問から第三問のうち第一問と第二問は理論による出題が大半で す。
理論の配点も、簿記一級では数点程度なのに対して、財務諸表論では数十点分もあります。
つまり、簿記一級では理論がわからなくても合格点を取ることは可能ですが、財務諸表論では不可能と言えます。
日頃よりなぜそのように会計処理を行うのか、理論的背景を考えながら問題を解く意識を持っていくのが大切です。
税理士試験と簿記一級の難易度比較
合格率
年度 |
簿記論 |
財務諸表論 |
簿記一級 |
令和6年 |
17.4% |
8.0% |
12.9% |
令和5年 |
17.4% |
28.1% |
14.8% |
令和4年 |
23.0% |
14.8% |
10.3% |
令和3年 |
16.5% |
23.9% |
9.4% |
令和2年 |
22.6% |
19.0% |
13.5% |
合格率だけを見た場合、簿記一級が10%前後なのに対して、簿記論や財務諸表論は20%を超える場合も少なくありません。
一見すると、簿記論や財務諸表論が簿記一級よりも受かりやすいように感じてしまいます。
ですが、税理士試験は受験資格があるので受験者の質が高く、問題数も膨大なので合格するのは容易ではありません。
一般的には、簿記論や財務諸表論は簿記一級よりも難易度が高いと言われており、簿記一級よりも詳細な知識が必要です。
勉強時間
簿記一級に合格するための勉強時間は、約1,000時間 必要であり1年で取得を目指す場合、1日3時間程度勉強していかなければなりません。
これに対して、税理士は5科目合格するまでに約4,000時間 の学習が必要と言われ、税理士は簿記一級よりも時間がかかります。
通常数年かけて合格を目指しますが、3年の場合は日々4時間程度は勉強しなければなりません。
3年間毎日勉強するのは通常不可能であり、中長期的な学習をしていかなければならないので注意が必要です。
税法に属する科目である選択科目のうち、どの科目を選択するかによっても大きく変わってきます。
簿記や税法に関する知見がある場合には、勉強時間を短縮していけるので自分に合わせた勉強時間を確保していくことが大切です。
税理士と簿記どちらを受けるべき?
税理士と簿記は、どちらも会計の専門化ですが、学習できる内容から職種を基準に決めるのも1つの手です。
税理士は、独立開業をして独占業務である税務を武器として働いていくため、会計事務所や税理士法人で働くのが一般的と言えます。
税務を主たる業務として、経営を行っていきたいと考えている人は特に税理士を受験するのが賢明です。
一方で、会社に雇用されて経理業務を行っていきたい人は、簿記を受験しておくと有利になります。
税理士を取得している人が会社から評価されないわけではありませんが、税理士は難易度が高く時間を費やし、費用も高くついてしまいがちです。
簿記資格であれば、自分にあったレベルの学習を行えて、合格するまでの勉強時間も税理士ほどかかりません。
税理士の資格を取得するメリット
税理士の資格を取得するメリットは、何と言っても独占業務である税務を行っていけるようになることでしょう。
税務は、税理士以外の人は有償無償問わず行うことができないので、出来るようになるのはかなり強みです。
税理士試験は、科目合格制なので会計に属する科目である簿記論や財務諸表論を取得しているだけでも有利になります。
就職や転職をする際にも、活用できる資格であり会計事務所や税理士法人では特に評価されるので有益です。
平均年収が、一般的な職業に比べて高い傾向にあるのも、税理士の資格を取得するメリットと言えます。
また、所得税や住民税は社会人として必要な知識であり、資格取得を通じて知識を獲得していけるので有益です。
簿記の資格を取得するメリット
簿記は、企業において必要とされている資格として、必ず名前が挙がるほど有名な資格です。
経理として働く場合には、企業の環境に合わせた級を就職前に獲得しておきたいと言えます。
会計業界で働いていきたい人にとっては、勉強の基礎的な資格でありキャリア形成を行う上で大切です。
簿記一級を取得していれば、大企業においても問題なく働いていけるようになるので、給与面も優遇されています。
また、公認会計士などの高度な資格を取得する基礎的な知識を獲得していけるようになるのも有用です。
簿記は、専門性が高く直ぐに獲得できるような知識ではなく、日々意識していかなければなりません。
簿記一級を取得していると、税理士試験の受験資格を獲得できるので、税法科目にチャレンジしていけるようになるのもメリットです。
簿記知識の税理士試験への活かし方
簿記一級の知識があると、税理士試験の必須科目である簿記論や財務諸表論で大きなアドバンテージになります。
日商簿記2級や3級でも、勉強をしていく際の基礎が身に付いているので、円滑な学習が可能です。
もし、税理士試験に合格する前に就職や転職をする場合でも、科目合格制なので科目を取得していれば有利になります。
中長期的に考えながら、合格を目指して簿記知識を活用していけるように、基礎として簿記知識を獲得しておくのはとても重要です。
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まとめ
今回は、税理士試験と簿記の違いや税理士に必要な簿記のレベルについて解説してきましたがいかがだったでしょうか。
税理士試験と簿記試験は、全く同じではありませんが簿記論や財務諸表論で簿記知識を活用できます。
出来れば簿記一級を取得しておくと、税理士試験の税法に属する科目の受験資格を得られるだけではなく、税理士試験の勉強をはじめる際における簿記のレベルとしても十分です。
一方で、簿記論や財務諸表論の試験形式に慣れていく必要性や、会計だけではなく税法に属する科目があるのも頭に入れておかなければなりません。
税理士試験の合格を目指す場合には、税理士試験と簿記試験の違いを正確に把握して、対策をしていくのが賢明です。
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