転職お役立ち情報
監査役とは株主総会で選任される会社法上の役員です。
取締役が行っている職務に対して不正がないかを調査し、会社が健全に経営され、株主の不利益なことが行われていないかを管理監督します。
具体的な役割や気になる収入など、監査役について解説します。
監査役とは
監査役とは、取締役の職務執行を監査する役割を持つ役職です。
取締役が行っている職務に対して、不正がないかを独自に調査し、取締役会や株主総会で報告したり、不正行為差止請求の権限を持ちます。
監査役の目線があることで、特に代表取締役が独断的な経営判断をしないための抑止力となっています。
監査役の役割
監査役の役目は、監査役監査基準に記載があります。
「株主の負託を受けた独立の機関として取締役の職務の執行を監査することにより、企業の健全で持続的な成長を確保し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立する義務を負っている」
(監査役監査基準2条1項)
この記載内容によると、監査役が第三者的な立場から企業が健全な経営判断や業務執行を行っているかを監査します。
それによって、企業が株主や投資家からの信頼を得られるのです。
また、現在は上場企業だけでなく中小企業にも適正なコーポレートガバナンス(企業統治)体制の確立、コンプライアンス(法令遵守)が求められ、監査役にはそれを担保する役割を期待されています。
①監査役の重要性
監査役は、近年その重要性が注目されてきています。
その背景には、上場企業による不正会計の件数が増加傾向にあることが挙げられます。
2019年度は70件以上の上場企業による不正会計処理問題が発生しています。
また、2020年度も50件以上と高い推移にあり、監査役による第三者の目線での監査がより一層重要視されています。
②監査役の仕事内容
監査役は取締役の指示命令から独立して、会社の本来の持ち主である株主の立場になり、会社が健全に経営され、株主の不利益なことが行われていないかを管理監督するという役割です。
監査役は取締役など仕事の内容が妥当か、適法に進めているか、株主に損害を与えていないかなどの執行状況を監査しますが、内容としては「会計監査」と「業務監査」に分けられます。
また、監査結果の報告も監査役が行う仕事内容の1つとなります。
会計監査
会計監査とは、企業や公共団体等の組織が作成した計算書類や財務諸表に誤りがないかを第三者が監査することです。
会社に対する会計監査では、取締役などが作成した経理上の計算書類に法的な不正や株主に不利益な会計操作がないかなどをチェックします。
単に「監査」と呼ぶ場合は会計検査を指すケースが多くみられます。
非公開会社の場合は「会計監査に職務を限定した監査役」を設置し、その役割の範囲を規定することが可能です。
会計監査に限定された監査役のことを「会計限定監査役」といいます。
なお監査役による会計監査と、会計監査人による監査は異なります。
監査役は株主総会で選任される会社法上の役員である一方、会計監査人は外部の独立した第三者です。
また、会計監査人は公認会計士または監査法人のみという資格要件が定められています。
業務監査
業務監査とは会計業務以外の業務全般に対する監査です。
会社に対する業務監査では、取締役が適法に会社運営を行い、株主に不利益をもたらしていないかなどをチェックします。
業務監査の主な方法として以下の3つが挙げられます。
- 取締役会等の出席……会社の状況や今後の業務に関する意思決定のほか、取締役会に出席している人の状況・職務の執行状況についても確認可能です。
- 取締役が作成した書類の閲覧……書類の内容を確認するだけでなく、書類をしっかり保存しているかの確認にもつながります。
- 取締役等との意思疎通……取締役会では古い情報の報告も多いため、最新情報や現在抱えているトラブルについては直接聞く必要があります。
監査結果の報告
監査結果の報告も監査役が行うべき重要な仕事です。
監査結果の報告に関する業務は、さらに以下の3つに大別されます。
- 監査報告の作成……1年間の監査結果について報告の作成が必要です
- 不正行為について取締役会に報告……取締役について以下のような事実がある場合、取締役会に報告する必要があります。
- 不正行為をしている
- 不正行為の恐れがある
- 法令・定款に違反する事実がある
- その他著しく不当な事実がある
- 株主総会に対する報告
株主総会に提出する議案を調査した結果、法令や定款違反・不当な事項が発覚した場合は、その事実を株主総会に報告する必要があります。
③監査役に必要なスキル
監査役に必要なスキルはありません。
監査役は取締役会で決議された業務執行などが正しく執行されていることを監査します。
監査が疎かになると不正会計が発生し、最悪の場合、企業そのものの存続が困難になるような事件に発展しかねません。
このことからも、監査役に必要なスキルとして、物事を俯瞰的に観察し、物事の本質を見抜く力が必要になります。
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監査役の権限
監査役は会社の会計監査を含む業務監査を行います。
調査対象会社に対して業務監査を遂行する上で、監査する権利を持っています。
業務監査で行った結果に対して、株主総会で意見をいう権利を有しています。
よって、監査役は事業の報告を求め、業務及び財産の状況の調査をすることができます。
監査役は誰がなるのか?
会社法では監査役になることができない人について明確に規定されており、1つでも該当する人は監査役になれません。
この章では監査役になれない人の条件や、監査役の選び方について詳しく解説します。
監査役になることができない人
監査役になることができない人については、会社法第331条と会社法第335条で定められています。
具体的な条件は以下の通りです。
- 法人
- 会社法等の規定に違反し刑に処せられた後、その執行を終えた、もしくは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 法令違反により禁錮以上の刑に処せられた後、その執行を終えていない、もしくはその執行を受けることがなくなっていない者(執行猶予中の者を除く)
- 会社の取締役、支配人、使用人
- 子会社の取締役、支配人、使用人もしくは会計参与、執行役員に就任している者
なお監査役には社内監査役と社外監査役の2種類があります。
社外監査役は社内監査役と比べ、より厳しい要件が定められています。
- 就任の前10年間において、当該株式会社および子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人、その他使用人であったことがない
- 就任の前10年間において当該株式会社および子会社の監査役であったことがある場合、当該監査役へ就任する前の10年間において、当該株式会社および子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人、その他使用人であったことがない
- 当該株式会社の親会社等または親会社等の取締役、監査役、執行役、支配人、その他使用人でない
- 当該株式会社の親会社等の子会社等の業務執行取締役等でない
- 当該株式会社の取締役、支配人、その他重要な使用人または親会社等の配偶者・二親等以内の親族でない
出典:e-GOV法令検索「会社法第2条16項」
監査役は株主総会で選任される
監査役は株主総会で選任されます。
上場企業の場合、監査役は株主総会で企業が作成した決算報告書が適正であったかを確認し、株主に対して監査内容が適正であったかを報告します。
これは企業が作成した決算内容を、監査役が第三者の視点で適正かどうかを判断することに意味があります。
監査役の任期は原則4年
監査役の任期は、会社法で「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と定められています。
監査役の平均年収
監査役の報酬は、常勤か非常勤かによっても報酬額は異なります。
報酬は企業の規模などによっても様々ですが、平均的な報酬としては常勤監査役で500~1500万円程度、非常勤監査役で100~500万円程度とされています。
監査役は、一般的に企業でのOBやグループ企業内の従業員で構成されることも多いため、取締役と比較すると低めに設定されています。
まとめ
過去の監査役は、実質名前だけの役割であった企業も少なくありません。
ただし、近年の上場企業の不正会計問題などが増加傾向にある中、監査役としての役割が再度注目されています。
今後は、株主や投資家からも監査役の意見を注視することが増えることでしょう。
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