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投資ファンドでの仕事は、年収の高さで知られています。
投資ファンドの中でも最もメジャーなPEファンド(プライベートエクイティファンド)は、投資家から調達した資金で非公開企業への投資を行います。
経営権の取得やアドバイスを通じて利益を生み出す力を高め、企業価値を高めることでリターンを生み出します。
「ハゲタカ」をはじめ、様々な小説やドラマも作られるなど、その華やかな仕事内容も人気の理由の一つです。
一方で「完全実力主義」「超ハードワーク」「就職するのが狭き門」とも言われる仕事でもあります。
今回は、そんな投資ファンドの仕事内容や年収などについて解説します。
投資ファンドの概要
そもそも投資ファンドとは何なのでしょうか。
まずは投資ファンドの概要を見ていきましょう。
投資ファンドとは何か?
投資ファンドとは、投資家から集めた資金を運用し、そのリターンを再分配して利益をあげる仕事です。
投資ファンドの運用先は上場企業、非上場企業、ベンチャー企業、不動産など幅広く、ファンドによって何を専門にするかが変わってきます。
運用規模は十億円~数千億円で、運用が上手くいけばその報酬も青天井となるため、実力がある人ならば年収一億円を叩き出すこともあります。
しかし逆に運用に失敗してしまうと、投資家が一人二人と抜けて運用規模が小さくなり、人員削減が必要になってしまいます。完全に実力主義の責任重大な仕事と言えるでしょう。
その中でも一番大きいカテゴリが、PEファンド(プライベートエクイティファンド)と呼ばれる、非上場企業に投資する投資ファンドです。
非上場企業を対象にしている中でもベンチャーを対象としているファンドはVCファンド(ベンチャーキャピタルファンド)と呼ばれ、別カテゴリとして扱われます。
PEファンドの最大手はキオクシア(旧東芝メモリ)の買収を主導したベインキャピタルや、西友の買収を主導したKKR、ベビースターのおやつカンパニーで有名なカーライル等です。
PEファンドというと外資が多いイメージですが、日系大手として、スカイマークを手掛けたインテグラルや、ダイエーを手掛けたアドバンテッジパートナーズ等も存在します。
PEファンドは、上場企業が非上場化する際や、上場企業がノンコア事業を切り出す(カーブアウトする)際に、それらを買収し、経営改善を行います。
100%の株式を買収することもあれば、共同投資家と一緒に買収を行うこともあります。経営権を取得したうえで、戦略の見直し、事業ポートフォリオの見直し、経営効率化などを行って、稼ぐ力を高め、企業価値を高めた状態で売却することで、リターンを得ます。
VCファンドにはさまざまタイプがあり、出資のステージ(シード、アーリー、レイター)によってもカテゴリーが分かれます。
また投資家から投資を集める独立系のVCに加え、金融期間を母体とするVCや、大手企業を母体とするCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)も存在します。独立系の最大手はジャフコで、累計1,000件以上のベンチャーに投資をしています。
また上場企業に投資を行う投資ファンドもあります。
その中にも、公開市場での取引によって株式を取得するファンドと、上場企業の私募増資を引き受ける形で投資を行うファンドがあります。前者ではジャパン・アクティベーション・キャピタル(旧ニュートン・インベストメント)のような大手ファンドが立ち上がっています。
後者はPEのアドバンテッジパートナーズ等が積極的に取り組んでいます。
投資ファンドの仕事内容
投資ファンドの仕事は、先に述べた通り投資家が投資した資金を運用し、そのリターンを得ることです。
職種としては大きく3つに分かれ、投資の意思決定と利益創出を担う「フロント」、資金調達や資金運用を担う「ミドル」、経理などのコーポレート機能を担う「バック」があります。
「フロント」「ミドルバック」という分け方をすることもあります。
投資ファンドのフロント部門の仕事内容
投資家から集めた資金を運用して利益をあげるためには、ダイヤの原石を見つけてきて、きちんと加工して、ダイヤとして売却することが必要です。
つまり、収益改善ポテンシャルが高いがイマイチ評価されていない企業や事業を見つけてきて適切な額で買収し、経営改革を行ったうえで、適切な売り先を見つける、あるいはIPOをしていく必要があります。
このプロセスは会社経営そのものであり、専門分野の知識は欠かせません。
買収先の選定(ソーシング)においては、銀行などの金融ネットワークや売り手FA(フィナンシャルアドバイザリー)、また個人の情報ネットワークなどを通じて買収先候補を探します。
その後、実際に事業の精査(DD:デューデリジェンス)行って価格の交渉をしていきます。
その際は会計コンサルティングファームや弁護士事務所の力を借りるのが一般的です。
買収が完了したら、実際に経営陣として買収先に乗り込み、必要に応じて人材の採用も行いながら、経営改革を進めていきます。
収益改善や成長戦略の策定においては、コンサルティングファームを活用しながら進めていきます。
投資を行ってから5年くらいたつと、売却(EXIT)のタイミングが訪れます。
それまでにEXITの方法として、IPOを行うのか、他社に売るのか、ベストな方法を検討する必要があります。
他社に売る場合には、最大限高く買ってもらうべく、ビッド(競売:オークション)のプロセスにかけていくのが一般的です。
投資ファンドによって、こうしたプロセスを同じ人物が一貫して行うケースと、分業で行うケースがあります。
投資ファンドへの転職を目指す際には、どちらの方が自分に合うか、考えておく必要があります。
投資ファンドのミドルバック部門の仕事内容
投資ファンドの経理の仕事内容は、一般的な事業会社とあまり変わりません。
仕訳起票、ファンド決算書作成、監査対応といった、投資ファンドに関する決算業務をを行います。
それ以外では、投資実行などによる資金の支出・入金手続、投資資産管理、キャッシュフロー管理(預金残高、投資余力、コール可否など)といった資産管理業務と、LP(リミテッドパートナー:有限責任のパートナー)向けレポーティングやキャピタルコール、ポートフォリオ管理といったGP(ゼネラルパートナー:無限責任のパートナー)支援業務が存在します。
なお投資ファンドのバックオフィスのマネージャーとなると、複数のファンドを見ることもあります。
投資ファンドと働きかた
投資ファンドでのキャリア形成
投資ファンドのフロントに就職した場合、多くはまずアソシエイトとしてマネージャーの補佐的な業務を経験していきます。
補佐と言ってもただ言われたことをやればいいだけではありません。
買収のタイミングにせよ、経営のタイミングにせよ、適切な意思決定を行う上では適切なデータ分析が必要です。
アソシエイトはマネージャーの手足となって、データの収集から分析、レポーティングを行っていきます。
またマネージャーが円滑に回るよう、下準備を行う(ロジ)もアソシエイトの重要な役割です。
買収候補との調整など、最前線に立って取引に関与していくので、補佐役といっても一人のプロフェッショナルです。
こうして基礎的な能力を身に着け、やがてマネージャーとして仕事を進めることができるようになります。
マネージャーが近づいてくると、ほぼマネージャーのような立ち位置で仕事を進めることになります。
外部との交渉役を担うこともあり、高い交渉力やコミュニケーション能力、ロジカルシンキングが必要になることもあります。
マネージャー以上になると、実際に投資先の開拓、検討、交渉を行うことが仕事になってきます。
アソシエイト時代に身に着けたスキルをフルに活用し、投資家の期待する時間軸で、投資家の期待するリターンが生み出せるよう、責任を負うことになります。
マネージャーとして研鑽を積み、成果を上げると、その後はディレクター等、さらに責任範囲が大きくなります。
ディレクタークラスになると、投資先に社外取締役として入ることも増え、キャリアとしてもさらに箔が付きます。
プロ経営者としても十分に活躍できることでしょう。
投資先の選定フェーズでは、企業の財務状況や事業環境を正しく理解・分析しないと正しい分析が出来ず、大きなクレームに発展しかねません。
求められる能力と資格
投資ファンドのフロントは上記の通り、様々な能力が必要になってきます。
高い分析能力、状況判断能力、知識、交渉力、コミュニケーション能力等々、どれも投資ファンドで働くには絶対に欠かせない能力です。
買収先の選定から売却までのプロセスを一人が一気通貫で担当する投資ファンドでは、総合力の高さが求められますし、分業制でやっている投資ファンドであれば、短答領域に対する専門性の高さが求められます。
また短い時間軸で成果を上げていく上では、世の中のトレンドを理解し、トレンドに合わせて適切な意思決定をしていくことが求められるので、投資ファンドで働くには、常に勉強を欠かさない姿勢、新しい知識や情報を積極的に取り入れていく姿勢が必要とされます。
次に、資格についてです。
投資ファンドで働くために、絶対に必要な資格はありません。
投資ファンドでは実力や経験が圧倒的に重視されるからです。
ですが、知識をつけるという意味で簿記(2級以上)や証券アナリストの資格を持っていると、仕事に役に立つかも知れません。
また、海外のレポートを読む必要も出てくるため、TOEIC等の外国語の知識も持っているとよいでしょう。
投資ファンドへの道
投資ファンドでは、基本的に新卒の採用は行っていません。
その多くは、金融や会計業界、コンサルファーム等ですでに高度な専門知識を身に着けた人達を中途で採用しています。
それでは実際にどのような方法で投資ファンドに就職するのでしょうか。
- 投資銀行(IB:Investment Bank)で経験を積み、投資ファンドに就職する
投資ファンドが利益を出すうえでの一つの重要な要素が、買収価格を抑え、売却価格を高くすることです。
投資銀行はM&Aのプロとして、価格形成のメカニズムや交渉のポイントを詳しく知っているため、投資ファンドへ就職する上で有利です。
まずは投資銀行に就職します。数年間働いて知識と経験を積んだ後、投資ファンドに就職するケースです。
- コンサルティングファームや税理士法人で経験を積み、投資ファンドに就職する。
投資ファンドが利益を出すうえでもう一つ重要な要素が、投資先の経営改革です。
コンサルティングファームの経験者はまさに経営のプロであり、収益改善や成長戦略の策定を得意としているので、投資ファンドへ就職するうえで有利です。
特に公認会計士や税理士等の資格を有している場合、最低限の専門的な知識は身についていると判断されるため、就職に有利に働くことがあるようです。
まずはコンサルティングファームに就職します。
ここでいうコンサルファームは、戦略系でも総合系でも会計系でもOKです。
経営コンサルティングの経験を積んだうえで、投資ファンドに就職するケースです。
- トレーダーとして経験を積み、投資ファンドに就職する。
投資ファンドで働く上で、比較的多いキャリアステップであると言われています。
まずはトレーダーとして就職します。
数年間働いて知識と経験を詰んだ後、投資ファンドへ就職するケースです。
- 投資信託会社で経験を積み、投資ファンドへ就職する。
トレーダー同様、こちらも比較的多いキャリアステップであると言われています。
ただし、投資ファンドという仕事は非常に人気の高い仕事です。
ヘッドハンティングや人脈の紹介から就職するケースも多いです。
また求人数も多くなく、退職等で人員補充する必要がある場合にのみ求人が出るケースが多いため、その就職倍率は非常に高いと言えるでしょう。
投資ファンドへの就職を考えている場合、自身の専門性をしっかりと語れることは勿論、どのように自己アピールをして狭き門を潜り抜けられるかを考える必要があると言えるでしょう。
投資ファンドの年収は公開されていないので、正確な平均年収は未知数です。
また運用状況によって報酬も変わってくるため、年収も年によってマチマチといった場合が多いです。
ただ、相場では投資ファンドの年収は1,000万円前後、優秀なプレイヤーだとその年収は数億円とも言われています。
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投資ファンドの年収について
年収はどれくらい?
投資ファンドの年収は、ベースとなる給料と、キャリーと呼ばれる成果報酬で計算されます。
ベースについては、アソシエイトとマネージャーで異なりますが、コンサルティングファームや投資銀行からの転職者が納得する水準なので、アソシエイトで1,000万円以上出るケースもざらにあります。
それ以上に大きいのがキャリーの部分です。
キャリーの仕組みは投資ファンドによって様々ですが、投資ファンド全体の運用成績と、自身がかかわる案件の運用成績を踏まえて計算されます。
キャリーが得られるのは投資した企業を売却するタイミングなので、短くても数年頑張ったうえで成果が出ることが前提です。
またその投資案件に長くかかわっているほどキャリーの規模は大きくなります。
自身が携わった投資案件が大成功すれば、キャリーによって年収1億円といった水準が可能になります。
仕事は激務?
投資ファンドの労働内容は上記に述べた通りです。
非常に責任が重く、勉強も欠かせない仕事であるため、激務であると言えるでしょう。
また徹底的な実力主義の会社も少なくなく、外資系の企業の場合は成績が出せないとクビになってしまう可能性も考えられます。
高い目標を持って常に学ぶ姿勢を厭わない人にしか勤まらない仕事であるといえます。
その分報酬も非常に高く、やりがいがある仕事です。
将来性について
投資ファンドでは、様々な知識や能力が必要とされます。
専門性も非常に高く、社会貢献性もあるため、業界として無くなるということは考えにくいでしょう。
また投資ファンドで得られるスキルは経営に必要なすべてのスキルなので、仮に投資ファンドの世界から離れることになっても、どこでも活躍することができますよ。
投資ファンドへの就職を考えている場合、自分の専門性とファンドの専門分野をすり合わせながら、自分に合ったファンドを見つけるようにしましょう。
まとめ
投資ファンドは高給取りで非常に人気の高い就職先である一方、その労働内容や必要とされる能力は非常に大変で専門的なのです。
就職・転職を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
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この記事の監修者

戦略コンサルティングファームのA. T. Kearney、大手IT企業NECのM&A部門を経て、レックスアドバイザーズ取締役に就任。
コンサルティングファーム、PEファンド、M&A、経営企画等に関する広範な知識を有する。
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