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監査トレーニー制度は、働きながら公認会計士を目指す人に向けた支援制度で、大手監査法人を中心に導入が広がっています。
給与を得ながら実務経験を積める上に、予備校費用の補助や合格後の採用保証など、受験生にとって大きなメリットがあります。
本記事では、監査トレーニー制度の内容や導入法人、業務内容、1日のスケジュールから、転職成功のためのポイントまで詳しく解説します。
【この記事からわかること】
- 監査トレーニー制度の仕組みと導入している監査法人
- 働きながら合格を目指すための業務内容・スケジュール
- 求人事情や年収、制度のメリット・デメリット
監査トレーニーの概要
監査トレーニー制度を理解するには、まず監査法人の役割や業務内容、制度の仕組みについて知ることが重要です。
監査トレーニーは、公認会計士を目指しながら実務を経験できる貴重な制度であり、受験生にとっては大きなアドバンテージとなります。
本章では、監査法人の概要から制度の特徴、日々の業務内容までを詳しく解説します。
そもそも監査法人とは
監査法人とは企業の会計処理や財務諸表の作成が適正に行われているかを、独立した第三者の立場から監査する法人です。
監査は公認会計士のみが実施できる独占業務のため、監査法人には公認会計士が多く勤めています。
監査だけでなく。M&Aや財務などの高度な会計知識が必要とされる分野のコンサルティング業務を行う監査法人も多いです。
監査法人の仕事内容の詳細については、以下の記事をご覧ください。
監査トレーニー制度とは
監査トレーニー制度はEY新日本有限責任監査法人を筆頭に、複数の監査法人が導入しています。
働きながら公認会計士試験を突破するために、試験勉強をしながら監査実務を経験できるという制度です。
この制度を利用すると、会計士として多角的に成長できる機会に触れながら試験合格を目指すことができます。
実際の監査法人で働きながら実務経験が積めると共に試験勉強ができるということで、会計士を目指す人ならば是非知っていてほしい制度です。
また、他の監査法人でも名前を変えて同様の制度を導入している例もあるようです。
入社したいと考えている監査法人にどのような制度があるかを調べてみるとよいでしょう。
監査トレーニーの主な業務内容
主な仕事は、会計士のサポートとなります。
監査法人にはさまざまなクライアントを持ち、国内の事業会社、海外の日本法人など、形態が異なります。
また、会計基準や使うソフトといったさまざまな差異を通じ、監査の実情を学べることが監査トレーニーの特徴です。
この業務補助は公認会計士に必要な実務経験にカウントできます。
監査トレーニーの主な業務内容として以下の例が挙げられます。
- 監査調書の作成補助
- 財務データの整理や集計
- クライアントの財務データのチェック
- 確認状の発送手配
- 監査に関連する書類のチェック
- 現金預金、貸付金、借入金など簡単な勘定科目の監査
- 監査チームのスケジュール調整 等
事務員ではなく、あくまでトレーニーですので、実践的な業務を任されるでしょう。
公認会計士1年目のスタッフが担当する業務に近いイメージです。
上記の業務を通じて、監査の実務で求められるスキルやコミュニケーション能力等を身につけられます。
監査トレーニーはチームの一員として、監査の開始から終了まで、間近で見ることになります。
ほかの受験生にはない、大きなアドバンテージといえるでしょう。
監査トレーニーとして働いた場合の一日の流れ

ここではEY新日本有限責任監査法人の制度をもとに説明します。
監査トレーニーとして働くと、実務を経験しながら試験勉強をすることができます。
原則として残業はないので、業務時間は9:30〜17:30になり、その時間外で試験勉強をしていくことになります。
公認会計士試験合格に必要な勉強時間は3500時間といわれています。
上記の勤務時間から合格までに必要な日数を計算してみましょう。
通勤に往復1時間かかると計算し、食事等の生活時間がトータルで2時間かかるとします。
すると平日は1日4時間程度の勉強時間が確保できます。
休日は倍の8時間勉強すると仮定すると、週の勉強時間は36時間、1ヶ月に換算すると144時間ですので、25ヶ月で必要とされる勉強時間に達することができます。
つまり、監査トレーニー制度を利用して公認会計士試験に合格するには、2年が目安になるということです。
1日の大まかな流れは以下のようなイメージです。
時間帯 |
繁忙期 |
閑散期 |
午前中 (出社~昼頃) |
|
|
午後 (昼休憩後~18時頃) |
|
|
18時~ |
退社 業務量によっては残業の可能性あり |
退社 |
監査法人は繁忙期と閑散期で業務量の差が大きいため、監査トレーニーのスケジュールも大きく変動します。
繁忙期は監査実務に携わる場面が多いですが、閑散期は業務量が落ち着いている分、勉強に時間を割ける傾向です。
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監査トレーニーになるには
監査トレーニーとして働くには、監査法人への入社が前提となります。
どのような応募条件があり、求められる人物像やサポート制度にはどんな特徴があるのでしょうか。
本章では、代表的な制度を導入しているEY新日本有限責任監査法人を例に、監査トレーニーになるためのポイントを解説します。
監査トレーニーとして働くには
監査トレーニー制度及びそれに該当する制度は、EY新日本有限責任監査法人をはじめとした「働きながら公認会計士試験合格を目指す制度」ですので、まずは入社することが要件になります。
ここでは、EY新日本有限責任監査法人の募集要項を確認してみましょう。
必須要件
- 4年制大学卒業以上
- 事業会社での実務経験2年以上
- 日商簿記2級程度の会計知識
求める人物像
- 会計士資格取得(日本・USCPA)に対し真摯に取り組んでいる方
- 粘り強く目標に向かって取り組める方
- コミュニケーション能力が高い方
- チームワークを大切に出来る方
また、原則残業は無く、業務終了後は勉強時間に充てることができます。
予備校の学費も6割補助され、合格時にお祝い金も支給されます。
働きながら合格を目指す人にとっては、非常に充実した制度と言えるでしょう。
働きながら公認会計士合格を目指す方はこちらもご覧ください。
公認会計士は働きながらでも取得可能な資格?
監査トレーニーとして働きながら合格するコツ
監査トレーニーはさまざまなサポートが受けられますが、一方で仕事をしながら勉強をするということでもあります。
睡眠時間を削るような勉強の仕方は、仕事に支障をきたします。
そうならないようにスキマ時間の活用が大切です。
また、体力のある就業前や、出勤の移動時間に勉強に取り組むことも重要になります。
生活リズムを整えることが、勉強と業務を両立させるコツです。
トレーニーの周りには、現役の公認会計士がたくさんいます。
実際の現場に身を置くことは、モチベーションアップにつながるでしょう。
また、以下のような方法で監査トレーニーならではのメリットを活かすことも大切です。
- 試験に出題される内容と監査現場での実務がリンクしていると意識しながら仕事をする
- 福利厚生制度を上手く活用する
公認会計士試験で出題される内容の中には、座学の勉強だけではイメージしにくい分野も多く存在します。
しかし監査トレーニーとして監査法人に勤めれば、試験で出題されるような内容に仕事という面から携われます。
例えば監査論の内容は、監査法人の主要業務である監査業務との関係性が非常に強いです。
日々の仕事が試験勉強になると意識すれば、合格に必要な知識が身につきやすいでしょう。
また、予備校費用の補助や試験休暇制度などの福利厚生制度を活用すれば、生活費や勉強時間を無理なく確保できます。
利用できる制度を上手く活用し仕事と勉強を両立することも、働きながら勉強する上で大切です。
監査トレーニーの求人はエージェントに相談
監査トレーニーは、前述の通り、公認会計士を目指す受験生にとって有用な制度です。
活用すれば、公認会計士への道への助けになることは間違いないでしょう。
ただし、トレーニーに対して、名目だけでなくきちんとサポートしてくれる監査法人であることが大切です。
監査法人に強いエージェントを活用することも、ひとつの選択肢となるでしょう。
エージェントは、トレーニーの非公開求人に関する情報や、監査法人の実際の評判といった、受験生ではなかなか得るのが大変な、貴重な情報を持っている場合も多いです。
公認会計士の就職についてはこちらもチェック→
公認会計士は就職に有利?実態を解説!
監査トレーニーのメリット

監査トレーニー制度には、働きながら学べる環境や充実したサポート体制など、多くのメリットがあります。
ここでは代表的な4つの利点を具体的にご紹介します。
安定した給与と予備校代などの福利厚生
監査トレーニーの最大のメリットは、働きながら試験勉強ができるため金銭的な心配がない点です。
監査法人に正社員として勤務するため、安定した給与を得られます。
また、「監査トレーニーとして働きながら合格するコツ」でも紹介したように、監査トレーニー枠では以下のような制度も活用できます。
- 予備校費用の補助
- 試験休暇制度
- 公認会計士試験の予備校費用は数十万と決して安くないため、予備校費用が懸念になっている人も多いでしょう。
監査トレーニーとして予備校費用の補助制度を活用すれば、講座の受講にかかる金銭的な負担を大幅に軽減できます。
早期からの実務経験によるスキルアップ
監査トレーニーとして入社すれば、公認会計士試験に合格するよりも前から監査の実務経験を積めます。
そのため他の公認会計士1年目のスタッフよりもリードした状態となります。
ある程度スキルや実務経験を積んだ状態で公認会計士としてスタートできるため、よりスピーディーなスキルアップが可能です。
公認会計士が活躍できる場は監査法人以外にも多数存在します。
早い段階で実務経験を積みスキルアップができれば、ほかの職場への転職や独立開業なども早期に実現できるでしょう。
実務による「財務会計論」などの学習
監査トレーニーとして監査業務に携われば、座学だけでは理解しにくい試験範囲についても効率良く勉強できます。
公認会計士試験の出題科目の中で、監査トレーニーの実務と特に相性の良い科目は監査論と財務会計論です。
監査論は理論だけでなく実務感覚も求められるため、苦手に感じる受験生が多くみられます。
監査トレーニーとして実務経験を積めば自然と実務感覚を養うことができ、ほかの受験生よりも大きくリードできるでしょう。
財務会計論は公認会計士試験の中でも最も配点が高い重要科目です。
そして、監査トレーニーの仕事内容である監査調書の作成補助では、財務会計論で問われる知識を身につけられます。
実務がそのまま試験勉強になるため、仕事をしながら効率良く学習を進められるのです。
合格後の勤務先の確定
監査トレーニー制度は多くの場合、公認会計士試験の合格後も対象の監査法人で一定以上働くことが条件とされています。
すなわち、公認会計士試験合格後の勤務先が確定した状態となります。
合格後の勤務先が確定しているため、就職活動についての心配がありません。
なお通常は公認会計士試験に合格してから監査法人に入社する場合、慣れない環境で一からのスタートです。
しかし監査トレーニーとして入社し経験を積めば、公認会計士1年目の時点で職場環境に慣れた状態となります。
「職場環境に慣れるまでの時間」が不要なため、仕事面での不安やストレスを抑えられるでしょう。
早期からの実務経験によるスキルアップ
監査トレーニーとして入社すれば、公認会計士試験に合格するよりも前から監査の実務経験を積めます。
そのため他の公認会計士1年目のスタッフよりもリードした状態となります。
ある程度スキルや実務経験を積んだ状態で公認会計士としてスタートできるため、よりスピーディーなスキルアップが可能です。
公認会計士が活躍できる場は監査法人以外にも多数存在します。
早い段階で実務経験を積みスキルアップができれば、ほかの職場への転職や独立開業なども早期に実現できるでしょう。
会計士試験合格の求人
監査トレーニーのデメリット
監査トレーニー制度には多くの利点がある一方で、注意すべきデメリットも存在します。
ここでは、代表的な3つの課題について詳しく解説します。
残業時間が長いと勉強時間が削られる
監査トレーニーは通常の正社員と同じように勤務するため、勉強に充てられる時間はどうしても短くなります。
特に残業時間が長いと勉強時間が削られてしまい、思うように勉強を進められない時期が発生する恐れもあります。
採用条件によっては手取り額が少ないことも
監査トレーニーは基本的に正社員として入社しますが、他のポジションに比べると給与額は低めの水準です。
非正規雇用の場合は勉強時間を多く確保できるものの、正社員の場合よりもさらに給与額が下がり、手取り額は少なくなってしまいます。
安定した収入が得られる点をメリットとして紹介しましたが、高収入は難しい点を押さえる必要があります。
就職先が限定される
監査トレーニーは一部の監査法人でのみ導入されている制度です。
そのため監査トレーニーとして入社しようと考える場合、どうしても就職先は限定されてしまいます。
また前述のように、公認会計士試験の合格後も一定以上の期間は対象の監査法人で勤務することが前提となります。
職場の選択肢が狭まる点には注意が必要です。
こちらの記事もチェック→
監査トレーニーの年収や求人募集について

監査トレーニー制度には多くの利点がある一方で、注意すべきデメリットも存在します。
今回は、3つの課題について詳しく解説します。
年収はどれくらい?
監査トレーニーは、監査法人で実務経験を積みながら試験勉強をする制度です。
基本的には正社員として入社するため、社会保険や企業の福利厚生制度を利用することが可能です。
EY新日本有限責任監査法人の例を挙げると、月給は238,000円、年収は350〜380万円になるようです。
働きながら公認会計士試験勉強を推奨する制度を導入している法人の中には、非正規で雇用している場合もあります。
この場合、福利厚生制度の利用に制限がかかったり、収入がやや少なくなる傾向があります。
その代わり、時間の融通が利きやすくなり、正社員採用された場合よりも勉強時間が多く確保できる傾向があります。
働きながら公認会計士試験を目指す方は、自分の行きたい法人の制度を調べるとともに、収入面と勉強時間のことを加味しながら自分のキャリアを考えられるとよいでしょう。
公認会計士の実務経験についてはこちら
公認会計士登録に必要な「実務経験」とは?業務内容やどこで行えるか解説!
監査トレーニーの求人数はどれくらい?
働きながら公認会計士試験勉強をできる制度で、誰でも応募できる制度として募集しているのはEY新日本有限責任監査法人です。
その他のBIG4といわれる法人では、短答式合格者のみの受け入れであったり、そもそも受け入れていないというケースもあります。
また、その他の中小監査法人では、入社は可能だが制度としては取り入れてはいないため自主的な勉強が必要になる等、大々的には募集していないケースもあるようです。
実際に問い合わせして、自身が入社を希望している法人に制度があるのかどうかを確認してみるとよいでしょう。
監査法人の選び方はどうすれば良い?就職&転職する準備とは
まとめ
監査トレーニーとは監査法人で働きながら公認会計士の資格取得が目指せる制度です。
公認会計士として働く先輩スタッフの業務を間近で見ながら、自身も監査の実務経験を積むことができます。
合格後の就職先が確定する点や、早期のスキルアップが期待できる点も大きなメリットです。
監査トレーニーであれば勉強しながら安定した収入を得られますが、監査法人の他のポジションに比べると給与水準は低めです。
また、監査トレーニーを導入している監査法人は少なく、大々的には募集していないケースも見受けられます。
監査トレーニーの求人を効率良く探し、就職活動に向けた万全の対策を行うためには、転職エージェントを活用するのがおすすめです。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
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