転職お役立ち情報
会計事務所で人手が不足しているという話を聞くことが増えてきています。
様々な要因が複雑に関わっているためですが、マクロの視点で見れば、会計事務所も一般企業と同じように少子高齢化の影響を受けています。
特に中小企業において人手不足に深刻な悩みがあるように、中小規模の会計事務所でも同様の傾向にあります。
会計事務所が人手不足になる理由は、いくつかあります。
今回はその理由と展望について解説していきましょう。
会計事務所が人手不足の背景
そもそもなぜ人手不足に陥るのか?
その背景には、会計事務所ならではの理由があります。
会計事務所では新卒採用より中途採用が多い
多くの会計事務所では即戦力を求めて中途採用を優先しています。
一般企業のように新卒者を採用して長い時間をかけて教育をしていく余力がないためです。
顧問先に月次で訪問をしている会計事務所であれば、訪問先のクライアントと経営課題の共有や、当月の会計トピックの認識合わせ等をすることが必要になるため、ある程度の実務経験がなければ対応ができない背景があります。
会計事務所は離職率が高い業種
会計事務所が提供している基本的な会計サービスは、クライアントの会計情報を的確に把握し、適時適切なタイミングで会計情報を経営者に提供することにあります。
会計事務所の規模によって対応方法や報告目的は変わりますが、本質的な差はありません。
そのため、会計事務所で培った経験は、他の会計事務所でも有用であり、転職の際に大きな武器となっています。
また、担当するクライアントや、会計事務所の所在地、 所属チームの善し悪しによって、同じ業務でも年収が異なることもあります。
より良い待遇を目指して転職をする方は少なくなく、これが会計事務所で離職率が高くなっている大きな要因となっています。
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環境が人手不足の原因になることも
会計事務所を取り巻く環境は日々変化しています。
環境に変化が生じれば、働く人間も変わるものです。
それによる人手不足も起こりうると考えられるでしょう。
会計事務所の経営環境に起因する人手不足とは
事務所内での作業は多岐にわたっており、会計面から見たクライアントの経営環境のウォッチ、記帳代行をしている場合には請求書類等のファイリングと保管、チームでクライアントの案件を対応している場合には案件進捗管理の共有等があります。
高度な専門性を有している方が、これら非効率的な業務を対応することは、会計事務所の経営にとって、高額な人件費の無駄遣いにつながります。
また、これらの間接業務は会計事務所の収益に直接貢献するものではないため、事務所の人的資源を最小限にするべきですので、パート社員や派遣社員等で対応することがよく見られます。
しかし、会計事務所の事務員給与水準は高くなく、かつ、クライアントの重要情報に関わるために、守秘義務をしっかりと守ることができる人であること等、採用のハードルを上げざるをえないため、人材を集めることがなかなかできない背景もあります。
季節性の業務量の偏りも人手不足の一因
会計事務所は専門的な会計サービスをクライアントに提供する事業のため、その繁忙期が偏っていることも一因です。
特に、クライアントの決算月から申告期限までが最も忙しくなりますので、一般的には、毎年3月から5月までの期間、および12月から2月までの期間がピークとなります。
会計事務所では、このピークに合わせた人材を擁するわけにはいかないため、期間中は、現職員による残業で対応しています。
大手の会計事務所になると、最新のIT技術を取り入れて、既存業務の効率化を進めていくのですが、中堅規模以下の会計事務所では、このような効率化を目指すためのリソースそのものが不足しており、従来からのやり方を続けざるを得ない実情もあります。
このようなことから、業務効率が低下しているにも関わらず、売上を獲得するためにより多くの業務量をこなさなければならないため、年収に見合った労働環境であると感じることが難しくなっている一面もあります。
会計事務所の人手不足と将来性
2014年に、機械学習のMichael Osborne准教授(Oxford University)が、米国において2024年から2034年までに多くの職種が機械やAIに置き換わる可能性があると発表し、関係する様々な業種に衝撃を与えました。
(出典)The Sydney Morning Herald
米国の事情と異なる日本の労働環境・業務環境ですが、その可能性が高い職種リストには、「税務申告書の作成代行」、「簿記、会計、監査の事務員」が含まれており、これら会計事務所サービスの根幹に関わっています。
足元を見ると、近年では、マザーズ市場に上場した「freee株式会社」が提供している安価なクラウド会計ソフト、「株式会社マネーフォワード」による個人の家計簿もターゲットとしたソフト等が急速に普及しており、誰もが自分自身で経理業務を処理できる環境が一般化しつつあります。
会計事務所では、記帳代行に関する業務収入が価格競争によって低下傾向にあり、その収益性が悪化していますが、これを好機と捉え、収益性の低い業務はクライアント自身に対応してもらい、試算表のレビュー等の付加価値の高い業務へと合理化し、環境の変化に適応する必要があります。
高度な専門領域を持つ会計事務所では引き続き強みを発揮か
会計業務に関するソフトウェアの精度の高さ、使いやすさは年々向上しています。
現状では、前提条件を満たした取引について、自動的に会計処理ができるようなレベルに達してきていますが、まだまだ IT企業が属する情報産業や、グローバル展開企業等の変化のスピードの方が速く、ソフトウェア側で追いつくことができない状況にあります。
そのため引き続き、試算表のレビューや会計情報分析等は重要な業務として継続することが見込まれるでしょう。
また、大手企業やグローバル企業を持つ会計事務所では、ボーダーレスな経済環境を背景に複雑な取引量が増加しています。
これらの取引にかかる高度な相談や、会計処理方法、事業拡大に関するプロジェクト対応等を幅広く対応するための人材が引き続き必要とされているので、人手不足の解消が望まれるでしょう。
上場準備支援やガバナンス支援業務は引き続き多い
新興市場のマザーズを中心に、2020年度の新規株式公開企業数は、前年比で8社増加となる103社で引き続き活況が続いています。
産業別でみると、 「情報・通信業」で35.9%を占める37社で最多となり、次いで「サービス業」の28社でした。
これらの産業は参入障壁が高くないこと、アイデア次第で資金調達が可能であることを背景に、20代でも起業する方がいます。
株式公開を実現できた企業は、株式公開を目指す企業の総数のうち、一握りかもしれませんが、引き続き上場を目指す企業は多いです。
これらの企業から上場準備に向けた体制構築の支援、取締役会や社内の決裁制度を構築するための支援等の依頼が会計事務所に寄せられています。
公開を目指すベンチャー企業では、これらの 体制整備を早い段階から意識しているもの。
会社を創立した時期は創業者の知人等のつてで中堅規模クラスの会計事務所へ業務を委託するケースがあります。
ハイレベルな業務に関する人手はまだまだ必要とされているのです。
会計事務所が自ら人手不足を解消していくことで、人手不足になやむ企業のお手本になる
会計事務所の人手不足の悩みは、クライアント企業の悩みと同じです。
会計事務所が、自社の人手不足を自ら解決する糸口を見つけ、 必要人員数の確保と、それに伴う業務の効率化を推進していくことが必要です。
人手不足を解消するための対策として、まずは新卒あるいは未経験者でも積極的に採用し、中長期的に育成していくことが挙げられます。
経験豊富なシニアを採用し、事務所内で若手との協同作業により、多様性を持たせることも一考の価値があります。
若手が経験していないことをシニアが伝えることで、若手を早期に育成できる機会にも恵まれるでしょう。
時間的に余裕があるシニアであれば、通常は業務外である土曜日は日曜日でも働くことができるかもしれませんし、特に会計事務所の繁忙期だけでもシニアに支援してもらうような、柔軟な働き方も人手不足の解消に役立つでしょう。
また、税理士資格等の高度な資格と豊富な経験を持っている方で、家庭の都合によりフルタイムで働くことができない方にも、即戦力を重視して、パートタイムで対応してもらうことも有用です。
時短勤務の制度を取り入れることで、午後13時から14時までのような柔軟な勤務環境が可能になれば、多くの方にとって魅力的でしょう。
まとめ
会計事務所が人手不足になる背景には、会計事務所が持つ傾向や、環境の変化があります。
今後業務が簡素化すれば必要な人手は減るでしょう。
しかし、高度な業務に関しては税理士が必要なことはまだ多く、むしろ活躍のフィールドが広がることも期待されています。
会計事務所が人手不足を解決することは、クライアントへの手本を示すことにもつながるでしょう。
会計事務所への就職・転職を考えている方は、今後の動向についてぜひ注視してみてください。
Profile レックスアドバイザーズ
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