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非常勤監査役は常勤監査役以外の監査役のことです。
会社の営業時間中は監査役として職務に就く常勤監査役と違い、非常勤監査役は出社の頻度が非常に低いです。
出社の頻度以外にも、非常勤監査役にはほかの監査役とさまざまな点に違いがあります。
今回は非常勤監査役について、仕事内容や役割、ほかの監査役との違いなどを解説します。
非常勤監査役の役割と意義
非常勤監査役は常勤監査役以外の監査役です。
文字通り非常勤であり、取締役会や監査役会への出席以外の目的で出社することは少ないようです。
非常勤ではあるものの、監査役として求められる役割について常勤監査役との大きな違いはありません。
この章では以下の事項について解説します。
- ①監査役とは
- ②非常勤監査役の役割
- ③非常勤監査役の意義
①監査役とは
監査役とはなんでしょうか。
監査役とは、株主総会で選任される会社法上の役員です。
主な役割は、取締役の職務執行を監査する役割を担っています。
取締役が行っている職務に対して、不正がないかを独自に調査し、取締役会や株主総会で報告したり、不正行為差止請求の権限を持ちます。
監査役の目線があることで、特に代表取締役が独断できない経営判断をしないための抑止力となっています。
関連記事:監査役の役割や報酬は?
②非常勤監査役の役割
非常勤監査役を含む監査役の役目は、監査役監査基準に記載があります。
「株主の負託を受けた独立の機関として取締役の職務の執行を監査することにより、企業の健全で持続的な成長を確保し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立する義務を負っている」(監査役監査基準2条1項)
この記載内容から、監査役は、第三者的な立場から、企業が健全な経営判断や、業務執行を行っているかを監査することで、企業が株主や投資家からの信頼を得るだとわかるでしょう。
また、監査役は上場企業だけでなく中小企業にも適正なコーポレートガバナンス(企業統治)体制の確立、コンプライアンス(法令遵守)が求められ、監査役にはそれを担保する役割を期待されています。
③非常勤監査役の意義
非常勤監査役を含む監査役は、近年その重要性が注目されてきています。
その背景には、上場企業による不正会計の件数が増加傾向にあることが挙げられます。
2019年度は70件以上の上場企業による不正会計処理問題が発生しています。
また、2020年度も50件以上と高い推移にあり、監査役による第三者の目線での監査がより一層重要視されています。
監査役は、その業務の重要性から、上場企業における子会社管理の観点からも重要視されています。
前述の通り、上場企業による不正会計問題について、子会社での不正会計も少なくありません。
近年では、上場企業の経理部員が、子会社の状況を把握するために子会社の監査役となるケースも増えています。
このように、監査役は単なる形式上の役割ではなく、独立した第三者的な立場から監査意見を述べる重要なポジションです。
非常勤監査役と常勤監査役の仕事内容や報酬の違い
非常勤監査役と常勤監査役の大きな違いは、名前の通り常勤であるか否かです。
非常勤監査役は文字通り非常勤であり、取締役会や監査役会への出席以外での出社は稀となります。
一方で常勤監査役は、会社の営業時間中はその会社の監査役としての職務についています。すなわち、営業時間中は監査役の職務に専念する仕組みです。
以上を踏まえた上で、この章では非常勤監査役と常勤監査役の違いについて解説します。
- 常勤監査役の仕事内容
- 仕事内容の違い
- 報酬の違い
常勤監査役の仕事内容
常勤監査役とは、他に常勤する必要がある職務についておらず、その会社の営業時間中はその会社の監査役としての職務についている監査役のことをいいます。
つまりは、その企業の監査役として専任している監査役が常勤監査役となります。
法律上禁止はされていませんが、複数の会社の常勤監査役を兼任することはできないとされています。
関連記事:常勤監査役の業務内容や役割は?
仕事内容の違い
常勤監査役と非常勤監査役の違いは、企業の監査役として専任しているかどうかです。
最初に紹介したように、常勤監査役は会社の営業時間中はその会社の監査役としての職務についています。
また、ほかに常勤する必要がある職務にはついていません。専任の監査役となります。
非常勤監査役は監査役として専任しているわけではなく、取締役会や監査役会へ出席する以外の目的で出社することは少ないです。
必要な業務が発生したときに都度出社して社内に関わるイメージとなります。
報酬の違い
常勤監査役と非常勤監査役では、常勤監査役の方が年収相場が高めの傾向です。
「公益社団法人日本監査役協会」が1,780社を対象に行なったアンケートにおいて、常勤監査役・非常勤監査役それぞれの報酬額について以下のような集計結果が出ています。
社内常勤監査役の報酬額
- ~200万円未満:0.6%
- 200万円~500万円未満:3.4%
- 500万円~750万円未満:9.8%
- 750万円~1,000万円未満:14.2%
- 1,000万円~1,250万円未満:20.8%
- 1,250万円~1,500万円未満:15.8%
- 1,500万円~1,750万円未満:10.8%
- 1,750万円~2,000万円未満:8.8%
- 2,000万円~2,500万円未満:8.8%
- 2,500万円~3,000万円未満:4.0%
- 3,000万円以上:3.0%
社内非常勤監査役の報酬額
- ~200万円未満:62.9%
- 200万円~500万円未満:18.4%
- 500万円~750万円未満:7.0%
- 750万円~1,000万円未満:4.4%
- 1,000万円~1,250万円未満:3.2%
- 1,250万円~1,500万円未満:1.5%
- 1,500万円~1,750万円未満:1.1%
- 1,750万円~2,000万円未満:0.6%
- 2,000万円~2,500万円未満:0.6%
- 2,500万円~3,000万円未満:0.2%
- 3,000万円以上:0.2%
出典:公益社団法人日本監査役協会 「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスについて」
常勤監査役は「1,000万円〜1,250万円未満」、非常勤監査役は「〜200万円未満」が最も多いです。
専任である常勤監査役の方が業務量が多く拘束時間も長いため、これほどの年収差が生まれていると考えられます。
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非常勤監査役と社外監査役の仕事内容や報酬の違い
社外監査役とは社内からの昇格ではなく、社外から就任した監査役のことです。
就任までの経緯によって定義されるものであり、法的に定められている役割や権限は社内監査役と同じものとなります。
この章では非常勤監査役と社外監査役の違いについて以下の面から解説します。
- 社外監査役の仕事内容
- 仕事内容の違い
- 報酬の違い
社外監査役の仕事内容
社外監査役の仕事内容は前述した監査役の仕事内容と同様に、「取締役」や「会計参与」の職務執行を監査することです。
非常勤監査役を含む社内監査役と社外監査役に、職務や権限に関する違いは特にありません。
会社法第2条16号において、社外監査役は以下のように定められています。
「
十六 社外監査役 株式会社の監査役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
- イ その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。ロにおいて同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
- ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
- ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
- ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
- ホ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。
」
簡単にいうと「監査対象である会社と現在および一定期間内にかかわりがない者が社外監査役になれる」イメージです。
このような要件が定められている理由として以下の例が挙げられます。
- 客観的な立場からの監査を行うため
- 親子会社間の支配従属的関係や、親族間の情緒的関係など、特殊な関係を排除するため
- 実質的に社内監査役であった者の社外監査役就任を避けるため
社内監査役と社外取締役に仕事内容の違いはありませんが、社外監査役の方がより独立性を求められるといえるでしょう。
関連記事:社外監査役の業務内容や役割は?
仕事内容の違い
非常勤監査役と社外監査役の役割に大きな違いはありません。
社内監査役と社外監査役の主な違いは就任までのプロセスです。
過去一定期間にわたって対象の会社に勤務していた、もしくは運営に携わっていた事実がない監査役が社外監査役となります。
前項で紹介したように、社外監査役の要件は法律で厳格に定められているものの、仕事内容に関する特別な定めは特にありません。
与えられている役割や権限は、社内監査役・社外監査役ともに同じものとなります。
報酬の違い
前提として、社外監査役には常勤と非常勤の2種類があります。
そのため単に「非常勤監査役」と表現するだけでは、社内非常勤と社外非常勤のどちらに該当するかの判断はできません。
しかし実際のところ、社外監査役は非常勤で就任するケースが多くみられます。
そのため今回は、社内の非常勤監査役と社外の非常勤監査役を比較して紹介します。
社内非常勤監査役の報酬額は、前章で紹介したように「〜200万円未満」が最も多いです。
一方で社外非常勤監査役の報酬額に関する集計結果は以下のようになっています。
社外非常勤監査役の報酬額
- ~200万円未満:31.5%
- 200万円~500万円未満:39.7%
- 500万円~750万円未満:16.0%
- 750万円~1,000万円未満:6.4%
- 1,000万円~1,250万円未満:4.1%
- 1,250万円~1,500万円未満:1.5%
- 1,500万円~1,750万円未満:0.5%
- 1,750万円~2,000万円未満:0.1%
- 2,000万円~2,500万円未満:0.2%
- 2,500万円~3,000万円未満:0.1%
- 3,000万円以上:0%
「200万円~500万円未満」の割合が最も大きくなっています。
すなわち、社内非常勤監査役よりも社内非常勤監査役の方が、報酬額が高めの傾向です。
社外監査役は性質上、高度な知識を持つ専門家が就任するケースが多いため、設定される報酬額も高くなりやすいと考えられます。
非常勤監査役に向いている人は?
監査役は企業を監査する立場として、会社経営や各種専門分野に関する高度な知識が必要です。
そして非常勤監査役は企業の監査役に専任しているわけではなく、必要に応じて適時出社し職務遂行をするイメージとなります。
このように必要な場面で適時適切な対応を行うことが求められる以上、常勤監査役よりも高度な知識や専門性が必要といえるでしょう。
したがって非常勤監査役は、以下のようにビジネスに関する何らかの分野で高い専門性をもつ人が向いています。
- 公認会計士
- 中小企業診断士
- 経営者
- 弁護士
- 同業他社の人材
会計士
公認会計士やUSCPA(米国公認会計士)は文字通り会計分野のプロフェッショナルです。
監査役に求められる仕事の中でも、特に以下のような場面で活躍が期待できます。
- 会計実務や会計監査関連
- IPO準備に向けた内部統制監査
- 資本政策の策定
- IR関連の対応
- 業務提携や資本提携、その他M&A全般
会計士は求められる役割の性質から、責任感のある人や几帳面な人、コミュニケーション能力が高い人が多い傾向です。
これらは非常勤監査役にも求められるスキルといえるでしょう。
会計士に向いている人、会計士としての働き方が向いている人は、非常勤監査役にも向いている可能性があります。
中小企業診断士
中小企業診断士は中小企業の経営課題について診断や助言を行う専門家です。
財務・会計や企業経営理論など、経営判断に必要となるさまざまな知識を有します。
中小企業診断士の有資格者は、経営に関する現状の分析や課題の発見などを行うためのスキルをもつ人材といえます。
したがって、経営分析や課題の発見などの面で監査役としての役割を果たせる可能性が高いでしょう。
経営者
経営者は経営に関する実務経験があり、経営課題への直面・克服経験も有することから、実務目線での監査が可能です。
特に会社設立から上場まで一連の経験をした経営者は、企業の成長を導いた実績・スキルがあるため、業務執行の監査に適した人材といえます。
ただし一口に経営者といっても、会社規模や業種によってはスキルに違いがあります。
そして、ほかの監査役とスキルや得意分野が被っている場合、強みを発揮しきれない恐れが大きいです。
経営者であれば誰でも良いわけではありません。経営に関する知識があり、かつ、自社の課題や現状に適した人材を選ぶ必要があります。
弁護士
弁護士は法律のプロフェッショナルです。法律に関する高度な専門知識を活かし、監査役としての役割を果たせるでしょう。
特に企業法務の知識や経験が豊富な弁護士は、非常勤監査役の適正が高いといえます。
なお一口に企業法務といっても、以下のようにさまざまな分野が存在し、弁護士によって得意・不得意が異なります。
- 臨床法務
訴訟対応や裁判外での交渉など、実際に法的な紛争になったときの法律業務です - 予防法務
紛争やトラブルを避けるための業務です。内部統制やリスクコンプライアンス、労務環境の整備などが挙げられます - 戦略法務
法務面から事業戦略を組み立てる業務です。知財戦略の立案、ファイナンス、M&Aなどが該当します
同業他社の人材
同業他社の人材は、以下のような理由から非常勤監査役に適している可能性が高いです。
- 似たような事業課題や経営課題に直面・克服した経験がある可能性が高い
- 実務経験にもとづいた監査業務や助言ができる
- 会計士や弁護士などの専門家とは違った視点をもつ
- 対象の業界について広い知識をもっており、さまざまな業務に対応できる
ただし、自社にとっての競合に属する人材を監査役にしてしまうと、ハレーションが起こる(周囲に悪影響を及ぼす)恐れが大きくなります。
同業ならどこでも良いわけではなく、事業領域が同じでも競合ではない会社等の人材を選ぶ必要があります。
非常勤監査役の将来性
非常勤監査役は、過去その名前だけで勤務実態がないなど定年後の天下り的なポジションのイメージが残っていました。
ただし、近年では上場企業による不正会計事件など監査役による監査責任などの重要性が注目されているため、名ばかりの監査では通用しなくなっています。
そのことからも、非常勤監査役の役割や重要性は注視されていくことでしょう。
まとめ
非常勤監査役を含む監査役は、従業員からは必要性や業務内容をイメージしにくいポジションかもしれません。
しかし、監査役は取締役の職務執行に不正がないかを独自に調査し、取締役会や株主総会で報告する役割や、不正行為差止請求の権限を持ちます。
取締役による独断的な業務執行を防ぎ、適正な業務遂行を実現させる上で重要な役割といえるでしょう。
近年、上場企業による不正会計事件などの影響により、監査役の役割や必要性が見直されつつあります。
非常勤監査役の重要性も、今後さらに高まっていくと考えられます。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
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