転職お役立ち情報
USCPA(米国公認会計士)は文字通り米国の公認会計士資格ですが、日本を含む世界中の起業で注目されています。
USCPAになるには試験に突破する必要があります。日本の公認会計士試験に比べて合格率は高いものの、難易度が低いわけではありません。
今回はUSCPAの難易度について詳しく解説します。
USCPAの難易度
1.USCPAとは
USCPA(U.S. Certified Public Accountant)とは、米国各州が認定する公認会計士資格のことを指します。
国際ビジネス資格のなかでも最高峰に位置づけられる会計・監査のプロフェッショナルであり、その専門性を活かして多様な業界で活躍しています。
ただしアメリカでの公認会計士の資格ですので日本国内での独占業務は行えません。
それでもUSCPAは日本国内でのみ通用する日本の公認会計士資格と異なり、世界的にも認められた資格であり、アメリカのみならず多くの国で高い評価が得られています。
会計や監査のプロフェッショナルとしてのみならず、マネジメントレベルのビジネス知識を有している事の証明ともなり、その活躍の場は多種多様です。
グローバルに活躍する資格でもあることからビジネスレベルの英語力も必要とされますので、資格取得後も英語力向上に努めることが求められます。
2.USCPAの難易度
USCPAの試験は4つの科目で構成されており、すべての科目で合格点を取ることで資格を取得することができます。
AICPA(米国公認会計士協会)によると、2022年の科目ごとの合格率は約50%程度であり難関資格にしては高い合格率にもみえます。
参照元:AICPA「Learn more about CPA Exam scoring and pass rates」
しかしながら資格を取得するためには合格率が約50%であるすべての科目で合格点をとらなければならないため、合格するのは簡単ではありません。
試験合格のためには勉強時間を確保し、正しく試験対策することが必要です。
【公認会計士・公認会計士試験合格者対象】
なんとなく転職したい・中長期でキャリアを考える方向け
転職相談会
USCPAの試験内容からみる難易度
USCPAの難易度は、実際にどの程度なのでしょうか。
まずは試験内容から、見てみましょう。
1.受験資格
USCPAは州ごとに受験資格が異なる試験です。
USCPA試験を受験するためには受験資格が必要ですが、受験資格は単位要件と学位要件に大きく分けられます。
単位要件とは、会計単位とビジネス単位を定められた単位以上取得した場合に満たされる要件のこと。
学位要件とは、大学や短大などを卒業して一定の学位を得た場合に満たされる要件を指します。
多くの場合は国内の大学を卒業している場合、多くの州が要求している会計単位が不足していることが多いため、受験前に一度確認するとよいでしょう。
なお複数の教育機関の単位を合わせてカウントできます。
2.試験内容
USCPA試験は日本の公認会計士試験とは大きく異なります。
日本の公認会計士はマークシート形式の短答式試験に合格後、論述形式の論文試験の受験を受ける流れとなっています。
一方でUSCPAは科目ごとの受験となっており、出題形式は、四択問題とシミュレーション問題の2種類です。
各科目とも5つのテストレット(問題群のこと)に分けられており、テストレット1から順に解答していく形式です。
各テストレット内で前の問題に戻ることはできますが、次のテストレットに進んでしまうとそれより前のテストレットに戻ることはできません。
試験に合格した後は州ごとに設けられた実務期間や独自の追加試験などをクリアし、 数年の実務経験の後に州ごとのライセンスが交付される流れになっています。
なお取得したのとは別の州でライセンスが必要な場合は 州間の移動申請を行うことが必要です。
3.試験科目
2024年1月からの新制度を解説します。
USCPA試験は必須3科目と選択1科目の計4科目から構成されています。
必須3科目は以下の通りです。
- FAR(Financial Accounting & Reporting):企業や組織を運営するための会計知識
- REG(Regulation):アメリカ連邦税法とビジネス法規
- AUD(Auditing & Attestation):監査手続き、会計士としての責任
選択科目は以下3つの中から1科目選択します。
- BAR(Business Analysis and Reporting):ビジネス分析と報告
- ISC(Information Systems and Controls):情報システムと統制
- TCP(Tax Compliance and Planning):税法遵守と税務計画
なお2023年までは選択科目がなく、必須科目に「BEC(Business Environment & Concepts):経済学概論やIT概論、企業統治と管理会計」が存在しました。
BECは2024年1月に廃止され、現在は前述のように必須3科目と選択1科目の計4科目となっています。
4.勉強時間
USCPAの資格を取得するために必要な勉強時間は、予備校などで公表しているデータで一般的には約1,000時間と言われています。
予備校や通信教育を利用して勉強する場合、週に2回ほど3時間の講義を受け、講義の復習を毎日2時間ずつおこなうと仮定します。
1週間あたりの勉強時間が20時間、これを50週(約1年)継続すると合計が1,000時間となり試験の合格につながるでしょう。
USCPAは働きながら取得する受験者が多く、毎日一定時間確保する難しいことから、1年半から2年ほどをかけて勉強するのが一般的です。
1,000時間から1,200時間ほどの勉強時間を確保するのが現実的な目標になるかと思います。
直近3年のUSCPAの合格率
直近3年以内に行われたUSCPA試験の合格率は以下の通りです。
|
AUD |
BEC |
FAR |
REG |
BAR |
ISC |
TCP |
2024年分 (Q1,Q2累計) |
45.71% |
- |
41.16% |
63.44% |
41.04% |
56.15% |
78.16% |
2023年分 (Q1~Q3累計) |
46.92% |
56.52% |
42.94% |
59.19% |
- |
- |
- |
2022年分 (Q1~Q3累計) |
47.90% |
59.85% |
43.76% |
59.85% |
- |
- |
- |
あくまで科目別の合格率であり、最終的な合格率はさらに低くなります。
なお、上記は英語ネイティブを含む受験者全体の合格率です。過去にAICPA(米国公認会計士協会)が公開したデータによると、2014年の日本人受験者に限定したUSCPA試験の合格率は以下の通りでした。
AUD |
BEC |
FAR |
REG |
28.6% |
28.1% |
38.4% |
36.4% |
全体の数値に比べて合格率が下がっています。母国語でない言語で受験することがハードルになっているためと考えられます。
USCPAと公認会計士の難易度を比較
USCPAと公認会計士を3つの面から比較しました。
|
USCPA |
公認会計士 |
合格率 |
科目ごとの合格率40%~60%程度 TCPのみ70%超 |
短答式試験:10%前後 論文式試験:35%前後 |
勉強時間の目安 |
1,000時間前後 ※英語の勉強を含める場合は1,500時間~2,000時間 |
3,500時間が基準の1つ ※最低2,500時間 |
合格までにかかる期間 |
1年~1年半 |
平均2年~4年 |
単純に比較すると、公認会計士よりもUSCPAの方が難易度が低くみえます。
ただし、アメリカの認定資格であるUSCPAの試験に合格するには、会計知識だけでなく英語力も必要です。
また、日本の公認会計士試験は受験資格の定めがありませんが、USCPAは単位要件や学位要件を満たす必要があります。
USCPAは受験すること自体の難易度が高いといえるでしょう。
USCPAの難易度と対策
USCPAは合格率は高いものの、難易度が低いわけではありません。
適切な対策が合格への近道となります。
1.英語力
USCPAはUSCPA協会が試験を作成し、アメリカの各州が認定する公認会計士資格であるので、試験はすべて英語で実施されます。
USCPA資格の受験には、どの程度の英語力が必要なのでしょうか。
現在USCPAの試験は日本で受験が可能で、米国のみで受験が行われていた時代と比較すると英語のハードルは下がっています。
USCPA試験ではスピーキングやリスニングによる試験が設定されておらず、リーディング、そしてライティングに関する能力しか問われないことも一因です。
大学入試で出題される長文で難易度の高い文章でもないため、ごく一般的なレベルの文章を早く正確に理解できれば受験するうえで問題はありません。
またライティング能力も必要ではありますが、USCPAの試験の多くは選択式であり、記述式で回答が求められるのはBEC(Business Environment & Concepts)のみとなり、ライティングに関しても高い英語能力は求められないでしょう。
英語力の目安としてはTOEICでいえば650~700点程度あれば問題なく受験できるといわれています。
しかしながらUSCPAで扱う独自の専門用語については集中的に暗記することが求められます。
2.予備校・通信教育を利用する
USCPAを受験するなら、予備校や通信教育を利用するのが一般的です。
予備校や通信教育を利用すると、定期的に講義を受講することになり勉強のペースを維持しやすくなります。
また質問や相談を受けつけていることも一般的です。
日々の勉強に疑問があってもすぐに相談できるでしょう。
特にUSCPAは働きながら取得するのが一般的です。
通信教育を利用することにより、自身のペースで進められるとともに、独学とは異なり効率的に勉強を行えることも魅力といえます。
USCPAの難易度からみるメリットと将来性
USCPAの資格を取ると、どんなメリットがあるのでしょうか。
USCPAの将来性もあわせて解説します。
1.メリット
先述した通り、USCPAはアメリカにおける州単位の公認会計士資格ですから、日本人が取得したとしても国内で日本の公認会計士としての業務を行うことは知識的にも法的にも困難です。
それでも近年日本ではUSCPAへの評価が高まっています。
国内におけるグローバル企業やアメリカ資本の企業では米国会計基準を使用していることが多く米国会計基準に精通した人材が求められています。
そのため米国会計基準に精通しているとUSCPAの需要が高まっているのです。
そしてUSCPAは会計分野における専門用語を含むビジネス英語にも精通していると考えられるため、専門用語を通じてグローバルなコミュニケーションも行えると考えられます。
そのためUSCPAを取得すればこのような専門的能力を持っていると評価され、転職で有利に働いたり、キャリアの幅が広がったりするでしょう。
2.将来性
近年、国際財務報告基準(IFRS)の導入や上場企業の内部監査が強化されており、専門的な英語力をもち国際的な基準に精通したUSCPAの需要は今後高まっていくと考えられます。
日本国内においてもグローバルな規模でビジネスを推し進めている企業は年々増えています。
USCPAは、世界的に認知された公認会計士資格です。
そのような国内のグローバル企業や外資系企業で働く場合には自身のスキルにあわせてさらなる強みとなるでしょう。
USCPA試験に関するQ&A
USCPAと簿記1級ではどちらが難しい?
「USCPAと公認会計士の難易度を比較」と同様にUSCPAと簿記1級を3つの面から比較すると以下のようになります。
|
USCPA |
簿記1級 |
合格率 |
科目ごとの合格率40%~60%程度 TCPのみ70%超 |
7%~14% |
勉強時間の目安 |
1,000時間前後 ※英語の勉強を含める場合は1,500時間~2,000時間 |
600時間 |
合格までにかかる期間 |
1年~1年半 |
半年~1年 |
合格率だけを比較すると、USCPAよりも簿記1級の方が難易度が高くみえます。
しかし必要な勉強時間や合格までにかかる期間はUSCPAの方が長いです。
簿記1級は求められる専門性が高いものの範囲は狭く、USCPAは求められる知識の範囲が広いという特徴があります。
試験形式や求められるものが異なるため、どちらの方が難易度が高いか一概にはいえません。
USCPAとEA(米国税理士)ではどちらが難しい?
EA(米国税理士)とはアメリカの内国歳入庁が認定する税理士資格です。
日本では公認会計士と税理士が比較される場面が多くみられます。同じように、アメリカの公認会計士と税理士も比較すると以下のようになります。
|
USCPA |
EA |
試験科目数 |
4科目 (必須3科目+選択1科目) |
3科目 |
合格率 |
科目ごとの合格率40%~60%程度 TCPのみ70%超 |
科目ごとの合格率55%~75% |
勉強時間の目安 |
1,000時間前後 ※英語の勉強を含める場合は1,500時間~2,000時間 |
200時間~300時間 |
合格までにかかる期間 |
1年~1年半 |
2ヶ月~3ヶ月 |
USCPAとEAを比較すると、EAの方が難易度が低いといえるでしょう。
なお、EAは18歳以上であれば誰でも受験可能です。受験自体のハードルもEAの方が低く設定されています。
USCPAのライセンス取得に実務経験は必要?
USCPAのライセンスを取得するためには、試験合格に加えて実務経験が必要です。
実務経験の要件は州によって異なります。要件の例を紹介します。
州 |
実務経験の要件 |
アラスカ州 |
● 一般企業、政府系機関、会計事務所いずれかでの実務経験 ● 会計業務や監査業務等の経験 ● 直属の上司であるUSCPAの下での実務経験 |
グアム、ワシントン州、モンタナ州 |
1年以上の会計業務の実務経験 |
ニューヨーク州 |
直属のUSCPAの下での会計もしくは会計周辺業務1年~2年以上の実務経験 |
まとめ
USCPAは簡単に取得できる資格ではないですがその活躍の幅は広いです。
転職の選択肢も増え、キャリアアップも狙えるでしょう。
また、USCPAを取得すれば、年収面でもプラスに働きます。
自身のキャリアを広げるためにも役立つUSCPA。
取得を検討してみてはいかがでしょうか。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
■公認会計士・税理士・経理の転職サイトREX
https://www.career-adv.jp/
■株式会社レックスアドバイザーズ
https://www.rex-adv.co.jp/
公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
レックスアドバイザーズへ