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公認会計士試験には論文式試験の選択科目の1つに経営学という科目があります。
公認会計士の論文式試験は必須科目と選択科目があり、多くの受験者が「経営学」を選択しています。
それはなぜか?
理由や経営学を選択するメリットを開設します。
公認会計士試験の「経営学」とは
公認会計士の試験は、公認会計士になろうとする方が必要な学識及びその応用能力を有しているかどうかを判定することを目的として、短答式及び論文式による筆記の方法により行われます。
(公認会計士法第5条)
短答式合格の上、論文式に合格することで、「公認会計士試験の合格者」となります。
公認会計士の試験に合格した方は、公認会計士法の規定に従い、業務補助又は実務従事の期間を3年以上経過。
さらに実務補修を修了し、内閣総理大臣の確認を受けることで、「公認会計士」となる資格を有する(公認会計士法第3条)ことができます。
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公認会計士の試験 論文式とは
短答式に合格した方が次に挑む試験は論文式です。
論文式試験は、必修科目の4つと選択科目で構成されます。
選択科目のうちどの科目(経営学、経済学、統計学、民法)を選ぶかは、受験者の経験や学歴等から、最も得意と考えるものになることが一般的です。
公認会計士試験の「経営学」とは
「経営学」は、企業の経営に関する必要な知識や、戦略論、組織論、そしてファイナンス論等を中心とした試験範囲になっています。
試験の内容は、計算問題が中心のファイナンス論と、論述での回答となる経営論や戦略等で構成されています。
計算問題はやや複雑な計算が含まれることがありますが、過去問をしっかり解いて、出題が予想されやすい計算式に慣れることで得点を稼ぐことができます。
論述問題は、ベーシックな理論を中心としていますので、暗記力が試されますが、理論の範囲は他の科目より狭いため、安定した回答ができるしょう。
このように、「経営学」は試験対策がしやすい科目で、学習に要するボリュームが少ないため、受験勉強の時間を十分に取れない方におススメの科目です。
公認会計士試験の「経営学」の内容を知ろう
日本の公認会計士・監査審査会によれば、選択科目の「経営学」は、大別して「経営管理」と「財務管理」に分けられています。
「経営管理」は、経営管理の基礎的理論あるいは個別領域のうち、特に経営戦略、経営組織、経営計画、経営の動機づけ・リーダーシップ、そして経営統制が出題範囲となっています。
「財務管理」は、資本調達、投資の意思決定、資本コスト、資本構成、配当政策、運転資本の管理、企業価値の評価、財務分析、資産の選択、資本市場、デリバティブが出題範囲となっています。
(なお、当分の間、生産管理、販売管理及び労務・人事管理は出題範囲から除外されることになっています。)
(出典)公認会計士・監査審査会
「経営学」で出題される項目は次のとおりです。
「Ⅰ 経営管理」の出題範囲
1.経営管理の基礎
- 管理過程としての経営管理
- トップ・マネジメントの役割
- 経営(企業)理念
- 日本の経営管理
2.経営戦略
- 全社戦略
- 経営資源と多角化戦略
- 事業戦略(競争戦略)
- 製品戦略とマーケティング
- 合併・買収(M&A)と連携戦略
- 国際経営
- 技術経営(MOT)
- 中小企業経営とスタートアップ
3.経営計画
- 経営戦略と経営計画
- 経営計画(長期・中期・短期等)
4.経営組織
- 経営戦略と経営組織
- 組織目標と KPI(主要業績評価指標)
- 組織構造と組織設計
- 組織と環境
- 組織の成長(発展)と組織革新
- 組織学習
- 組織(企業)文化
- 組織間関係
5.組織行動
- 小集団とグループ・ダイナミクス
- 動機づけ(モチベーション)
- リーダーシップ
- キャリア設計とキャリア開発
- ダイバーシティ経営
6.経営統制
- 内部統制と外部統制
- コーポレート・ガバナンス(企業統治)
- 情報開示と IR(インベスター・リレーションズ)
- 企業倫理
「Ⅱ 財務管理」の出題範囲
1.資金調達
- 株式の発行と IPO
- 負債による資金調達
- 新株予約権の利用
2.投資決定
- 投資案の評価方法(NPV 法、IRR 法など)
- 税制の影響(APV 法など)
- リアル・オプション
3.資本コスト
- 源泉別資本コスト
- 加重平均資本コスト(WACC)
- 税制の影響
4.資本構成
- レバレッジ効果と財務リスク
- 資本構成と企業価値-MM 理論
- 資本構成に影響する要因
- エージェンシー理論
5.ペイアウト政策
- ペイアウトと企業価値-MM 理論
- 市場の不完全性とペイアウト政策
6.運転資本管理
- 流動資産管理
- 流動負債管理
7.企業評価と財務分析
- フリー・キャッシュ・フロー
- 企業価値評価
- 財務分析
8.資産選択と資本市場
- 普通株式の評価と投資尺度
- 債券の評価・利回り
- ポートフォリオ理論
- 資本資産評価モデル(CAPM)
- マルチファクター・モデル
- 効率的市場とアノマリー
9.デリバティブとリスク管理
- 先渡しと先物
- オプション
- スワップ
- リスク評価と管理手法
(出典)
公認会計士・監査審査会
出題範囲の要旨について
公認会計士試験で「経営学」を選択して合格可能性を引き上げよう
公認会計士試験の実施規則では、合格基準は以下のとおりとなっています。
「論文式試験について、52%の得点比率を基準として、公認会計士・監査審査会が相当と認めた得点比率とする。
ただし、1科目につき、その得点比率が40%に満たないもののある者は、不合格とすることができる。
論文式試験の採点格差の調整は、標準偏差により行う。」
標準偏差により行う、ということは「偏差値」で判断する、ということを意味しています。
統計上、偏差値52とは、受験者総数の上位42%の方が合格することを表し、概ね2.4人に1人が合格する割合となります。
公認会計士試験の経営学は学習時間が少なくて済む
公認会計士試験で、選択科目4つのうち、最も学習ボリュームが少ないとされているのは「経営学」のため、多くの受験生が選択しています。
これは、公認会計士試験の必須科目で経営学に関する内容をある程度学んでいること、試験で問われる内容は、理論よりも暗記が多く出題している傾向にあるためです。
「経営学」は公認会計士の監査手続きにおいても有用
「経営学」の学習により、ファイナンスの基礎知識が身につくようになりますので、企業価値を理解し、企業が取り組む様々な資金調達や運用を評価できるようになります。
これにより、企業の実体を理解した監査手続きを進めることができるメリットがあります(実際は、主査やマネジャーが監査ポイントを事前に設定します)。
なぜ企業の実態を理解することが、監査手続きに有用なのでしょうか?
企業が作成する財務諸表(会社法の場合)は、一般に慣習として発達した会計処理の原則・手続を任意に適用し、経営者の主観的な判断に基づいて作成されています。
これは、同じ売上規模の会社であっても、選択した会計基準により財務諸表が異なることを意味します。
もし経営者が資金調達や株式公開に向けて、あるいは非常に厳しい経営環境下で、実体の利益よりも会計上の利益をかさ上げしようとする意図がある場合、粉飾決算につながり、様々な利害関係者に重大な影響を及ぼす可能性があります。
企業の実態に照らして、利益水準が高くないか、財務状況は適正かどうかの初期判断は、同業他社との比較や分析からできることもあります。
しかし、経営学の十分な理解は、監査の現場でその兆候を感じ取る手助けとして期待できるでしょう。
まとめ
公認会計士試験の論文式で、選択科目を「経営学」とすることは、他の選択科目に比べて、合格可能性を高めてくれます。
それとともに、その学習内容は実務においても役立ちますので、おすすめです。
公認会計士の財務諸表監査は、証券市場を支える非常に重要な役割を担っています。
「経営学」は、この監査手続きの質を高める学問の1つといえるでしょう。
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