中小企業診断士とは、中小企業の経営に関する診断や助言、サポートなどを行う資格・職業です。
国家資格であり、高度な専門性と幅広い知識が求められます。
難易度の高い試験を突破しなければ資格は得られません。
独立も視野に入れやすいため、今取得したいという人が増えているようです。
やはり年収は気になる要素でしょう。
年収1000万とも、儲からない、やめとけといった、両極端な意見も散見します。
中小企業診断士の年収事情について解説します。
中小企業診断士とは
中小企業診断士とは、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣が登録する資格です。
その名の通り、中小企業が抱える経営上の問題を診断、解決へと導く有資格者であり、試験に合格しないと名乗れない、エキスパートでもあります。
実際の業務は「経営の診断及び経営に関する助言」と法では定められています。
アドバイスや中長期の経営計画の立案など、中小企業の並走者としてさまざまなサポートを行います。
中小企業が99%を占めるとも言われる日本。
中小企業診断士は、日本経済のサポートを行う仕事とも言えるでしょう。
中小企業診断士の年収の実態:平均年収
中小企業診断士の平均年収は約501万~800万程度と言われます。
では、中小企業診断士とは、どんな職業なのでしょうか。
主に中小企業の経営課題の解決をサポートし、経営課題解決に必要な診断、助言の提供などを行います。
経営コンサルタントにも似た仕事です。
中小企業への直接的なサポートだけでなく、行政や金融機関などとの間に入る、パイプのような役割も求められます。
関連して、講演やセミナー、記事の執筆といった活動を行う中小企業診断士も多いです。
コンサルティングや直接的なサポート以外にも、さまざまな場面で活躍します。
それでは、中小企業診断士が得られる平均的な年収について解説していきましょう。
職場によって年収の違いが大きいため、それぞれ取り上げました。
中小企業診断士の年収:一般事業会社に勤める場合
まずは一般事業会社の求人を確認してみましょう。
平均年収としては、600万円前後が多いようです。
もちろん、地域やポジションによっても差があります。
しかし、比較的高年収の求人が多いといえるでしょう。
また中小企業診断士は、資格手当の対象とされているケースも多いです。
基本給は他の従業員と同程度ながら、資格手当によってトータルでの給与が上がる可能性があります。
中小企業診断士の年収:コンサルティングファームに勤める場合
コンサルティングファームは、企業のコンサルティングやサポートを専門的に行います。
初任給や最初の数年は500万円程度が平均ですが、実力と経験次第で1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
比較的高い年収も実現しやすいです。
それは、求められる専門性が高くなるという理由があります。
資格の有無により無条件で年収が上がるわけではないので、実力が非常に重要な要素です。
中小企業診断士の年収:独立開業した場合
中小企業診断士は、独立開業の上、個人で案件を請け負うケースも多いです。
独立がしたいからという理由で中小企業診断士を目指す人もいます。
平均年収はというと、コンサルティング業務日数が年間100日以上の場合、年間報酬は501万~800万円と答えた人が一番多くなりました。
1,000万円を超える高収入の人も多いです。
ただし、300万円以下の回答もあるので、状況は非常に幅広いとわかるでしょう。
得意分野やクライアントの性質によって、得られる報酬額も大きく異なるようです。
独立開業は高年収の可能性がある一方で、平均を下回る年収になる恐れもあることは注意しておきましょう。
参考:日本の平均年収は?
国税庁が実施・公表した民間給与実態統計調査によると、令和2年分調査における給与所得者の平均年収は433万円でした。
過去10年分の同調査の結果を確認すると、いずれも平均年収は400万円台前半となっています。
あくまで給与所得者に限定した平均年収ではありますが、中小企業診断士の年収は高めといえるでしょう。
中小企業診断士の年収が平均年収よりも高い理由
中小企業診断士の年収は、前述のように日本の平均的サラリーマンより高めです。
どうして、こうした高年収を得ることができるのでしょうか。
会社に勤めているか自分で開業したかによっても違いが生じますが、主に以下3つの理由が考えられます。
- 難関資格であり、評価が高いため
- 資格取得者の平均年齢が高いため
- 資格手当の対象になり得るため
順を追って解説します。
難関資格であり、評価が高いため
中小企業診断士は、国家資格です。
試験に受からなければ、名乗れません。
さらに、試験だけではないのです。
- 1次試験
- 2次試験(筆記・口述)
- 実務補習/実務従事
このすべてのステップをクリアする必要があります。
中小企業診断士の1次試験は年に1回、2日間にわたって実施されます。
さらに筆記試験及び口述試験がそれぞれあり、最後に補習の受講ないしは実務従事の実績を得て、初めて資格取得となります。
時間も準備も必要な難関資格です。
それだけに評価が高く、年収を高める一因といえるでしょう。
資格取得者の平均年齢が高いため
ここ数年、中小企業診断士の平均年齢があがっています。
試験の合格者も、一番多いのは30代、次いで40代です。
つまり、中小企業診断士としてキャリアを積んだ世代は、40代以上が中心となります。
中小企業診断士として独立すれば定年は関係ありません。
そのため、セカンドキャリアの準備としてもニーズがある資格です。
もともとの経験値を持ち、さらに中小企業診断士の資格を取得している人が多いとも言い換えられるでしょう。
そのため、年収が高い傾向になります。
資格手当の対象になり得るため
中小企業診断士は開業をする人が多い資格です。
しかし、会社員のまま、資格を取得する人も一定数います。
会社の既定によっては、取得すれば資格手当を受け取れるケースがあるからです。
中小企業診断士の場合、手当の相場はおおむね1~3万円と言われています。
転職をしなくとも、年十数万の収入アップが達成できるでしょう。
また、意欲があり、目標を達成できているという高評価につながり、昇進や昇給といった、査定のプラス要素となるかもしれません。
中小企業診断士の主な職場や合格率
中小企業診断士の年収について、基本的な情報の確認です。
中小企業診断士の仕事内容や資格取得の難易度について解説します。
中小企業診断士の主な職場
中小企業診断士が専門家として活躍できる職場の例をいくつか紹介します。
先ほど年収の解説をした時に出した例がほとんどです。
- 一般事業会社:総務や管理などの部門において、中小企業診断士の資格が求められるケースが多い
- コンサルティングファーム:中小企業を対象としたコンサルティング・直接的なサポートなどを行う
- 独立開業:個人で中小企業診断士事務所を運営する
中小企業診断士の知識はクライアントのサポートに限りません。
問題の解決や対策の実施、マーケティングなど、中小企業そのものの運営にも活用できます。
そのためコンサルティングファームだけでなく、一般事業会社で勤めるケースもみられます。
独立開業しやすい資格のため、個人事務所を運営する中小企業診断士も多いです。
自らが経営者として講師になったり、コラムを書いたりといった仕事をする中小企業診断士もいます。
中小企業診断士の合格率・必要な勉強時間
中小企業診断士の資格を得るには、試験に合格する必要があります。
試験の合格率および必要な勉強時間の目安は以下のとおりです。
- 一次試験:15%~40% 年によって幅が大きいものの、20%台・30%台が多い
- 二次試験:18%~20% 受験者数・合格者数ともに年による差は小さい傾向
- 必要な勉強時間:1,000時間程度
中小企業診断士の合格率は決して高くありません。
必要な勉強時間も長く、長期間にわたっての継続的な勉強・準備が必要です。
講座の受講、専門学校へ通学する、オンラインコースで勉強するなど、いくつか選択肢があります。
独学でも可能でしょうか、ハードルは上がると言えるでしょう。
中小企業診断士については、こちらの記事も参考にしてください。
中小企業診断士が年収アップをする方法
中小企業診断士になったら、士業として年収アップをしていきたいものです。
そのため、押さえたいコツがいくつかあります。
高年収の実現につながる方法を紹介します。
クライアントとなる中小企業が多い場所で働く
中小企業診断士として高年収を得るには、大きな報酬を得られるだけの案件が必要です。
クライアントとなる中小企業が多い場所で働けば、おのずと診断士の需要も高まります。
案件の数や難易度などが高まるので、高年収も実現しやすくなるでしょう。
中小企業が非常に少ない地域で開業しても、クライアントが集まりにくくなってしまいます。
いくら高い能力があっても、クライアントがいなければ能力を発揮できず、収入にもつながりません。
企業が多く集まる都市部やアクセスの良い場所など、立地による影響は意外と大きいものです。
高年収を得るためには、中小企業診断士のクライアントとなり得る企業の多い場所を狙う必要があります。
ダブルライセンスや有利な知識の修得を狙う
ダブルライセンスや高度な知識の修得も、高年収の実現につながる手段です。
中小企業診断士と併せて別の資格を取得し、より高度かつ幅広い業務を行う人も多くいます。
ダブルライセンスにおすすめの資格例をいくつか紹介します。
- ファイナンシャルプランナー
- 社会保険労務士
- 行政書士
- 司法書士
- 税理士
- 日商簿記検定
- 不動産鑑定士
資格の取得によってスキルや知識のさらなるアピールや、強みを活かすこともできるはずです。
自身の進みたい分野に併せ、新たな資格の取得を検討しても良いでしょう。
転職もひとつの手段
さらなる高年収を狙うにあたって、転職もひとつの手段です。
同じ中小企業診断士でも、職場によって得られる年収が大きく異なるケースは珍しくありません。
現在の職場でこれ以上の昇給が見込めないとしても、別の職場ではさらなる高年収が実現できる可能性があります。
給与規定はもちろん、評価制度の違いが年収に与える影響も大きいです。
ただし年収の高さだけでなく、社内制度や働きやすさなども考慮する必要があります。
自身の理想を実現できそうな職場を選ぶことが大切です。
まとめ
中小企業診断士は、中小企業の経営課題解決や成長のために、診断や助言などのサポートを行う職業です。
独立開業して個人事務所を運営する人も多くみられます。
合格率は低く勉強時間も必要です。難易度が高い試験といえるでしょう。
中小企業診断士として得られる年収は、職場による違いが大きいです。
独立開業した場合はさらに幅が広がり、かなりの高年収を実現できるケースもあれば、年収が低くなってしまう恐れもあります。
高年収を実現するには、働く場所の選択、自らを向上させることが非常に重要です。
中小企業診断士は、長く仕事のできる資格です。
高収入を目指すことは、人生を充実させることにつながるでしょう。