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工業簿記とは製造業等を対象とした記帳方法で、日商簿記検定では2級から登場します。
2級および1級に合格するためには、商業簿記だけでなく工業簿記の知識も必要です。
「工業簿記と商業簿記にはどのような違いがあるの?」「どっちの勉強から進めるべき?」とお悩みの人も多いでしょう。
今回は工業簿記と商業簿記の違いや、工業簿記と商業簿記の勉強の進め方などを解説します。
1. 工業簿記とは?
そもそも 工業簿記とは?
まずは、工業簿記とはどのような簿記なのか、工業簿記について解説します。
工業簿記とは、製造業を対象とする簿記です。
仕入れた商品を外部に販売する企業とは異なり、製造業では製品を作るのにどれだけの金額がかかったか原価を計算する必要があります。
実際の経理業務では、原価を計算しその過程や結果を帳簿につけていくため、商業簿記よりも踏む手順が多く複雑になります。
工業簿記を使用する企業の経理業務内容
工業簿記を使用する企業の主な経理業務内容には、原価計算や決算書類の作成などがあります。
原価計算とは製品1個あたりにかかる金額を求めることで、実際原価計算や標準原価計算、直接原価計算などがあります。
作成する計算書類には貸借対照表や損益計算書、製造原価報告書などがあります。
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2. 商業簿記とは?
そもそも商業簿記とは?
一方、日本の企業で幅広く使用されているのが商業簿記です。
日商簿記検定3級で問われる問題は、全て商業簿記からの出題になります。
商業簿記とは、仕入れた商品を販売する商業経営を行う企業を対象とする簿記です。
製造業以外の業種の企業が商業簿記を使用しているため、日本においては工業簿記よりも商業簿記の方が幅広く使用されていると言えます。
商業簿記を使用する企業の経理業務内容
大企業なのか中小企業なのかなど企業の規模や業種などにより実際に行う経理業務には違いが見られますが、商業簿記を使う企業の経理担当者は一般的に以下のような業務を行います。
- 入出金管理
- 企業間取引の記帳
- 財務諸表の作成
- 決算報告資料の作成
- 財務申告書の作成 など
商品の仕入れから販売までの流れを帳簿につけることで会社の財政状況や営業成績などを把握します。
簿記2級についてはこちらの記事もご覧ください。
3. 工業簿記と商業簿記の違い
工業簿記と商業簿記には大きく5つの違いがあります。
続いて、工業簿記と商業簿記の違いを解説します。
工業簿記と商業簿記の違い:対象業種
工業簿記と商業簿記の大きな違いは、対象業種にあります。
工業簿記が製造業を対象としているのに対して、商業簿記は製造業以外の企業を対象にしています。
工業簿記と商業簿記の違い:学習内容
日商簿記検定試験を受験するために工業簿記と商業簿記の勉強を始めてみると、学習内容にも違いがあることに気づきます。
工業簿記では暗記よりも計算方法の理解力が求められます。
一方商業簿記では、暗記力と難しい内容の文章を理解する読解力が求められます。
学習する範囲にも違いがあります。
工業簿記は狭く深い知識が求められるのに対して、商業簿記では浅く広い知識が求められることに注意が必要です。
工業簿記と商業簿記の違い:勘定科目
勘定科目とは、仕訳や財務諸表などで用いられる金額の内容を表す見出しのようなものです。
製造業には製造プロセスがあるため、商業経営の企業にはない勘定科目がいくつもあります。
工業簿記にしかない勘定科目の具体例としては製品や仕掛品、材料、労務費などがあります。
工業簿記と商業簿記の違い:財務諸表などの表示
財務諸表や損益計算書、貸借対照表の作成は、工業簿記と商業簿記のどちらにおいても行われる経理業務です。
これらを作成する時に、表示に違いが見られることがあります。
たとえば損益計算書において工業簿記では「当期製品製造原価」と表示される項目が、商業簿記では「当期商品仕入高」と表示されます。
内容面において特に違いがあるわけではありませんが、表示方法に違いがあることは押さえておきましょう。
計算期間
工業簿記と商業簿記はどちらも1年間の会計期間を設定しています。
日本では4月から翌年3月までを会計期間としている企業が多いです。
工業簿記では1年間の会計期間とは別に1ヶ月単位での原価計算期間を設定しています。
このように短い期間で情報を公開する理由は、製品の原価に問題があった時に素早く改善できるようにするためです。
簿記1級・2級の求人
4. 試験で工業簿記を捨てることはできない
日商簿記検定2級では商業簿記と工業簿記の両方が出題されます。
そして、工業簿記を捨てることはできません。
試験に合格するためには工業簿記も勉強し、ある程度の点数をとれる状態にする必要があります。
工業簿記を捨てられない理由として以下の3つが挙げられます。
- 100点満点のうち70点以上で合格となる日商簿記2級において、工業簿記の配点が40点のため
- 日商簿記の難易度が上がっており、日商簿記で高得点をとるのが難しいため
- 工業簿記の方は基本的な問題が多く、しっかりと対策をすれば点数を取ることが可能なため
工業簿記については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。
工業簿記は難しいのか?日商簿記2級に必要な工業簿記の勉強方法も紹介!
5. 工業簿記と商業簿記の勉強の進め方
これから日商簿記検定試験の受験を目指す人は、どのように工業簿記と商業簿記の勉強を進めていくのが良いのでしょうか。
工業簿記と商業簿記の難易度や効率的な勉強の進め方を解説します。
工業簿記と商業簿記はどちらが難しい?
工業簿記の問題は日商簿記検定3級には出題されず、2級から出題されます。
日商簿記検定2級の問題の内訳は、商業簿記の問題が60点で工業簿記の問題が40点です。
合計点100点中のうち合計70点以上が合格の基準点です。
日商簿記検定の合格率は2級から大幅に下がります。
2024年11月に実施された日商簿記検定(統一試験)の各級合格率は以下の結果でした。
3級 29.5%
2級 28.8%
1級 15.1%
出典:商工会議所 簿記受験者データ
工業簿記と商業簿記のどちらの方が難しいのかは、人により異なります。
工業簿記は計算が多いため数学が苦手な文系の人にとっては難しいと感じます。
数学が得意な人は一度理解すれば、工業簿記の理解は早いです。
一方商業簿記は暗記項目が多く、範囲も広いです。
文章を理解するための読解力も求められるため、国語や暗記が苦手な人は商業簿記が難しいと感じます。
工業簿記と商業簿記の勉強の進め方
簿記の勉強をするのが初めての人は、商業簿記の勉強から始めるのがおすすめです。
数学が得意な人は工業簿記の勉強から始めた方が良いのではないかと考えるかもしれません。
しかしながら商業簿記の基礎知識がある方が、工業簿記は理解しやすくなります。
勉強の進め方としては、日商簿記検定2級を受験する場合は、商業簿記の基本を学んだ後に工業簿記を勉強し、商業簿記の応用を学ぶことで効率良く勉強を進めることができます。
日商簿記検定2級の商業簿記の分野は範囲が広く暗記項目が非常に多いため、試験直前に学ぶことが効率的です。
6. 工業簿記の原価計算
工業簿記ならではの出題範囲として原価計算が挙げられます。
日商簿記2級の試験は全部で5問。
そのうち第4問と第5問で工業簿記の問題が出題されますが、どちらか一方はほぼ確実に原価計算が出題されます。
仕訳問題を除く第4問と第5問の両方が原価計算のケースもあるため、工業簿記の中でも原価計算は特に対策が必要な分野です。
原価計算とは
原価計算とは製品の製造にかかった費用(原価)を計算することです。
原価に含まれる費用として以下の例が挙げられます。
- 材料費:製品を製造するにあたって消費した材料の費用
- 労務費:工場や現場で働く人の賃金、社会保険料、各種手当等
- 経費:材料費と労務費以外の費用。外注費、減価償却費、水道光熱費、保険料など
原価計算によって製造にかかっている費用が可視化されるため、適切な経費削減や適正価格の設定等が可能になります。
工業簿記の原価計算の仕方
原価計算全体に共通する大まかな流れは以下の通りです。
- 製造原価を材料費、労務費、経費に分類し、それぞれの消費額を求める
- 1の金額を、特定の製品に直接関係する「直接費」とそれ以外の「間接費」に分類
- 直接費を「仕掛品」に、間接費を「製造間接費」に振り替える
- 製造間接費を売上高や人員数などの基準に基づいて各製品に配賦し、製造間接費を仕掛品として振り替える
- 仕掛品のうち、完成した分を「製品」に振り替える
ただし、細かな計算方法や必要な作業には原価計算の種類によって違いがあります。
日商簿記2級で出題される原価計算は以下の4種類に大別されます。
種類 |
特徴 |
個別原価計算 |
製品単位やプロジェクト単位で原価計算をする方法 |
総合原価計算 |
一定期間の製造原価総額を総生産数で割り、製品1つあたりの原価を求める方法 |
標準原価計算 |
事前に費用を想定し、目標とする原価(標準原価)を計算する方法。 反対に、実際にかかった費用をもとに原価を計算する方法を「実際原価計算」という。 標準原価を用いて月次決算をする場合は実際原価との差異の発生を避けられないため、後に原価差異の計算および仕訳が必要 試験では標準原価の計算から原価差異の計算および仕訳まで一連の流れを問われるケースが多い |
直接原価計算 |
変動費のみを原価として扱い原価計算をする方法 |
正しい原価計算を行うためには以下の3つが大切といえるでしょう。
- 原価計算全体に共通する大まかな流れを押さえる
- 原価計算の種類ごとの計算方法を押さえる
- 問題を見ただけで原価計算の種類がどれかを判断できるようになるため、問題練習を多くこなす
まとめ:工業簿記と商業簿記の違いを把握し、勉強の計画を立てよう!
工業簿記と商業簿記の違いや難易度、効率的な勉強の進め方などについてご紹介しました。
工業簿記と商業簿記は同じ簿記ですが、特徴が大きく異なります。
工業簿記と商業簿記の違いをしっかり把握した上で勉強の計画を立て、合格を勝ち取りましょう!
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
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