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国家資格である社労士(社会保険労務士)の平均年収はどれくらいでしょうか。
独占業務があり、専門性が高く人気の資格です。
しかし、時には「社労士は悲惨」「やめとけ」「仕事がない」といった声も聞かれます。
一方で年収1000万を達成できる、フリーランスになれるといった話も聞くでしょう。
一体どちらが本音なのでしょうか。
社労士の平均年収と、実際に稼げる社労士とはどんな人か、解説します。
社労士の年収はどれくらい?
まず、社労士(社会保険労務士)の年収はどれぐらいかを解説します。
社労士には企業などに勤務する勤務労務士と、独立開業する開業労務士がいます。
また、年代や地域によっても年収は異なりますので、それぞれ見ていきましょう。
開業社労士の平均年収
独立社労士とも呼ばれる開業社労士。
文字通り、自分で社会保険労務士事務所を開業した社労士のことです。
実は社会保険労務士にとって一番ポピュラーな進路であり、有資格者の8割程度が開業社労士とも言われます。
数が多いこともあり、年収に関してはばらつきが生じます。
年収1000万以上という人もいますが、おおむね400~500万円前後が平均値です。
日本人の年収中央値とも感じるかもしれませんが、定年がないぶん、長く働けることも考慮すると魅力的でしょう。
専門分野のひとつに年金があるぶん、自分が高齢になってもニーズがあります。
また、才覚次第では企業の役員クラスの年収を稼ぐことも不可能ではありません。
個人事業主として運営する人もいれば、事務所を構え、従業員を雇うといった、手広い経営を行うケースもあり、開業社労士としてのキャリアパスはさまざまです。
勤務社労士の平均年収
残り2割の社労士は、会社に勤務する勤務社労士になります。
専門の事業所に勤めるというより、事業会社(一般企業)の労務部門を担当していることがほとんどです。
法改正や、保険関係のトラブルが生じたときなど、いざというときに専門家としての力を発揮するべく、会社に雇用されています。
そのため、勤務社労士は専門手当として年収を高めに設定されているケースが多いです。
年収は600万~700万前後が平均と言われます。
先ほど、資格を取ると開業する人が多いと言いましたが、経験や人脈がものをいう仕事でもあります。
そのため、開業への足掛かりとして勤務社労士を選ぶ人も多いです。
年齢が若い、経験が浅いという方は、一度勤務社労士になってみるのも良い選択でしょう。
大手企業での経験や、実際に労務部門で仕事を行ったことが、開業時の信頼値を底上げしてくれます。
また、福利厚生といった、開業では得られない利点も魅力です。
年代別社労士の平均年収
上記で述べたように、社会保険労務士の資格を持ち、社労士として仕事をするといっても、その年収は就労状況によって異なります。
また、さらなる要因としては、年齢が挙げられます。
年齢 | 月収 | 年収 |
35歳未満 | 41万円 | 670万円 |
40歳未満 | 30万円 | 940万円 |
45歳未満 | 35万円 | 700万円 |
50歳未満 | 39万円 | 760万円 |
65歳未満 | 58万円 | 1,380万円 |
70歳以上 | 25万円 | 450万円 |
参考:令和元年賃金構造基本統計調査
社労士の平均年齢は55歳前後とのことです。
また、業務を行うにあたって労務管理の経験が必要なことを鑑み、30代後半から見てみましょう。
ボーナスや各種手当で状況は異なりますが、積み重ねた経験が収入に影響することがわかります。
地域別社労士の平均年収
社労士の数は、東京都が一番多くなっています。
これは企業数が東京に集中していることが要因のひとつでしょう。
そもそも、仕事の数が東京および首都圏は多いのです。
そのため、年収の平均は東京が一番高く、次いで大阪、さらに愛知・神奈川といわれます。
低いエリアとしては青森や佐賀、沖縄などが500万円台。
また、同じ600万円台である埼玉や山形などは千葉と比べて40~60万程度違うなど、地域によって大幅な差異があります。
自分が住んでいる地域ではどれほどの年収が得られるのか、一度調べてみることをおすすめします。
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社労士が食べていけないと言われる理由
社労士が食べていけないと言われる理由は以下の5つです。
- 知名度がないから年収に繋がらない
- 社労士事務所勤務の給料が安い
- 社労士が増えている
- 専門分野の幅が狭い。差別化しにくい
- 集客ができていない
順に解説していきましょう。
知名度がないから年収に繋がらない
社労士は知名度が低い資格と言われます。
それが影響しているせいで資格取得の難易度が高いわりに、年収も低いことが多いのです。
社労士の試験の合格率はおよそ6%程度です。
目安として、独学で1,000時間程度の勉強が必要になります。
これは目安であり、人によって必要な時間数は違います。
しかし、それぐらい勉強をしても合格率は数%です。
とても難関な試験です。
そんな難関試験に合格しても弁護士や税理士に比べると知名度が低いため、企業が高い年収を出すことはないと言われています。
こうした理由から他に比べて社労士は食べていけないと思われているのです。
しかし、知名度が低いからと言って需要がなくなることはありません。
食べていけないというよりは、資格を取るのに時間がかかるので、その割には年収が低いという認識になります。
社労士事務所勤務の給料が安い
独立をするのではなく、どこかの企業に勤めると年収は高くなりません。
それが食べていけないと言われる原因です。
簡単に言えば会社員として働くのと変わらないので、自分が頑張っても給料は固定されてしまいます。
社労士になったばかりのときは、まだまだ経験も浅いため、どうしても給与は低くおさえられてしまいます。
こうなると生活するのは厳しい部分も出てきます。
それが社労士は食べていけないと言われる原因なのです。
社労士が増えている
社労士の試験は毎年おこなわれます。
社労士の試験の合格者はだいたい2,500人くらいです。
毎年そのくらいの人数が社労士になるので、人が足りているのでは?と思う人も中にはいるそうです。
しかし、日本の企業数は2017年のデータでは大企業が約1万1000社、中小企業が約380万9000社。その全てを今の社労士全てで補うと1人で数百社を支えることになります。
決して飽和しているということはありません。
また社労士が関わる労働保険や社会保険は法改正が多い法律です。
この点からも社労士のニーズは決してなくなりません。
社労士の活躍の場をいかに増やしていくかが重要です。
専門分野の幅が狭い。差別化しにくい
社労士の専門分野が狭いことで、差別化できずに稼げないことがあるそうです。
これはあくまで独立しているケースでの話となります。
社労士の業務は主に「給与計算」「労働」「年金」「保険」などです。
おこなう業務はどの社労士も変わらないため、差別化が難しく、価格で勝負ということになるとどうしても安くなってしまうのです。
こうした要因が社労士が食べていけないと言われる原因です。
差別化することは独立する場合に必須なので、考えておく必要があります。
集客ができていない
独立後に集客ができないと、当然食べていくことは難しいです。
それが食べていけない原因と言われています。
社労士が独立開業をしたら、新規開拓をすることが必要です。
しかし、その顧客開拓のときに苦労することがほとんどで、簡単ではありません。
この問題を解決するには自分で営業をするか、どこかに頼む必要があります。
対面や電話営業、人脈を活かした営業、ネットを使った営業など自分にあった方法を見つけていくことが大切です。
どの仕事もお客様がいないと仕事がもらえないので、しっかりと経営努力をしていく必要があります。
これは社労士が食べていけないというよりは、独立したときに直面する問題なので、独立を考えている人はどう営業していくか構想を練っておくべきでしょう。
社労士が食べられない理由について解説をしてきました。
給料が思っているよりも低いことや独立後のことが問題のようです。
なので全く食べていけないというわけではありません。
次にその理由を解説していきます。
社労士は食べていける
社労士が食べていける理由は以下の4つです。
- 需要があるから
- キャリアの選択肢が豊富
- 報酬の相場となる基準がある
- 新規参入の余地がある
順に紹介をしていきます。
需要があるから
近年、社労士の需要は高まっています。
2019年の働き方改革のときは、長時間労働に対する罰則付き法律などが施行され、企業は労務管理の見直しや徹底を迫られることとなりました。
この対応をしたのが社労士です。
また新型コロナによって多くの助成金が制度を拡充したため、社労士はその専門知識を活かして企業と労働者をサポートしました。
こうしたことから社労士の需要はどんどん高まっています。
今後も働き方については改革をすることが多いと予想されるので、ますます必要な存在になっていくはずです。
キャリアの選択肢が豊富
社労士のキャリアは選択肢が豊富です。
しっかりと理解してキャリアアップしていけば、年収を上げることもできます。
社労士のキャリアは社労士事務所や社労士法人、民間企業、コンサル、開業などです。
自分がどう働きたいのか、どれくらい稼ぎたいのかをしっかりと把握することで、自分にあった場所を見つけることができます。
年収も自分次第で上げることも可能です。
社労士=食べていけない・稼げないと決めつけるのはやめましょう。
報酬の相場となる基準がある
社労士には「社会保険労務士報酬基準」と呼ばれるものがありました。これは簡単に言えば、社労士の報酬が定められているものです。
2003年に報酬が自由化されたと同時に無くなりましたが、今でも多くの社労士がこの基準を報酬の目安にしています。
それが以下のような例です。
社労士業務 | 報酬 |
人事・労務相談 | 50,000円 |
就業規則作成 | 200,000円 |
健保・労災給付請求 | 30,000円 |
顧問契約(4名以下) | 20,000円 / 月 |
顧問契約(70〜99名以下) | 100,000円 / 月 |
また、社労士の顧問契約の報酬額も、人員によって変わります。
このように社労士の報酬は基本的なベースがあるので、独立するときに参考になるはずです。
自分がどれくらい稼げば良いのか目安がわかるので、食べていくことが可能になります。
新規参入の余地がある
社会労務士は人を雇い入れる企業ではニーズのある職種なので、参入する余地がたくさんあります。
要は独立しても会社の数だけチャンスがあるということです。
先述したとおり、2017年時点のデータでは、日本国内の企業数は、大企業が約1万1000社、中小企業が約380万9000社となっています。
現在はもっと増えているので、自分の営業次第では多くの収益を得ることが可能です。
独立しても営業次第で食べていくことはできます。
社労士が収入を上げるには?
社労士として収入を上げるには継続してキャリア・経験を積むことが基本になります。
そうすることで役職が付いたり、転職や独立開業へと選択肢の幅が広がるからです。
まずは事務所や企業に勤務して経験を積みましょう。
何年か経験を積んでいけば、ある程度は年収が上がっていきます。
そのときに満足できない場合は転職をするか独立をして、ステップアップをするのが良いでしょう。
どちらもそれまでの実務次第なので、まずは地道に実績を作ることが大切です。
自分がどういうライフスタイルを描きたいのかを考えて、年収をあげていきましょう。
ちなみに事務所や企業などに勤務する場合は、入社してすぐの年収アップは望めないので、注意してください。
社労士の将来性
社労士については、今後も仕事が無くなることはありません。
その理由は以下の通りです。
- 社労士への需要が高まっている
- AIで代替はできない
順に紹介をしていきます。
社労士への需要が高まっている
先述したとおり、今後も社労士への需要は高まっていきます。
実際に社労士の仕事量は年々増えているからです。
そのきっかけが2015年12月から始まった「ストレスチェック」になります。
50人以上の事業所に対して「ストレスチェック」が義務化されました。
ストレスチェックを導入するには、産業医との打ち合わせや社内規定の整備などさまざまな業務をおこなう必要があります。
この業務を実施したのが社労士です。
他にも働き方改革など、政府が主導する法改正や改革に関わることが多いので、今後も需要がなくなることはありません。
AIで代替はできない
社会労務士の仕事がAIに全てを取られることはありません。
AIが社労士業務をおこなえるのは1号、2号についてだけだからです。
- 1号業務
- 労働保険関連の書類の作成・提出代行、社会保険への加入・脱退、給付手続きや助成金の申請など
- 2号業務
- 労働社会保険諸法令に則った帳簿書類の作成、労働者名簿や賃金台帳の作成、就業規則・各種労使協定の作成など
- 3号業務
- 労務管理や社会保険などの相談、指導(コンサルティング)
1号・2号業務の多くは帳簿・書類作成業務です。
こうした比較的単純な作業はAIによって代替えされる可能性があります。
しかし、3号業務である「コンサルタント業務」については、今のところAIで代替えはできません。
コンサルタント業務は予測不可能なことが起こります。
そのため今のところAIでは代替は不可能なのです。
この分野で秀でていれば競合とも差別化できるので、将来的に安心して稼ぐこともできます。
まとめ
社労士の年収についてご紹介しました。
社労士は試験がある程度難関であるにも関わらず、合格してもすぐには給料が上がるというものではありません。
そのため、稼げない印象があるようです。
また、「独立してもクライアントを獲得できずにすぐに廃業した」というケースもあります。
AIでは現状難しい業務も多く、社労士のニーズは今後も一定数生じると考えられるでしょう。
自分がどうなりたいか、どんな仕事をしたいのか。
キャリアのビジョンを描くことが、社労士として年収をアップさせるために大切です。
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