転職お役立ち情報
1.資産税業務を希望する税理士が転職をするうえで知っておきたいこと
資産税とは
資産税は総称で、正確には主に「相続税および贈与税」と「不動産や株式などの譲渡所得に係る所得税」が対象とされています。
資産税の特徴は法人税のように予見できる定期的な扱いではないこと。
多くは一時的に発生する課税取引となっており、具体的には相続の発生、株式や土地の売却などとなります。
資産税業務で富裕層クライアントが税理士に期待することは、富裕層が持つ不動産などの資産を保全し、相続が発生した際にも適切に納税資金を確保できるよう、事前に適切なアドバイスをすることです。
富裕層の多くは先祖代々の地主や企業の創業者が多く、保有資産の税務対策だけでは足りません。
次世代への資産の承継(事業承継)を視野に入れた中長期的な対応が必要になります。
2015年の相続税法改正の影響は大きく、基礎控除が大幅に引き下げられたことで課税される方々が多くなりました。
例えば4人家族と仮定した場合では
課税されない基礎控除の範囲が8,000万円(5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数))まででした。
しかし、改正以降は4,800万円(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))まで引き下がっています。
これにより、会計事務所が対応すべき課税案件が大幅に急増しました。
さらに相続税率も各法定相続人の課税資産が6億円以上の分に対しては最高税率55%に引き上げられていることも注意が必要です(改正前は50%)。
資産税案件の動向
資産税で大手の税理士法人レガシィの相続税取扱件数をみると、2014年まで500件前後だったのが2015年に998件、2016年は1,457件と3倍近く急増しています。
大手の税理士法人山田&パートナーズでは、海外財産を保有する富裕層に向けた国際相続業務も展開しています。
STEP(Society of Trust and Estate Practitioners。世界95ヶ国で19,400人以上のトラスト・資産に関する専門家とともに国際的なネットワークを活用したサービス)にも加盟しています。
年末海外財産残高が5,000万円を超える富裕層に対して、海外財産に関する所得税申告および承継コンサルティングを行うなど、高度に組織された資産税の専門家が富裕層に最適なアドバイスを提供しています。
相続税について
相続税の節税に主眼を置いた対策として次のような方法が一般的です。
・多額の現金預金がある場合は投資用不動産を購入する
・一時払いによる生命保険に加入する
・適宜適切に財産を法定相続人に生前贈与する
これらの取り組みは節税という観点だけではありません。
資産効率や事業承継(オーナー企業の株式)など、残されたご家族が引き続き安心して生活でき、そして企業が存続できるよう取り計らうものであり、慎重な検討が必要です。
贈与税について
相続税法の改正による税率変更は贈与税も同様です。
法改正により、贈与対象の資産を「一般般贈与財産」と「特例贈与財産(20歳以上の方で直系尊属から贈与を受けた財産)」に区分することになりました。
特例贈与財産に対する税率に関して言えば、課税価格が3,000万円までは改正前の税率より5%から10%低くなっりました。
しかし、どちらも一定の課税価格を超えると最高税率が55%と、5%引き上げられています。
贈与税の対応は暦年あるいは必要に応じた事前準備により納税額を試算することが可能です。
この課税区分と税率を考慮した適切なアドバイスが税理士に求められます。
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2.税理士の転職先になる全ての会計事務所が資産税の案件を持っているわけではない
課税資産の大部分を不動産として所有している富裕層は、昔ながらの会計事務所へ記帳代行業務を委託している場合が多いため、その延長線に相続税案件の相談が出てくる場合があります。
この場合は不動産の課税価格のシミュレーションのほか、不動産からもたらされる収入が今後どれくらい納税資金として蓄えることができるか、資金繰りを検討することになります。
企業の創業者は、その法人が非上場企業であっても、相続税法の課税価格の計算上、多額の相続税が発生する場合があります。
創業者が保有している株式は会社法上の議決権があり、法人の経営が不安定にならないよう法定相続人へどのように分配するかも極めて重要です。
創業者が保有している株式以外の現預金やその他の財産を含め全体としてどのように財産を配分していくことが良いか、多角的な視点でアドバイスをすることが求められる場合もあります。
このように、資産税案件を持つ会計事務所はすでに該当する個人クライアントを抱えていることが多いことが特徴です。
また資産税に特化した事務所、多くの資産税案件数を対応してきた経験がある会計事務所では、飛び込みのような形や提携する弁護士からの紹介で新たに対応することもあります。
3.事務所求人で税理士の給与事情、待遇は?【福岡県の場合(未経験含む)】
税理士の給与水準は職務経験、勤続年数などによりかなりの幅がみられます。
ただ目安として税理士の総平均年収はおよそ892万円(厚生労働省:賃金構造基本統計調査(2018年)とされています。
年代別では20代後半で733万円、50代前半では1,135万円です。
担当業務・マネジメントクラスかどうかによっても年収に差があり、大手の会計事務所やBIG4会計事務所では、英語能力が高いことでその年収水準はより高くなる傾向にあります。
福岡県における税理士の平均年収を例に見てみましょう。
九州地方で第1位の455万円です。これは東京都562万円、大阪府の475万円に次いで全国でも有数の年収規模となっています(求人ボックス 給料ナビより)。
未経験者あるいは科目合格者における、複数の転職支援サイトの求人動向を確認すると、概ね年収300万円から400万円台が多くみられました。
主な業務はクライアント訪問巡回、税務申告書の作成、および税務コンサルティングサービスとなります。
規模の大きな会計事務所では事業承継、資産税アドバイスなど専門性の高いサービスに配属される可能性もあります。
または事務所内のマネジャー候補者者となれば年収はこれよりも高くなるでしょう。
一例
・北九州市 税理士法人 年収300万円から400万円
・福岡市 税理士法人 年収390万円から450万円
・福岡市 税理士法人 年収400万円から550万円
・福岡市 税理士法人 年収300万円から600万円
・福岡市 会計事務所 年収400万円から600万円
4.転職して資産税の担当税理士になるためには
資産税の中心は相続税法と所得税法ですので、資産税の担当を目指す場合は、税理士試験で「相続税法」および「所得税法」に合格していることが望まれます。
これらの税法のほかに、法人税法および会社法の知識も必須です。
不動産に関連する関連知識や法務対応のような専門領域は、提携する不動産鑑定士や弁護士と協同で対応していくスキルが求められます。
企業オーナーの富裕層向けには以下のような対応ができる知識が必要になります。
・オーナー株式の相続税評価の計算
・オーナー企業の相続後の事業承継の計画、事業計画の策定
・次世代に向けた経営組織の策定
不動産オーナーの富裕層向けには少なくとも以下のような対応ができる知識が必要になります。
・民法を理解し、弁護士とともに遺言の作成や生前贈与に関わる税務面の助言
・納税資金の確保
・不動産に関する譲渡・買換などについて将来の所得税(不動産収入)・相続税の影響シミュレーション、最適なタックスプランニングのアドバイス
5.税理士に求める転職先の顧客の要望は相続税だけではない
オーナー企業における後継者不足は深刻であり、創業者の家族がその企業を引き継ぐ気持ちがないことも増えています。
その場合、事業売却を視野に入れたM&A・有力な従業員によるMBO(マネジメント・バイアウト)の手法を取り、オーナー株式の換金化も含めた広範囲な視点でのアドバイスを求められるケースがあります。
会計事務所の多くは、中小企業及び中堅規模の経営者とは、毎月の会計報告や年に複数回ある税務サービスにおいて何度も接点が生じます。
そのため、信用のおけるパートナーとして認識されていることも多く、相続を視野に入れた事業承継の相談を最初に受けるのは会計事務所というケースが多いのです。
個人の相続に伴う手続きは非常に煩雑です。
特に大きな課題になりやすいのは、誰がどの相続財産を引き継ぐかでしょう、
例えば、相続財産が不動産だけで法定相続人が複数いる場合。
不動産を売却処分して換金化すべきか、法定相続人のどなたかが不動産の所有と管理を担当するのかは非常に難しい内容です。
株式など複数の相続財産がある場合には、後継者として有望な法定相続人に会社の議決権の過半数をもってもらうような仕組みをアドバイスすることもあります。
相続に関する事前・事後の手続きを円滑にし、相続税の負担軽減と将来に向けたアドバイザリー業務を行う税理士が求められています。
税理士は富裕層から資産税だけでなく別案件を依頼されることがある
資産税は、数ある税務のなかでも複雑かつ高度な業務のひとつです。
実は、これを専門に手掛けている税理士は多くありません。
一方で、課税資産を数多く保有する富裕層は相当数存在します。
これからの未来を見据えた資産税の業務に精通した税理士がいれば、富裕層にとって安心できる身近な存在になるでしょう。
富裕層は、その財産を守り家族に承継していくことを最も重要としています。
税理士に期待されるのは、税金の節約だけではなく、財産の価値を維持・向上できる仕組みを提案することです。
仮に現在の富裕層クライアントがオーナー企業の経営者であり、課税財産として株式と現金だけを保有しているとします。
居住用不動産や投資用不動産の購入により課税価格を抑えることで相続税の抑制につながります。
これら不動産からの家賃収入が不動産所得を形成することで、記帳代行業務や所得税納税の申告書作成の案件を、さらに依頼される場可能性もあるのです。
節税を目的とした不動産投資をアドバイスにおいても、専門家である不動産鑑定士や弁護士、建築士などの意見を交えて、相続人の貴重な財産をしっかりと見守っていく。
依頼人であるクライアントの利益を最大化する税理士の役目として非常に大切になります。
6.まとめ
資産税業務はある種特殊な業務であり、誰もが必要とするものではありません。
その代わりクライアントとの密接な信頼関係を築くことができ、自らのスキルアップにも望めます。
転職するときは、資産税業務をおこなっているかどうか、必ず確認することをおすすめします。
また、困ったときには転職エージェントを使ってみてはいかがでしょうか。条件に合う会社を見つけることにつながるでしょう。
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