転職お役立ち情報
基本的に簿記の資格は実務の処理能力を証明するものではなく、会計理論や管理会計・原価計算などの目的に応じた財務諸表を作成することができる能力を有する、という証明書の位置づけにあり、税理士や公認会計士のような独占業務を持っていません。
転職活動においては実務経験および簿記の資格を保有していることが最もバランスが取れた状況にあるとされていますので、簿記3級の資格を持つ方はさらに上位の簿記2級を目指し、簿記2級の資格を持つ方は、時間があればより上位の資格を狙う前向きな姿勢を人事担当者に見せることができます。
1.簿記有資格者の転職事情は?
簿記は経理職で有用な資格のひとつで、日本商工会議所が実施している「簿記検定(日商簿記)」は、1954年からスタートし、2020年2月の試験までで2,700万人以上の受験者数となる規模を誇る、最も人気の高い資格です。
日商簿記の目的は、簿記の普及向上を通じて、企業経営の健全化と経済社会の発展に寄与することにあります。
簿記の有資格者は実務に直結する経理の仕組みを理解できているため、受験者にとってすぐに実務対応が可能になること、企業側にとっても有資格であれば一定の経理能力があることを期待できるなどのメリットがあり、転職市場において簿記資格を保有していることについて一定の評価があります。
ただし、簿記の資格を持っているだけでは採用で有利に活かすことができない場面もあります。
転職活動では、簿記資格を取った背景、資格を取ってどのようなキャリアプランを考えているのかなどをアピールすることが大切です。
簿記検定の級数別の転職事情 2級
日商簿記2級は、「経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格のひとつ。
高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。」とされています。
この日商簿記2級の内容から、資格保有者は大部分の(単体)企業の財務諸表を作成することができ、その数字が持つ意味、そこから導き出される課題を抽出できる能力があることから、一般的な経理職での採用候補者として検討されるでしょう。
経理職以外にも財務部門のスタッフとして採用される可能性があります。
簿記検定の級数別の転職事情 1級
日商簿記1級は、「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。合格すると税理士試験の受験資格が得られる」とされています。
一般企業では日商簿記2級を持っていれば経理職としては充分とされており、1級を持っている場合にはその先にある税理士資格や公認会計士資格を取得することを前提としていると理解される場合があります。
複数の子会社がある大企業では連結決算が主たる財務諸表となるため、1級取得者は2級取得者よりも優遇される可能性があります。
経理職の一般的な転職事情
経理職にかかわらず、一般的な転職市場では、20代後半から30代後半までが最も市場価値が高まる年齢です。
その中で経理職では特に「実務経験」とそれを裏付ける「日商簿記の資格」があれば選考に有利になります。
簿記1級・2級資格者の募集
2.簿記有資格者は転職に有利か?
日商簿記資格を取得することで、企業が求める応募条件を達成し転職可能性が高まること、募集企業の選択肢が広がることがあります。
転職先企業の選択肢が広がる可能性のほか、企業によっては「資格手当」を支給していることもメリットとして考えられます。
税理士事務所や会計事務所では、会計業務の担当として、簿記の資格保有者を優先して採用することが多く、募集条件に「簿記2級以上」などが目立ちます。
税理士事務所などに転職を考えている方は簿記の資格を取得することが必要です。
簿記1級保有者の場合
多くの企業では「日商簿記1級」を条件とした求人を出していません。
それでも同じ経験・年齢などの比較であれば簿記2級取得者よりは選考に有利となる可能性があります。
簿記2級保有者の場合
一般企業の経理職から会計事務所まで幅広い求人が存在します。
企業の経理部門では日商簿記2級が最も要求される水準です。
簿記3級保有者の場合
一般企業の多くは簿記2級以上を求めているため、簿記3級を求める求人数は簿記2級ほど多くはありませんが、一定数の求人を検索することができます。
少なくとも簿記の資格を持たない方よりは選考に有利な立場となるでしょう。
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3.転職のために簿記資格を取ろう
バックオフィス業務のひとつである経理の業務では「実務経験」が最も重視されています。
求人企業では「実務経験3年以上」かつ「日商簿記2級以上」を条件としているケースが多くなっています。
簿記の資格に加えて、経理の実務経験を持つ方であれば様々な業種・規模の企業に転職できる可能性が高くなります。
簿記の資格を土台に、税理士や公認会計士などの難易度の高い資格を目指し、試験に合格することができれば、部門の責任者などの職位に就任できるチャンスがあります。
経理業務の内容をふまえて管理会計にキャリアを進めることも可能です。
中小規模から中堅規模までの企業であれば経営戦略に関与することもあり、経理職から経営企画にキャリアを広げることができる可能性があります。
4.簿記資格の取得までの道のり
日商簿記1級
日商簿記1級は最も難易度が高いだけではなく、その合格率からみて他の資格より合格の難易度が高い傾向にあります。
その理由に、4つのパート(極めて高度な商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算)から構成されているため勉強範囲が広く、かつ相当深堀をした理解が必要なこと、4つのパートのいずれにおいても40%以上得点を稼がなければ合格できないため、まんべんなく強をしなければならないことにあります。
2017年から2019年までの合格率をみると、5.9%から13.4%となっておりおおむね10%前後という狭き門となっています。
日商簿記2級
日商簿記2級は簿記検定で最も知名度が高いことから、経理職へ転職するにあたり取得しておくべき資格として最も有意義とされています。
2018年から2020年までの合格率をみると、12.7%から28.6%となっており近年は25%以上で推移していますので、試験勉強をあきらめずに続けていれば、いつかは合格することができるでしょう。
日商簿記3級
日本商工会議所によれば、日商簿記3級は、「業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。
基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル」とされています。
このことから、転職の際に経理関連の資格を保有していることを証明しているものの、合格率の高さ、受験者数の多さ(毎回の試験で10万人前後)から、経理職にある方であればこの水準の実務知識を持っていることが要求されていると見るべきでしょう。
経理職として他の企業へ転職する場合、簿記2級は欲しいところです。
2018年から2020年までの合格率をみると、43.8%から56.1%となっておりおおむね50%前後で推移しているので、できる限り早い時期に合格したい資格です。
5.まとめ
経理職では簿記の資格を持っていることで一定の実務能力をできる証明として認識されています。
未経験者であってもポテンシャルを期待して採用選考が進むでしょう。
日商簿記検定は、一般的な企業であれば多くの方が認知している有名な資格のひとつです。
実務で評価されるレベルは簿記2級以上ですが、簿記1級に合格できる知識と能力があればさらに上位の資格として税理士や公認会計士が視野に入りますので転職だけではなく将来のキャリアアップにも役立ちます。
経理職の転職は、これまでどのような実務経験を積んできたかが重要な評価ポイントになります。
仮に簿記の資格を保有していない方であっても、連結決算の経験や、上場企業における決算短信の作成などの経験があれば転職市場では高く評価されます。
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