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公認会計士になる方法と聞くと「試験に合格すること」とイメージする人が多いのではないでしょうか。
確かに公認会計士になるためには、まずは試験に合格する必要があります。
しかし、試験に合格すればすぐに公認会計士になれるわけではありません。
また、公認会計士試験は非常に難易度が高いです。そのため、まずは公認会計士試験そのものに対する理解を深める必要もあります。
今回は公認会計士になるまでの流れや、公認会計士試験について詳しく解説します。
1.公認会計士になるまでの流れは?
公認会計士になるまでの大まかな流れは以下の通りです。
- 公認会計士試験を受験する
- 就職後、実務補習を受け、修了考査に合格する
- 公認会計士登録をする
それぞれの工程について詳しく解説します。
①公認会計士試験を受験する
公認会計士試験は「短答式試験」と「論文式試験」の2つから構成されています。
1次試験である短答式試験に合格した後、2次試験である論文式試験の受験ができる仕組みです。
短答式試験と論文式試験、それぞれの概要を紹介します。
短答式試験
開催時期 |
年2回実施 12月と翌年5月 |
試験形式 |
マークシート |
試験科目 |
計4科目 全て必須科目
|
合格基準 |
総得点の70% ※1科目でも40%未満の場合は不合格になるケースがある |
論文式試験
開催時期 |
年1回実施 8月中旬 |
試験形式 |
筆記試験 |
試験科目 |
計5科目 必須4科目、選択1科目 <必須科目>
<選択科目>
|
合格基準 |
得点比率52.0%(偏差値による) ※1科目でも40%未満の場合は不合格になるケースがある |
②就職後、実務補習を受け、修了考査に合格する
公認会計士の登録をするためには、公認会計士試験の合格に加え以下3つの要件を満たす必要があります。
- 3年以上の実務経験
- 実務補習を受け必要な単位を取得する
- 修了考査に合格する
3年以上の実務経験を積むため、公認会計士試験に合格した後すぐに就職するのが一般的です。
実務経験には以下の2種類があります。
- 業務補助
監査証明業務に関する補助です。1年で2以上の監査証明業務を対象として行う必要があります。 - 実務従事
財務に関する監査、分析、その他実務への従事が該当します。
実務経験の要件を満たすため、監査法人に就職するケースが多いです。
実務経験と並行して実務補習も受ける必要があります。
実務補習は会計教育研修機構が実施する講習です。頻度は週に1~2回程度で、必要な単位を取得することで修了考査を受けられるようになります。
修了考査の実施時期は毎年12月中旬です。
修了考査は総点数の60%を基準として、修了考査運営委員会が相当と認めた得点比率が合格基準となります。
試験科目は以下の5科目で、基準の40%に満たない科目が1科目でもある場合は不合格になるケースがあります。
- 会計に関する理論及び実務
- 監査に関する理論及び実務
- 税に関する理論及び実務
- 経営に関する理論及び実務(コンピュータに関する理論を含む。)
- 公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理
③公認会計士登録をする
実務経験・実務補習・修了考査合格の3つの要件を満たすことで、公認会計士の登録が可能です。
修了考査に合格すれば自動で公認会計士になるわけではありません。各自で登録手続きを行う必要があります。
公認会計士の登録申請に必要な書類は以下の通りです。
- 公認会計士開業登録申請書
- 登録免許税領収証書(6万円)
※申請書に貼付して提出 - 履歴書
- 写真
- 公認会計士試験合格証書の写し
- 実務補習修了証書の写し
- 業務補助等の報告書受理番号通知書の写し
- 身元証明書(原本)
※協会受付日前3ヶ月以内に発行されたもの - 住民票(原本)
※協会受付日前3ヶ月以内に発行されたもの - 宣誓書
- 勤務証明書
※協会受付日前3ヶ月以内に発行されたもの - 登記簿
※会社等の役員等に就任している場合 - 会計士補登録の抹消に関する届出書
※申請者が会計士補の場合 - 準会員退会届出書
※申請者が会計士補以外の準会員である場合 - 入会届出書
- 改行登録等に係る本人の連絡先
- 入会金等振込控え
- 写真付き本人確認書類
※準会員ではない新入会者および再登録者のみ。運転免許証やパスポートのコピー等
また、公認会計士登録には以下の費用がかかります。
登録免許税 |
6万円 |
入会金 |
準会員:3万円 準会員以外:4万円 |
施設負担金 |
5万円 |
年会費(普通会費) |
月額6,000円 年額72,000円 |
年会費(地域会費) |
年額42,000円~54,000円 所属地域会により異なる |
登録申請の後、登録審査会で審査が行われます。登録審査会で登録が認められると無事に登録完了です。
登録審査会から1週間ほどで公認会計士開業登録通知書類が郵送されます。
2.公認会計士試験内容を解説
公認会計士の試験は、金融庁が所管する公認会計士・監査審査会により実施されています。
2022年度ではおよそ1,450人が試験に合格しました。
経験のある社会人を含め多様な人材が受験できるよう、2006年から公認会計士の試験制度は大幅に簡素化されています。
また、公認会計士試験には一定の受験資格がなく、誰でも受験することが可能です。
短答式試験
試験の目的は公認会計士として業務を遂行するにあたり、基本的な専門知識を理解しているかどうかを確認する試験です。
試験はマークシート方式による択一式です。
受験科目は財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目。
試験ではこれらを一度に受験します。
短答式試験の合格のためには、総点数の70%が基準点とされています。ただし1科目でも40%に満たない場合は不合格になることがあります。
短答式試験は年に2回実施されていますので、不合格時でも同じ年に次の受験に向けて弱点を補強してから再挑戦できます。
12月に第1回試験が、5月に第Ⅱ回試験が行われており、第1回試験の方が第2回よりも合格率が高い傾向にあります。
- 財務会計論
計算の「簿記」と理論の「財務諸表論」で構成されています。
合格するには計算の仕組みの理解と理論の暗記が必要です。 - 管理会計論
計算および論述が出題されます。
原価計算と予算実績差異分析などを含む管理会計の論点をしっかりと抑えることがポイントです。 - 監査論
公認会計士の法定業務である監査に関する科目です。
監査とは何かをイメージして、監査制度の目的、必要な手続きなどを理解できるようにすることがポイントです。 - 企業法
会社法・金融証券取引法・商法に関する科目です。
条文の趣旨および目的をしっかりと理解することが大切です。
論文式試験
公認会計士として、必要な専門知識を理解ているか、また、その応用能力を判断するための試験です。
受験科目は、必須科目4つと任意に選択した科目1つの合計5科目を受験します。
論文式試験は年に1度きりの試験で、毎年8月下旬に実施されています。
総得点の52%が合格基準点とされていますが、1科目でも40%に満たないときは、不合格になる場合があります。
- 必須科目は、財務会計論(簿記および財務諸表論)、管理会計論、監査論、企業法、および租税法です。
- 選択科目は、経営学、経済学、民法、統計学から1つを選択します。
選択科目のポイントは次のとおりです。
- 経営学:
受験者の大部分が選択している科目です。
全体的な難易度が低いとされていますが、数学的な知識が必要になることもあり、ある程度の計算能力が求められます。 - 経済学:
出題範囲が広く、中高程度の数学の知識が必要になります。
経済学を得意とする人が選択する科目といえます。 - 民法:
民法は法体系上その条文数が多いため、学習時間にゆとりのある方、または法律科目に強い方に好まれる科目です。
判例等も条文とともに抑えることがポイントです。 - 統計学:
統計学の勉強範囲は他の科目に比べて少ない一方、その計算内容が高度になっています。
計算が得意な方、統計学が好きな方が選ぶ科目になります。
公認会計士試験の免除制度
社会人を含めた多様なバックグラウンドを持つ人が受験しやすい制度となるよう、試験の免除あるいは一部免除の制度が用意されています。
大学教授、司法試験合格者、一定の専門資格者(税理士等)などが対象です。
- 短答式試験の全てが免除されるケース
主に大学等で商学や法律学に属する教授・博士の学位を持つ一定の方、司法試験の合格者または旧司法試験の2次試験の合格者などが該当します。 - 短答式試験の一部が免除されるケース
税理士の有資格者等であれば短答式では「財務会計論」が、論文式では「租税法」が免除されます。
会計専門職大学院において一定の単位を取得した方は、短答式の「財務会計論」、「管理会計論」、監査論」が免除されます。
公認会計士試験の合格率
公認会計士試験は日本で最難関の試験のひとつであり、医師、弁護士に並ぶ国家資格として有名です。
気になるのは公認会計士試験の合格率でしょう。
合格率が毎年10%前後です。
最難関とされている理由の1つと考えられます。
この合格率10%前後は、公認会計士試験の合格者数÷願書の提出者総数によるものです。
願書を提出しても受験をしていない方が多数存在しているため、実質的な合格率は10%前後ではなく、短答式で20%前後と推測している教育機関もあります(TAC株式会社等)。
論文式の受験者数を母数にすれば、その合格率は35%台にまで引きあがります。
ただし公認会計士試験は短答式試験・論文式試験いずれも基準点を超えれば合格する制度ではありません。
実際は成績の上位者から合格していく競争型になっています。
公認会計士試験はあくまでも、短答式試験に合格後(実質20%前後)、論文式試験(合格率35%前後)に挑むものです。
それぞれの試験の合格率を理解しておき、余計なプレッシャーを感じずに試験に挑みましょう。
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3.公認会計士試験の勉強時間の目安は?
公認会計士の試験はどれだけ試験勉強に向けて勉強時間を確保することができるかが短答式のポイントです。
それぞれの試験科目をきちんと理解の上、自分の言葉で説明できることが論文式に求められます。
試験合格までに必要な勉強時間は専門学校などの各教育機関でも一様ではありませんが、最低ラインの目安として、およそ3,000時間と言われます。
実際の合格者によれば短答式試験に向けた勉強時間を1年間で1,500時間とした方もいます。
1ヶ月あたりおよそ130時間、毎日平均でおよそ4時間を1年間継続するペースになります。
ただし短答式試験の合格した年に論文式試験を受験する場合は、すべての科目を集中して勉強した方が良いでしょう。
そのため、1日当たり8時間近い勉強時間が必要になる場合もあります。
受験を開始してから試験に合格するまでの期間は、学生のように受験勉強に専念できる場合で1年間から2年間、社会人では2年間から3年間が一般的です。
公認会計士試験の科目別でみると、最も勉強時間を費やすのは、財務会計論といわれています。
これは本試験の問題で財務会計論の配点が他の科目よりも多いことから、積極的に得点するために集中する傾向があるためです。
一方で最も勉強時間が少ないのは論文式の「経営学」 とされており、およそ200時間が目安となっています。
学生であれば集中して勉強することが可能かもしれませんが、社会人の場合は残業や予期せぬ付き合いなどで毎日勉強することは困難です。
土日を含めて1週間当たり30時間以上勉強するペースを続けることになります。
4.公認会計士試験に合格した後は?
公認会計士の試験合格後は、公認会計士になるために、3年間の実務経験と3年を年限とする実務補修の単位を取得しなければなりません。
実務経験は、主に監査法人において業務に従事することで得ることができますが、一般事業会社で一定の業務を対応している方でも認められています。
実務補習は必ず受けなければならない研修制度で3年が年限です。
単位制となっており、必要な単位数を取得しなければなりません。
実務経験および実務補習を終えたら、修了考査に挑みます。
2022年の合格率はおよそ69%ですのでしっかりと勉強すれば合格できます。
試験合格後の就職の流れ
実施経験を積める職場に入社するため、試験合格がわかり次第すぐに就職活動が必要です。
論文式試験の終了後から合格発表までの期間に、受験者向けの就職説明会や就職イベントが多く行われます。
論文式試験の受験後はこれらのイベントに参加して情報収集をし、就職活動に向けた準備を進めます。
論文式試験の合格発表が行われるのは毎年11月中旬頃です。
その後、合格者は法人説明会への参加や面接を経て、多くの場合は12月上旬頃に内定が決まります。
公認会計士試験の合格から就職が決まるまでの期間は2週間程度と、一般的な就職活動に比べて非常に短いです。
試験合格後の就職先とは?
試験合格後の就職先として最も多いのが監査法人です。
就職先として多く選ばれる理由として以下の2点が挙げられます。
- 公認会計士の登録に必要な実務経験を確実に積める
- 求人需要が高い
特に4大監査法人(Big4)と呼ばれる規模の大きい監査法人に就職するケースが多いです。
一口に監査法人といってもそれぞれ異なる特徴があります。
効果的な就活対策を行うため、そして自分に合う監査法人を選ぶためにも、各監査法人について十分な情報収集が必要です。
5.まとめ
公認会計士試験は短答式試験と論文式試験の2つから構成されており、どちらも難易度が非常に高いです。
必要な勉強時間は最低でも3,000時間といわれており、年単位で勉強を継続する必要があります。
公認会計士試験に合格する可能性を上げるためには、単に勉強量をこなすのではなく、まずは試験そのものについて理解を深めることが大切です。
また、試験に合格すればすぐに公認会計士になれるわけではありません。
公認会計士試験に合格した後は、実務経験・実務補習・修了考査という3つの要件を満たす必要があります。
公認会計士試験の概要や資格取得までの流れを把握した上で、計画的に勉強を進めましょう。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
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