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公認会計士と税理士は似たイメージを持たれやすいです。
中小企業のオーナーなどは公認会計士と税理士を区別せず、経理の専門家として「会計士」と呼んでいるケースも多くみられます。
しかし、公認会計士と税理士は全く異なる資格です。
業務内容に限らず、試験の受験資格・難易度・受験科目等の様々な面で違いがあります。
公認会計士と税理士の区別をしっかりつけるため、それぞれの特徴について知ることが大切です。
今回は公認会計士と税理士の違いについて、業務内容や試験という面から詳しく解説します。
1.公認会計士と税理士の業務内容の違いとは
公認会計士と税理士の大きな違いは独占業務(専門領域)です。
独占業務とは当該資格を取得する者のみが実施できる業務で、各法律で定められています。
公認会計士は公認会計士の、税理士は税理士の独占業務が主な業務内容となります。
公認会計士の独占業務
会計士は、企業から学校法人、公益法人など幅広い対象について、独立した立場から監査意見を表明し、財務情報の信頼性を担保します。
監査業務には、法定監査と法定監査以外の監査があります(日本公認会計士協会より)。
(1)金融商品取引法に基づく監査
株式上場企業など、特定の有価証券発行者等が提出する有価証券報告書等に含まれる財務計算に関する書類は公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならないとされています。
(2)会社法に基づく監査
大会社及び委員会設置会社は、会計監査人を置くことが義務付けられています(会社法第327条、同第328条)。
また、すべての株式会社は任意で、会計監査人を置く旨を定款に定めることで、会計監査人を置くことができます。会計監査人の資格は、公認会計士又は監査法人のみです。
(3)関連法令に基づく法定監査
保険相互会社、特定目的会社、投資法人、投資事業有限責任組合、信用金庫、信用組合、労働金庫、医療法人、独立行政法人など法で定められた特別な事業が適切な経営をしているかどうかの監査業務も含まれます。
税理士の独占業務
税理士は、税理士法第2条において「他人の求めに応じ、租税に関して、次に掲げる事務を行うことを業とする」旨が規定されています。
近年は会計ソフトと確定申告書作成ソフトが連携して、誰でも申告書を作成することができるようになりましたが、税理士の資格を持たないで申告書を代わりに作成することは、税理士法違反になります。
(1)税務代理(法第2条第1項第1号)
税務署等に対する申告等につき、またはその申告等もしくは税務署等の調査もしくは処分に関し、税務署等に対してする主張もしくは陳述につき、代理し、または代行することです。
クライアントの求めに応じてクライアントに代わって税務署等と折衝や交渉をすることができる権限です。
(2)税務書類の作成(法第2条第1項第2号)
税務署等に対する申告等に係る申告書等を作成することをいいます。
クライアントに代わって法人税申告書や所得税申告書を作成できる権限です。
(3)税務相談(法第2条第1項3号)
税務署等に対する申告等、法第2条第1項第1号に規定する主張もしくは陳述または申告書等の作成に関し、租税の課税標準等に関する事項について相談に応ずることをいいます。
クライアントからの税務相談を引き受けることができる権限です。
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2.公認会計士と税理士の試験概要
公認会計士と税理士は専門分野が異なり、独占業務が全く別であると紹介しました。
そして、両者の違いは業務内容だけではありません。
公認会計士試験と税理士試験も、受験資格や受験科目、資格取得までの流れ等様々な違いがあります。
会計と税務の両方に興味があり、公認会計士と税理士どちらを目指すか悩んでいる人も多いでしょう。
そのような場合は試験の違いについて理解を深め、自身にとって受験しやすい・対策しやすい方を選ぶのも1つの手段です。
公認会計士試験と税理士試験の違いについて詳しく解説します。
①受験資格の違い
公認会計士試験と税理士試験の違いの1つが受験資格です。
公認会計士試験には受験資格が設けられていません。
学歴や職歴を問わず、誰でも試験を受けられます。
一方、税理士試験には受験資格が定められています。
厳密にいうと、税法に属する科目を受けるには受験資格を満たす必要があります。会計学に属する科目の方には受験資格の制限がありません。
受験資格は学識・資格・職歴の3つに大別され、いずれか1つの要件を満たせば受験資格があるとされます。
主な受験資格は以下の通りです。
- 学識によるもの
- 大学・短大・高等専門学校の卒業生で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上で、社会科学に属する科目1科目を含む62単位以上を取得した者
- 資格によるもの
- 日商簿記検定一級合格者
- 全経簿記試験上級合格者
- 職歴によるもの
- 会計事務に2年以上従事した者
- 税理士・弁護士・公認会計士等の補助事務に2年以上従事した者
なお、受験申込の際に受験資格を満たすことを証明する書類の提出が必要です。
受験資格が定められているという点から、受験すること自体の難易度は税理士の方が高いといえるでしょう。
②受験科目の違い
公認会計士試験と税理士試験では受験科目も異なります。
まずは公認会計士試験です。
公認会計士試験は短答式試験と論文式試験の2つから構成されています。それぞれの受験科目は以下の通りです。
- 短答式試験:必須4科目
- 財務会計論
- 管理会計論
- 企業法
- 監査論
- 論文式試験:必須4科目、選択1科目
<必須科目> - 会計学(財務会計論・管理会計論)
- 監査論
- 企業法
- 租税法
<選択科目>
- 経営学
- 経済学
- 民法
- 統計学
短答式試験は毎年12月と翌年5月に、論文式試験は毎年8月に行われます。
上記の科目すべてを1度の試験で受ける必要があります。
また、試験合格の有効期間に定めがあるため短答式試験と論文式試験の合格に期間をあけることができません。
税理士試験は全部で11科目です。
資格を取得するには必修2科目、選択必修1科目、選択2科目の計5科目に合格する必要があります。
- 必修科目
- 簿記論
- 財務諸表論
- 選択必修科目 ※2科目取得も可能です。
- 法人税法
- 所得税法
- 選択科目
- 相続税法
- 消費税法又は酒税法 ※取得できるのは一方のみ
- 住民税又は事業税 ※取得できるのは一方のみ
- 国税徴収法
- 固定資産税
試験は毎年8月に行われます。
税理士試験は科目合格制を採用しており、一度に5科目すべてを受験する必要はありません。1科目ずつの受験も認められています。
また、科目合格は生涯有効のため、何年かに分けて5科目合格を達成することも可能です。
受験科目の観点から考えると、一度に受ける科目数が多く有効期限の定めがある公認会計士試験の方が難易度が高いといえます。
③資格取得まで段階の違い
公認会計士と税理士では、試験に合格した後に資格を取得するまでの流れも大きく異なります。
まずは公認会計士の資格取得に必要な工程です。
公認会計士の資格を取得するには以下3つの要件を満たす必要があります。
- 3年以上の実務経験を有する
監査証明業務の補助とその他実務への従事の両方が必要です。
- 実務補習を受ける
必要な単位を取得することで、修了考査を受ける資格を有します - 修了考査に合格する
合格率は50〜70%程度です。公認会計士試験ほどの難易度ではないものの、合格のためにはしっかり勉強する必要があります。
続いて税理士の資格取得についてです。
税理士には公認会計士でいう実務補習や修了考査にあたる工程はありません。
ただし、実務経験の要件は定められており、会計に関する事務等に従事した期間が2年以上必要です。
資格取得までの段階でいうと、試験合格以外に満たすべき要件が多いという点から、公認会計士の方が難易度が高いといえます。
3.公認会計士試験と税理士試験の難易度の違いは?
公認会計士試験と税理士試験について、難易度の低い方を受験しようと考える人もいるでしょう。
公認会計士試験と税理士試験の主な違いをまとめると以下のようになります。
公認会計士試験 |
税理士試験 |
|
合格率 |
短答式:7~15%程度 論文式:35~38%程度 |
必修2科目:20%前後 税法科目:15%前後 |
必要な勉強時間 |
2,000~4,000時間 |
3,000~5,000時間 ※5科目すべての合格までにかかる時間 |
受験資格 |
特になし |
要件あり |
受験科目 |
短答式:計4科目 論文式:計5科目 |
必修:2科目 選択必修:1科目 その他選択:2科目 |
資格取得の要件 |
|
実務経験 |
こちらの表からわかるように、どちらの方が難易度が高いかは比べる指標によって異なるため一概にはいえません。
難易度の高さではなく、興味のある分野ややりたい仕事、自身にとっての勉強のしやすさ等で判断する必要があります。
4.公認会計士と税理士はどちらがいいか
会計士も税理士もどちらも原則として試験に合格し、実務経験を経て初めてライセンスを受けることができます。そのため、比較する上で最初に考えられることはどちらの資格が取りやすいのかということになるでしょう。
また現在の職場が上場企業なのか、 それとも中小企業なのか、あるいは資格を取得して転職したいのかなど将来のキャリアプランによっても見方が変わります。
キャリアプランを中心に考える場合
企業に勤める場合、上場企業やIPOを目指す企業では、 監査対応や財務諸表の準備などの経験を生かすことができる会計士が選択肢になるでしょう。
中堅規模や中小規模の企業では、 日本の会計基準に基づいて財務諸表を作成することが多く、通常は法定監査を受ける必要もないため税理士が選択肢に入るでしょう。
独立して自分自身の会計事務所を開く場合、 主な収入源はクライアントに対する会計サービス(主に記帳代行)、税務申告サービスになるため、税理士が選択肢に入りますが、公認会計士も税理士登録することで税理士と同じ業務をできます。
年収から検討する場合
一般企業ではマネジャーや経営層に参画するかどうか、大企業かどうか、年収水準が高い業種(金融)かどうか、などで年収が変わってきます。
昇進昇格の可能性は公認会計士の方が税理士よりも高いケースが見られますが、基本的には本人の能力と努力によるところが大きいです。
会計士が監査法人に勤めている場合、シニアマネジャーなど高い職位になれば年収1千万以上の待遇となっています。
税理士法人でも高い職位になることで同様の年収を期待することができます。
単純比較は難しいものの、監査法人の方が年収水準が高いといえるでしょう。
試験の難しさから検討する場合
試験の合格率でみると公認会計士は10.7%、税理士は15.3%のため、公認会計士試験の方が厳しい(難しい)といえます。
なお両者の試験制度は異なっており、公認会計士の試験は複数の科目を幅広く理解して、全ての科目が足きりラインを超えていることが特徴的であるのに対して、税理士の試験は1つの科目を深く掘り下げて、計算問題と論述がともに足きりラインを超えている点が特徴的です。
また、受験可能期間も異なります。
公認会計士試験は2段階制になっており、まず短答式で合格後、2年以内に論文式に合格する必要があります。2年を超えると短答式の合格実績が消失するためです。
一方税理士試験は科目合格制のため、一度合格した科目には有効期限がありません。
いつかは試験に合格することができるといわれています。
また公認会計士は試験に合格後、基本的に監査法人に勤めて経験を積む必要があります。
監査法人の求人対象は20代から30代前半までが中心となっているのに対して、税理士の求人は40代、50代でも見つけることができます。
公認会計士試験の合格率
公認会計士試験の合格率は、 令和元年の公認会計士試験結果にて10.7%でした。合格者の平均年齢は 25.2 歳と若く、「学生」及び「専修学校・各種学校受講生」が68.9%を占めました。
税理士試験の合格率
税理士の合格率は、 令和元年の税理士試験結果にて15.3%でした。合格者数は41才以上が最も多い24.1%、31才以上で58.7%を占めています。科目合格制となっており、働きながらでも合格を目指すことができること、税務署などで長く勤めることで税理士となれることなどが想定されます。
5.まとめ
公認会計士と税理士、どちらの資格取得を目指すか悩んでいる人もいるでしょう。
専門領域に関連性があるため似たイメージを持たれやすいですが、業務内容から試験まで様々な面で違いがあります。
また、どちらの方が資格取得の難易度が高いかも一概にはいえません。
公認会計士と税理士のうちどちらを目指すかを決めるには、まずそれぞれの資格について十分に理解を深めることが大切です。
その上で業務内容や勉強のしやすさ等の面から両者を比較し、自分に合った方を選びましょう。
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