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日商簿記1級の合格率は日商簿記3級・2級と比べると著しく低い数値となります。
この記事では日商簿記1級の合格率を突破するため、試験の概要や合格に向けて押さえたいポイントなどを解説します。
そもそも日商簿記1級とは?
日商簿記1級の合格率について具体的な内容に入る前に、まずは日商簿記1級の基本情報を紹介します。
日商簿記1級の概要
日商簿記1級とは商工会議所が主催する日商簿記検定のうち、もっとも上位の級です。
日商簿記1級のレベルについて、以下のように公表されています。
- 極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算
- 企業会計に関する法規を踏まえた上で経営管理や経営分析を行うために求められるレベル
- 公認会計士・税理士などの国家資格への登竜門となる
合格基準は以下のとおりです。
- 合格基準……100点満点中70点以上
- 足切り……4科目のうち1科目でも10点未満の科目があれば、合計が70点以上でも不合格
日商簿記1級の試験範囲
日商簿記1級は2級までに加え、より難易度の高い範囲がプラスされます。
簿記検定試験出題区分内で公表されている内容を一部抜粋します。
商業簿記・会計学
- 有価証券:売買目的有価証券の総記法による処理
- 不渡手形の貸借対照表表示法
- 商品の売買:総記法、仕入割引・売上割引、デリバティブ取引、その他の金融商品取引
- 税金:会計上の変更および誤謬の訂正
- 会計基準および企業会計に関する法令等
工業簿記・原価計算
- 原価:支出原価と機会原価
- 材料費計算:棚卸減耗費の引当金処理
- 原価予測の方法:スキャッター・チャート法、回帰分析法
- 経費計算:複合費の計算
- 工場会計の独立
いずれも、実務においては大企業をはじめ高度な会計処理が必要な場面で登場する内容です。
1級は会計・経営のスペシャリストに求められるレベルであるため、かなり難易度の高い分野からも出題されます。
その上、2級までの範囲は理解している前提となるため、非常に広い範囲から出題されるといえるでしょう。
日商簿記1級の試験形式やスケジュール
日商簿記1級は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目によって構成されています。
試験時間は、商業簿記・会計学で90分、工業簿記・原価計算で90分の計180分です。
前半に商業簿記・会計学、後半に工業簿記・原価計算の試験が実施されます。
試験は毎年2回、6月と11月に開催されます。
受験申込の受付期間および合格発表などのスケジュールは会場となる商工会議所によって異なるため、各自で確認が必要です。
日商簿記1級合格までに必要な勉強時間
日商簿記1級合格までに必要な勉強時間の目安は、600時間といわれています。
あくまで最低限必要な勉強時間であり、より多くの勉強時間をかける受験者も多く見られます。
また、一概にはいえませんが独学で勉強する人の方が、専門学校に通う人よりも勉強時間が長くなる傾向です。
通学の方が効率的に勉強できる・まとまった勉強時間を確保できるなどの理由が挙げられます。
なお勉強を始めてから合格までに必要な期間は、半年から1年程度が目安です。
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日商簿記1級の合格率
それでは、日商簿記1級の合格率について具体的に解説します。
過去10回の合格率
日商簿記1級の合格率は、商工会議所が運営するサイトで公開されています。
過去10回分のデータをまとめました。
開催回 |
合格率 |
162回(2022年11月) |
10.4% |
161回(2022年6月) |
10.1% |
159回(2021年11月) |
10.2% |
158回(2021年6月) |
9.8% |
157回(2021年2月) |
7.9% |
156回(2020年11月) |
13.5% |
153回(2019年11月) |
9.8% |
152回(2019年6月) |
8.5% |
150回(2018年11月) |
9.0% |
149回(2018年6月) |
13.4% |
※2020年6月開催分は中止
日商簿記1級は合格率が非常に低く、難易度の高い試験だといえるでしょう。
日商簿記1級は実質相対評価の試験
日商簿記1級の合格基準は前述したように、満点の70%以上です。
そのため、一見すると正答率70%以上で合格となる絶対評価の試験に思えます。
しかし前項で紹介したように、日商簿記1級の合格率は毎年10%前後で非常に安定しています。
回によって難易度や試験の内容に違いがあるにもかかわらず、合格率に大きな違いはありません。
したがって、日商簿記1級は上位10%が合格者になるよう調整されていると考えられます。
実質的には相対評価の試験であり、合格のためには上位10%以内に入る必要があるのです。
【参考】日商簿記3級・2級の合格率
参考情報として、日商簿記3級および2級の過去10回分の合格率を紹介します。
まずは3級です。
開催回 |
合格率 |
162回(2022年11月) |
30.2% |
161回(2022年6月) |
45.8% |
160回(2022年2月) |
50.9% |
159回(2021年11月) |
27.1% |
158回(2021年6月) |
28.9% |
157回(2021年2月) |
67.2% |
156回(2020年11月) |
47.4% |
154回(2020年2月) |
49.1% |
153回(2019年11月) |
43.1% |
152回(2019年6月) |
56.1% |
参照元| 商工会議所の検定試験 3級受験者データ(統一試験)
続いて2級の合格率を紹介します。
開催回 |
合格率 |
162回(2022年11月) |
20.9% |
161回(2022年6月) |
26.9% |
160回(2022年2月) |
17.5% |
159回(2021年11月) |
30.6% |
158回(2021年6月) |
24.0% |
157回(2021年2月) |
8.6% |
156回(2020年11月) |
18.2% |
154回(2020年2月) |
28.6% |
153回(2019年11月) |
27.1% |
152回(2019年6月) |
25.4% |
参照元| 商工会議所の検定試験 2級受験者データ(統一試験)
3級・2級と比較すると、1級の合格率が著しく低いことがわかります。
また、ここで注目したいのが合格率の安定性です。
3級・2級はいずれも、回によって合格率に大きな違いがあります。
一方で、1級は多少の変動はあれど、合格率は毎回10%前後といえる範囲です。
日商簿記3級・2級と比べると、1級の合格率がかなり低いこと・1級の合格率は安定性が高く実質的には相対評価の試験であることがわかるでしょう。
日商簿記1級の合格率を突破するためのポイント
日商簿記1級の合格率を突破するためのポイントとして、以下の3点が挙げられます。
- スケジュールを立てて計画的に勉強する
- 完璧を目指さず優先するべき分野に力を入れる
- 過去問や予想問題を多く解く
それぞれ詳しく解説します。
スケジュールを立てて計画的に勉強する
日商簿記1級の合格を目指すためには、スケジュールを立てて計画的に勉強することが大切です。
日商簿記1級は範囲が広い上に、ひとつひとつの難易度もかなり高くなります。
必要な勉強量が多いため、計画を立てずやみくもに進めるのは非効率となる恐れが大きいです。
また、合格までに必要な勉強期間は半年から1年と長く、長期にわたって勉強を続けることになります。
広範囲・高難易度・長期戦前提だからこそ、スケジュールの設定と計画的な勉強が必要です。
完璧を目指さず優先するべき分野に力を入れる
日商簿記1級の合格率を突破するためには、出題範囲すべての完璧を目指すのではなく、優先するべき分野に力を入れることが大切です。
日商簿記1級は実質として相対評価であるため、頻出分野やほかの受験生の正答率が高い分野を完璧に仕上げる必要があります。
一方で奇問や難問といった多くの受験生が解けない問題については配分されず、得点につながらない可能性が高いです。
したがって、難易度が高く正答率が低い部分については優先度が低めとなります。
このように日商簿記1級では、全範囲をバランス良く完璧に仕上げる必要はありません。
配点される可能性が高い部分を優先する必要があります。
試験本番でも、難問で解くのに時間がかかる・解けそうにない問題については後回しにするのが効率的です。
過去問や予想問題を多く解く
日商簿記1級合格のため、過去問や予想問題を解く時間を多く解くのがおすすめです。
日商簿記1級は問題数の多さ・難易度の高さと厳しい時間制限により、時間内にすべてを解くことすら容易ではありません。
そのため単に理解を深めるだけでなく、試験そのものに慣れる必要もあります。
過去問や予想問題は、本番の試験に近い形式です。
また問題の難易度が高いため、理解を深める意味でも非常に役立ちます。
勉強のスケジュールを立てる際は、過去問や予想問題に充てる時間をなるべく多めに確保しましょう。
まとめ
日商簿記1級の合格率は、10%前後とかなり低い数値です。
単純に範囲が広く難易度が高いだけでなく、上位10%前後が合格するよう調整される点も特徴として挙げられます。
日商簿記1級に合格するためには、スケジュールを立てた上での計画的な勉強が必要です。
また、上位10%以内に入れるよう、頻出分野や正答率が高い問題を確実に解けるよう仕上げる必要もあります。
全範囲を完璧に仕上げるのではなく、優先するべき分野に力を入れるのが効率的です。
日商簿記1級のポイントを押さえた上で、合格に向けて効果的な勉強をしましょう。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
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