税理士業界トピックス
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2012.06.20
「こども手当」「児童手当」の両方来た!? 減額支給だけじゃない増税のカラクリ
中学生以下のお子さんのいる方は今月、児童手当の支給通知書が届いているのではないでしょうか。
もよりますが、6月15日ごろに支給通知が送られたようで、今回は「子ども手当」「児童手当」の2通届いた家庭が多いと思います。 「児童手当って昔の制度では?」と、混乱した方もいるようですが、民主党政権になり、「子ども手当」が導入され、先般その「子ども手当」も見直され、新たな子育て支援制度として児童手当が復活したのです。ただ旧制度とは中身が違います。なので、ここでは新しい児童手当を「新児童手当」と明記します。
■気が付けば扶養控除も廃止
新児童手当は税制改正において、野田内閣が政権運営のため自民・公明の協力を得るべく見直したもので、所得制限及び名称変更を受け入れた妥協の産物です。 6月支給分は、平成24年2・3・4・5月分で、2・3月分が「子ども手当」としての支給となっています。所得制限が適用されるのは、次回の10月支給(6・7・8・9月分)以降からです。
新児童手当は、所得制限に該当しない場合、子ども1人当たりの支給額は月額で(1)3歳未満=一律1万5千円、(2)3歳~小学生=1万円(第3子以降は1万5千円)、(3)中学生=一律1万円。所得制限を受ける世帯でも特例措置として月額で3歳未満なら1万円、3歳以上(小学校修了前特例給付)なら5千円(第3子以降は1万円)受け取れます。
子ども手当は、一律月額1万3千円だったことからすると、3歳未満は増えましたが、3歳以上は実質減額です。民主党はマニフェストで「子ども手当」創設にともない子ども一人当たり2万6千円支給するとしていましたが、財源などの問題から急きょ創設当初は半額の1万3千円とし、翌年以降に2万6千円というプランを発表しました。
しかし、東日本大震災もあり予算ねん出が厳しくなり、子ども手当自体の見直しを行い、この新児童手当を創設しました。旧児童手当は3歳未満が1万円、3歳以上が5千円だったので「前よりは良い」と感じる方も少なくないでしょうが、実は所得税の年少扶養控除38万円が廃止され、今年6月からは住民税の年少扶養控除33万円も廃止されたので、旧児童手当を受け取っていた家庭のほとんどが増税になります。
■海外赴任なら支給されない
もともと、所得税及び住民税の扶養控除を廃止しても子ども手当で2万6千円支給するので増税にはならないと言っていたので、なんともやりきれない制度見直しになっています。
なお、子ども手当同様に、親の生活の拠点が海外にある場合、国籍が日本でも支給対象にはなりません。つまり、海外赴任の場合は支給対象外。さらに子どもが留学中は別として、海外で生活している場合は、親の居住地が日本でも支給対象になりません。逆に、親が海外赴任で子どもが日本にいる場合で、祖父母の家から通学しているケースでは、祖父母に児童手当が支給される場合もあります。
Profile 宮口 貴志
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。
公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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