税理士業界トピックス
税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します
2012.09.05
最近の税理士は試験免除者が増加中。
国税OB税理士は減少傾向に
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中小企業経営者の参謀役でもある税理士。その税理士業界の様相がちょっと変わってきました。一般的な感覚では、国家資格者なのでほぼ全員が難関試験をパスした人たちと考えがちですが、過去10年間を見てみると、税理士の新規登録者はキレイに5科目試験合格した人よりも、1科目以上試験免除を受けた人の方が多くなっているのです。「免除は優秀だから」という見方もありますが、この業界での免除は「試験にパスしないから」というのが一般的です。今や税理士業界全体を見回しても、その数は全登録者の3割。公認会計士の登録も毎年増加傾向で、監査から税務の流れは今後も続くものと見られています。
全国の税理士の平均年齢は60歳を超えます。おそらく62~63歳です。地方都市になれば、平均年齢はなんと70歳という地域もあります。これは、かつて税理士登録する多くが国税当局を退官した職員がほとんどだったからです。
現在の申告納税制度は、第二次大戦後のアメリカの占領下で制度化されたもので、そのときに納税者の税務申告をサポートする専門家として国家資格の税理士が誕生しました。当然、誕生したばかりの資格なので、需要に対する供給が追い付きません。つまり税理士の人数が足りなかったわけです。そこで、税務に関することなら「国税職員が良く知っている」ということで、一定以上のキャリアを積んだ国税職員に対して、無試験で税理士資格を与えることにしました。また、一定官職以上に早期退職を促す意味で、お客さんのあっ旋も行ってきました。
■お客のあっ旋がなくなり国税OB減少へ
あっ旋の報酬は、国税現役時の年収程度が目安とされました。税務署長を最後に退官、税理士として第二の人生を始めた人であれば1200万円~1300万円ぐらいが相場だったと思います。この相場はその後、かなり下がり、最終的には600万~800万円程度になりました。
こうした背景から、国税職員の多い業界となり、平均年齢を自然と押し上げることになりました。ところが、最近は、早期退職制度の見直し、お客さんあっ旋の中止などで退職後に税理士登録する人が激減しています。 最近の平均年齢の高さは、税理士業界も高齢化が進み、かつて試験に合格して税理士になった方々も時代と共に年齢を重ねているためです。
一方で最近増えているのが、1科目以上の試験免除を受けている、いわゆる「免除組」。税理士資格は5科目の試験にパスしなくていけませんが、例外的に大学院で修士号を取得するなどすると、一部科目の試験免除が認められます。平成13年以前は、法学系、経済学系の二つの大学院で修士号を取得すれば、まったく税理士試験を受ける必要がなく資格を取得することができました。業界では、無試験で税理士資格を取得した人を「ダブルマスター」と呼んでいました。社会的には、あまり知られていなかった手法で、税理士の息子さんなど家業を継ぐために、ダブルマスターが活用していました。
■希少性高まる全科目試験合格
試験免除組の新規登録者は、平成8年には年間551人でしたが、5年後の同13年には990人、同18年1109人、同23年1263人と増加傾向となっています。 国家資格者と言うと、難関試験にパスして資格を取得するものと考えがちですが、実際、試験合格して税理士登録をしている人は、同8年825人、同13年941人、同18年1072人、同23年909人とそれほどの上下していません。
試験免除者が増えている要因は、働きながら税理士を目指そうという人が増えているのと、試験そのものが難しくなってきているためだと言われています。かつては、毎年5科目一発合格者も輩出していましたが、最近はほとんどなくなったことを見ても、試験が難しくなっていることが想像できます。なので、現役の大学生は、公認会計士の方が合格しやすいので、税理士になりたくても、あえて公認会計士試験にチャレンジする人がほとんどとなっています。公認会計士になれば、無試験で税理士になれるためです。
ただ、最近の会計事務所業界では、税務経験のない公認会計士に対しての評価は高くありません。特殊な専門ノウハウや語学が出来れば別ですが、一時期、政策的に大量の公認会計士試験合格者を輩出してしまったことが、公認会計士の市場での価値を歪めてしまいました。その反面、税理士試験合格者は、引く手あまたです。とくに、20歳~30歳台の税理士は、全税理士の3割程度なので“金の卵”として希少性が非常に高くなっています。
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Profile 宮口 貴志
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。
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