税理士業界トピックス
税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します
2012.10.17
ノーベル賞って税金取られるの?
新アイデアの報奨金は何税!?
■ノーベル5賞は非課税だが・・・
日本人のノーベル賞受賞。山中伸弥京都大教授がこのほどノーベル医学・生理学賞を受賞したという嬉しいニュースが舞い込んできましたが、日本人としては2年ぶり。自分が受賞したわけではありませんが、日本人としての“誇り”を感じ、嬉しくなる出来事でした。そのノーベル賞を受賞した山中教授には、栄誉とともに800万スウェーデンクローナ(約9500万円)という賞金が授与されます。下世話な見方ですが、共同受賞という形なのでジョン・ガードン教授と折半することになりますが、この賞金に税金がかかるのでしょうか。
答えはノー。ノーベル賞は所得税法9条の非課税項目とされており、税金は納めなくてもよいことになっています。ノーベル賞が非課税となったのは昭和24年の湯川秀樹博士が日本人初のノーベル物理学賞を受賞した際までさかのぼります。このとき「賞金に課税するのはどうか」と議論が浮上、法律が改正され、所得税法に「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」と明記されました。
ここで面白いは、ノーベル基金から賞金が支払われる5賞は非課税なのですが、残りのノーベル経済学賞だけは課税対象ということです。
実は経済学賞は、スウェーデン中央銀行の働きかけで1968年(昭和43年)に新設。賞金はノーベル基金からではなく、同行が運営する基金から支払われることになったので、所得税法に明記された「ノーベル基金から」に該当しないため、経済学賞は課税対象となりました。
私もそうですが、一般の人にとってはノーベル賞というと夢の中の世界ですが、発明や斬新なアイデアという次元では大きなビジネスチャンスをもたらすことも少なくありません。
■アイデアへの報奨金課税は複雑
会社で従業員が研究開発を行って発明することを「職務発明」と言います。この職務発明による特許や特許を受ける権利は、原則従業員にあるのですが、会社には無償で特許発明を実施することができる実施権などが認められています。
職務発明を行った従業員は、その特許権や特許を受ける権利を会社に譲渡することも可能ですが、その場合、会社から相当の対価を受け取ることができます。この受け取ったお金は、税金的には所得区分が2つに分かれます。
まず、発明した従業員が特許権などを会社に譲渡した場合は、従業員がその譲渡によって一時に得た報奨金は期間に関係なく長期譲渡所得となります。一方、実施権のように、発明の成果に応じて継続的に支払われると、長期譲渡所得ではなく雑所得と扱われます。長期譲渡所得や雑所得は源泉徴収の対象にはなりませんので、原則確定申告が必要です(申告不要の場合を除く)。
現在、研究機関などの従業員の発明に関しては、出願補償金、登録保証金、実施保証金、特別保証金を支払うと定めている場合などもあるようですが、ひとつの発明のなかでも、出願補償金は譲渡所得、それ以外は雑所得に分かれるなど、取り扱いは意外に複雑です。
新しいアイデアを出した従業員に対して、会社が報奨金を支払う場合、通常業務の範囲内に関わる報奨金ならば税務当局は「給与所得となる」としています。
一方、工夫や発案などが自身の業務に関係のない従業員に対して支払う報奨金ならば、「一時に支払われるものであれば一時所得、その後の成果に応じて継続的に支払われる場合は雑所得」(同)としています。
また、工夫や発案がその従業員の業務の範囲内になるかついては「中身を見て判断する」というのが当局の姿勢です。
Profile 宮口 貴志
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。
公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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