税理士業界トピックス

税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します

2012.11.07

会計法人が税務調査されるとき
急激な売上増もチェック

税理士事務所が税務調査のターゲットにー。滅多にあることではありませんが、東京都内なら税務署単位で年に数件あるようです。選定の仕方は色々な噂を耳にしますが、もっともポピュラーなのが、税理士事務所や税理士法人とは別に「会計法人」を設立しているケースです。  会計法人は設立することで、所得分散による節税を図ることができます。しかしその一方で、税理士事務所との経費・収入配分などで曖昧さが目立ち、税務当局も過度な節税対策をしていると疑って見ているわけです。  とは言っても、相手は税金のプロの税理士、「よほどの勝算がなければ入らない」(元調査官)と言います。ただ、いざ調査となれば相手が税の専門家「税理士」だけに“深度”を持たせた厳しい調査が行われるのも事実。重箱の隅をつつくような指摘をされたという話もよく聞きます。

■会計法人がターゲットに

 税理士がやられるケースで最も多いのが収入配分。顧問報酬の大半を、税理士事務所から業務委託する会計法人に支払った場合、自分の会社に外注費を払いながら税理士報酬を圧縮できます。そのため、外注比率が高くなると調査官は「過度の節税をしているのでは」と睨んできます。  この場合、おおむね調査のストーリーは決まっています。収入配分が実際の仕事量に応じたものかを徹底的に調べます。まず調査官がチェックするのが、税理士事務所から会計法人に外注している業務内容。申告書の作成、税務相談など、税理士法2条の業務は税理士資格がなければ出来ないため、これらの業務報酬を会計法人への収入に付替えていないか確認します。 また、会計法人と税理士事務所の人件費についても調べます。会計法人のほとんどが税理士事務所と同じ住所地にありますが、この場合、職員も会計法人と事務所の両方を兼務していることがほとんどです。会計法人の収入割合が大きいのに、職員の給与が税理士事務所からほとんど支払われていたら、「実質的に会計法人の仕事割合は少ない」と見なし、否認される確率が高くなります。  パソコンやファックスなどの備品に関しても、その使用頻度が税理士事務所のほうが多ければ、会計法人の仕事量が少ないと判断されます。

■まことしやかに囁かれる適正配分

 それでは、適正な外注比率とはどの位なのでしょうか?  実は、外注費率の判断については、さまざまなウワサがあり「収入の5割以上が会計法人への外注費となっていると、調査対象として選定される確立が高くなる」とも言われています。 こうした“5割危険説”がある一方で、昔から囁かれているのが「税理士事務所『7』対会計法人『3』」説。税務調査を受けた税理士の話を総合すると、「7対3」はかなり安全圏のようです。 とはいうものの、税理士事務所と会計法人の業務配分が適正に行われ、その報酬割合も適正ならば、「9対1」でも認められている税理士もいます。 税務調査を受けたことのある税理士によると、「交際費や家賃、パソコンなどの備品、設備投資、職員等の給与などの配分が、適正だと判断されれば否認されることはない」と指摘しています。  これら対策についてOB税理士は、「会計法人と税理士事務所との粗利益をベースに、収益比率から経理処理をすれば問題にならないはず」と指摘します。 一方で、会計法人を業務受託の窓口として、報酬の一部を税理士事務所に付替えしているケースもありますが、このケースは、税務調査の対象となる確立が非常に高くなるようです。当局サイドの見方として、「税理士事務所という看板があるから業務を受注できる」という意識があるためです。  ただ、看板から対外的な広報、コンサルティング業務などほとんどすべてを会計法人で行っていれば、収入のほとんどを会計法人にしても調査対象にならないケースもあるようです。  会計法人に多額の報酬の付替えをしている事務所でも、「合理的な根拠、明確な計算方法で収入割合を定める」「会計法人、税理士事務所、関与先が三者契約を結び、報酬割合を決める」といった方法により、税務署が調査で是認するケースもあるようです。こうした事務所では、「税務相談や申告業務については税理士事務所の収入とし、その他の収入区分についても資料を揃え、顧問先との契約内容なども書面で残している」としています。

Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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