税理士業界トピックス
税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します
2013.01.29
スーツが必要経費で落とせる!?
知らないと損するサラリーマンの税金
今年1月から適用される税制上の措置がいくつかあります。なかでもビジネスパーソンに影響してくるのが特定支出控除の見直しです。
あまり聞きなれない制度ですが、ひと言で表現するならばサラリーマンの必要経費枠。「サラリーマンにも必要経費が認められるの」という人がいますが、一定の要件を満たしていれば、確定申告することによって納めた税金が戻ってきます。
■昨年まではハードルが高い制度
ただ、従来はそのハードルが非常に高く、適用できる人が極端に少ないのが現状でした。
ちなみに、旧制度で適用した人は、2004年⇒9人、2005年⇒13人、2006年⇒9人、2007年⇒7人、2008年⇒6人、2009年⇒9人です。
というのも旧制度というのは、給与所得控除額を超えるとき、特定支出としてその超えた金額を給与所得控除額に上乗せできるという内容のものでした。たとえば、年収800万円の人であれば、給与所得控除額が200万円になるので、この分を超えた分について特定支出を適用できたわけです。年収800万円の人が、年間200万円以上も必要経費を使うというのは本当に稀と言えます。
それも必要経費の枠は、① 通勤費、 ② 転勤に伴う転居費用、 ③ 研修費用、 ④ 資格取得費(弁護士、公認会計士などの資格は除く)、 ⑤ 単身赴任時の帰宅費用に限られていました。ここでの①の通勤費は、交通費が会社で支給されていない人が自身で交通費を負担している場合などです。
今回の改正で大きく見直されたのが、適用できるハードルが低くなった点です。
控除できる金額は、その年の特定支出の合計額が、以下のそれぞれの金額を超えるとき、その超える部分の金額を給与所得控除に加算して控除できます。
◎その年の給与等の収入金額が1500万円以下の場合 ⇒「給与所得控除額の1/2相当額」
◎その年中の給与等の収入金額が1500万円を超える場合 ⇒「125万円」
つまり、前述した年収800万円の人ならば、給与所得控除額「200万円÷2=100万円」を超えれば、その超えた分を特定支出として適用できます。
■仕事に必要な雑誌、衣料なら経費扱いに
また、今回の改正では、適用範囲についても前述内容に以下が加えられました。
⑥ 職務遂行に直接必要な資格取得費
⑦ 勤務に必要な経費(65万円が上限額)
⑥「資格取得費」については、従来認められなかった弁護士・公認会計士・税理士・弁理士といった資格取得のための費用についても、勤務に必要な資格で会社が証明するものであれば、結果として資格取得に至らなくても対象となります。
次いで⑦「勤務必要経費」ですが、国税当局によれば、基本的に職務に関連する書籍、定期刊行物などの「図書費」、制服・事務服・作業服など勤務場所において着用する「衣服費」、職務上関係のある者に対する「交際費・接待費その他の費用」となっています。
図書費については、仕事で必要な書籍、雑誌、新聞などが対象になります。ビジネスパーソンなら日経新聞を個人的に定期購読しているケースが多いですが、今年からは場合によっては特定支出として適用できるかもしれません。スポーツ紙(誌)でも、それが仕事で必要であれば大丈夫です。
「衣服費」については、スーツも特定支出として落とせます。社内規定でスーツを着用することが定められていること、または、明確な社内規定はないが、勤務場所でスーツなどの着用が慣行になっていれば、特定支出として適用できます。最近は、私服の会社も少なくありませんが、シャツやジーンズなど費用は、普段着にもなるので特定支出とは認められません。必ずしも職務遂行に直接必要なものではないと考えられためだそうです。
このほか、「交際費」についてですが、基本的に、特定支出となるのは 「接待等の相手方が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者であること」。「支出の目的が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者との間の親睦等を密にして取引関係の円滑化を図るものであること」。「支出の基因となる行為の形態が、接待、供応、贈答その他これらに類するものであること」という要件を満たしていることが必要です。つまり、取引先とのお付き合いで、自腹を切ってその場の支払いした場合です。これが同僚や部下など、社内でのお付き合いに関しては特定支出には該当しません。
前述してきた特定支出控除の適用に当たっては、確定申告時には、資格取得費も勤務必要経費も支払いを証明する領収書や会社の証明書が必要となります。国税庁からは会社が証明する用紙などが提示されていますので、適用に当たっては確認してください。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/871222/01.htm
適用時期は、平成25年分以後の所得税及び平成26年度分以後の個人住民税からとなっています。
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Profile 宮口 貴志
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。
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