税理士業界トピックス
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2013.03.12
栄枯盛衰!? 自民税調 かつての権勢は今・・・
自民税調は、自民党の政務調査会の一つ。政務調査会は、自民党が推進していく政策を検討する機関で、現在の会長は高市早苗衆議院議員。税制調査会のほかにも地域再生、 選挙制度、エネルギー政策合同会議などがありますが、何といっても格の上で“筆頭”と目されているのが税制調査会です。
■首相も頭が上がらない存在
自民税調はかつて「日本の税制の全てを決める機関」と言われました。小さいところでは各業界団体からの税制改正要望の取捨選択を一手に引受け、大きいところでは売上税導入、マル優(少額貯蓄非課税制度)廃止などをまとめるなど、多大な影響力を行使しました。実際、自民税調の意見のことごとくが、日本の税制改正に反映されています。 そんな“税界の黒幕”的存在だった自民税調が、最もその権勢を振るったのが当選17回の長老議員で党内最高の政策通だった山中貞則氏(故人)のころ。豪快な人柄、税制面での政策通ぶりは、数々の「山中伝説」を残しました。たとえば、一年生議員のころは名を上げるため先輩議員を殴るなどの行為を繰り返し、さらには、吉田茂首相(当時)に会釈したが無視された際には「こら待て吉田、なんだその態度は」と、乱闘寸前の騒ぎを起こしたことは有名です。このほか、中曽根康弘元首相よりも年少、かつ当選回数も少ない後輩でしたが、中曽根氏のことを死ぬまで「中曽根君」と呼び、中曽根内閣当時、税制改革に関して中曽根氏をバカ、マヌケ呼ばわりしたこともあります。長期政権を築いた小泉純一郎首相(当時)も子ども扱いで、税制改正については山中税調最高顧問(同)を訪ねて要望していたほどです。 このころは、中山最高顧問が軸になり、大蔵省で事務次官を務めた大物OBの相沢英之氏や宮下創平氏を筆頭とする大蔵OB議員が脇を固める「インナー」が、事実上の最高意思決定機関でした。「会議では意見こそ色々出るものの、最終的にはインナーが決めたことが結論となった」、「会議では、3~4回生程度の議員では口も利けない状態だった」、「山中、相沢の両氏は、あらゆる大蔵官僚よりも遥かに税制に精通していた」というのが、会議に出席した自民党代議士や元大蔵官僚の話です。これは、インナーを組織するベテラン、長老クラスの政策通が、自民税調の実権を握り、日本の税制の全てを取り仕切っていたことを裏付けた証言と言えます。 このように、自民税調で絶大な権勢を誇っていたインナーですが、山中元会長が亡くなり、相沢氏、宮下氏の大物OB議員が政界から去ってからはかつてのような力がなくなってきます。津島雄二会長のころには、14人の副会長を従えて会議を運営していましたが、かつての“豪腕”は鳴りを潜め、税制の全てを差配するというほどの力はなくなっていました。
■派閥の実力者が意見調整
自民税調のパワーが低下した理由については諸説ありますが、一番は剛腕を振るうだけの大物議員が居なくなったことです。津島会長のころは、インナーは各派閥の実力者が担当し、派閥内をまとめてきたのが現実でした。それも、2009年の総選挙で野党に陥落すると、力を発揮する場を失います(この選挙には津島会長は不出馬で政界を引退)。 今回、政権奪取により、その存在が改めてくクローズアップされた自民税調ですが、税制改正大綱の取りまとめは、税調会長の野田毅元建設相を軸とした、額賀福志郎元財務相、町村信孝元官房長官、高村正彦副総裁、宮沢洋一元副内閣相(元大蔵官僚。宮澤喜一元首相は伯父)のインナーが舵を取りました。実は、伊吹文明氏、石原伸晃氏、林芳正氏の3名がインナーだったのですが、伊吹氏が衆院議長、石原氏が環境相、林氏が農水相に就任、さらには、町村氏が病気療養となり、急きょ高村副総裁をメンバーに加えました。 党の派閥実力者を揃えた格好ですが、税制改正大綱をまとめる段階では若手議員が勉強会を開くなど、党税調に圧力をかける場面もありました。さらに今回は、公明との連携、民主党との協議など、どちらかと言うとインナーは調整役的な存在でした。今後、どれだけ税制において剛腕を振るうのか、今年の平成26年度税制改正で徐々に明らかになってくるものと思われます。ただ、「今、自民党内に昔のような大物議員はいない。剛腕は、日本維新の会の石原慎太郎代表ぐらい」(自民党若手議員)と言います。 ここ数年、党の政策を吟味する政務調査会の存在意義は薄れ、自民税調の機能も弱ってきたと言えます。日本の税制決定プロセスを巡る権力構造も転換期なのかもしれません。
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Profile 宮口 貴志
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。
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