税理士業界トピックス

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2013.04.09

“不良税理士”の取り締まり強化   税理士会幹部も容赦なく御用

昨年夏、大手パチンコ機メーカー「SANKYO」(東証1部、東京・渋谷区)の監査役で税理士だった男性(55)が、 自身が代表を務めていたSANKYO会長の資産管理会社での所得隠しなどが明らかになり、国税庁から税理士業務禁止の懲戒処分を受けたことが報道されました。この男性は、昨年12月8日付で税理士登録が抹消されました。

近年、こうした税理士の懲戒処分者が増えています。前述のような悪質なケースは稀ですが、ちょっとした不良行為でも処分されることが多くなっています。

国税庁でも平成24年度「達成すべき目標」において、「税理士等に対する的確な指導監督」として、「税理士制度に対する国民の信頼を確保するため、あらゆる機会を活用して注意喚起を行い税理士・税理士法人の非行の未然防止に努めます。具体的には、税理士会等との綱紀監察をテーマとした協議会等を開催し、注意喚起を行います。また、各種情報の収集に努め、税理士法に基づく調査を的確に実施するとともに、税理士法に違反する行為を行っている税理士・税理士法人等に対しては、懲戒処分等を行うなど厳正に対処します。なお、税理士・税理士法人等に対する懲戒処分等については、官報公告に加えて国税庁ホームページにおいても引き続き懲戒処分内容等を公表することとします」と明記し、厳格に取り締まっていくことを明確に示しています。

実際の処分件数は、僅か5年で倍近くまで増えました。下記の表をご覧ください。

懲戒処分者数(国税庁ホームページより)

会計年度 19年 20年 21年 22年 23年
処分件数 19件 30件 29件 37件 34件
(禁止) 5件 12件 7件 11件 8件
(停止) 14件 18件 22件 26件 26件
(戒告) 0件 0件 0件 0件 0件

税理士法では、税理士の懲戒処分について、不良行為の軽量によって(1)戒告、(2)1年以内の税理士業務の停止、(3)税理士業務の禁止の3種類を定めており、財務大臣がいずれかの処分を下すとしています。過去5年間を見ても、戒告はゼロとありませんが、「1年以内の停止」は急激に増えています。

国税当局の本気度は・・・

当局の不良税理士の取り締まりは主に、名義貸し行為や不注意による虚偽記載などが多いようです。

気になるのは、昨年末の発表された処分者です。名前を見てビックリしたのですが、単位税理士会の元会長の名前が記載されているではありませんか。また、単位税理士会の常務理事や、税理士会関連団体の元役員の名前も。「何かあったのか」と勘繰りたくなりました。税理士会の現職幹部も「かつてなら、よっぽどのことがない限り、元会長の名前がこんな形で官報に出ることなかったように思う」と話していました。一部では「ちゃんとしないと、幹部だろうがこうなるという、一罰百戒の意味があるのではないか」との指摘もあります。

 今回処分を受けた税理士は、「記帳段階でスタッフがきちんとクライアントにヒヤリングをはじめ処理していなかったことから、結果的に虚偽記載となってしまった」と話してくれました。管理責任が問われた形ですが、当局の取り締まりの本気度が伝わってきました。会計事務所は、スタッフが最前線で業務をしているだけに、管理体制はしっかりしておかないと、ミスを発見できない可能性もあります。「これまで大丈夫だったから」では、通じない時代になってきています。

Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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