税理士業界トピックス
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2013.06.11
税理士登録 急増する免除者と会計士 / 5科目合格は希少人材
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税理士の登録者数は、平成14年度から同24年度までの10年間で6万6674人から7万3725人となり、7051人(110.6%)増えました。このうち女性は、6784人から1万39人(148%)と、僅か10年で3255人増です。
税理士の登録者数を都道府県別にみると、半数以上の32都道府県で増加していますが、110%を超えている地域は、13都道府県になります(小数点以下の数字も見ていけば、10都道府県)。 人数の問題もありますが、率だけで見ていくと1位が滋賀の122.5%、2位が東京119.8%、3位が愛知114.8%となっています。一方で、減少率が1位だったのが、栃木▲16.6%、2位島根▲15.6%、3位和歌山▲15.2%となっています(図表1参考)。
<図表1>
増加率トップ10
1位 滋賀 122.5%
2位 東京 119.8%
3位 愛知 114.8%
4位 石川 114.3%
5位 三重 113.6%
6位 埼玉 113.4%
7位 佐賀 113.2%
8位 岐阜 113.0%
9位 沖縄 112.5%
10位 大阪 111.3%
減少率トップ10
1位 栃木 ▲16.6%
2位 島根 ▲15.6%
3位 和歌山 ▲15.2%
4位 秋田 ▲14.7%
5位 福島 ▲14.2%
6位 新潟 ▲13.8%
6位 徳島 ▲13.8%
8位 山形 ▲13.5%
9位 山口 ▲12.8%
10位 広島 ▲11.7%
登録者の増加地域については、3大都市とその周辺地域ということを除き、顕著な傾向はありません。ただ、減少率で見ていくと、東北、中国方面に集中していることが見て取れます。参考のために国税庁の法人所得金額の10年推移(平成10年~同20年)で減少している地域を見てみると、広島以外は、すべての地域で所得金額がマイナスになっています。
登録者を資格区分で見ていくと、急増しているのが大学院修士組などの試験免除者で、平成14年度には1万3935人で全体の19.75%しか占めていませんでしたが、24年度には2万3244人と全登録者の31.53%を占めるまで増えました。次いで増加しているのが、公認会計士で同14年度は5781人で全体の8.58%でしたが、同24年度は、8063人となり10.94%を占めています。
弁護士も微増しており、10年で330人から491人まで増えました。税理士登録全体に占める割合は0.66%と少ないですが、伸び率は非常に高いです。 試験合格者については、平成14年度には2万8955人が登録していましたが、同24年度には3万3814人まで増えています。全登録者に占める割合は、同14年度で43.01%となっており、同24年度で45.86%と僅かに増えています。
一方で激減しているのが、特別試験合格者、いわゆる国税出身者で1万7165人から8035人まで減っています。登録者全体の占有率を見ても、27.27%から10.9%まで半分以下に減っています。これは、早期退職する国税職員に対して行っていた顧問先のあっ旋が廃止されたことの影響が出ているものと考えられ、この傾向はさらに進むと予想されています。
税理士試験の登録者に目を向けてみると、試験合格者は毎年900人から1千人のペースとなっており、大きな変化は見られません。しかし、試験免除者については1千人から1400人程度が毎年登録しており、今後は試験合格者と試験免除者の全登録者に占める割合がほぼ同じになってくることが予想されます。
公認会計士登録者においても、平成18年の新試験スタート当初は3千人から4千人が合格していたことから、今後、この時期の合格者のさらなる税理士登録増が予想されます。
こうした税理士登録の状況を見ていくと、若い世代の試験合格者の採用は、かなり難しいものと想像されます。どの会計事務所でも欲しい人材であり、この層の争奪戦は激しさを増すでしょう。採用に当たっては、知名度をはじめ業務内容の魅力、報酬面での満足など、戦略的な準備が不可欠になってきます。女性の試験合格者は増えていますので、女性の積極採用も考えたいところです。さらには公認会計士資格者の活用をはじめ、キャリアのある税理士の採用など、会計事務所を成長させていくには、ビジネスの拡大と同様に、どのように人材を確保していくかが大きな課題になりそうです。
Profile 宮口 貴志
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。
公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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