税理士業界トピックス

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2015.03.11

所得、資産、病歴までも国が把握
ビッグデータとの連動でプライバシーはなくなる!?

いよいよ、国民1人に1つの番号が割り当てられる「社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)」の本格導入が始まろうとしています。

その昔は、「国民総背番号制度」と言われ、制度導入にはかなりの抵抗勢力がありました。時代と、そしてタイミングなのでしょう、名称を変えたことの効果もあり、意外にすんなりと制度導入となりました。

個人的には、「国民総背番号制度」と言ったほうがピンとくるのですが、マイナンバー制度と言わないと、政治家やお役人からは強く注意されます。よほど「国民総背番号制度」というのは印象が悪かったのでしょう。

そのマイナンバー制度ですが、具体的には個人情報を1つの番号で管理し、行政サービスを受ける際の手続きの簡素化や、それを行う行政の効率化が期待されています。また、効果が大きいと言われるのが、所得や資産状況の把握。脱税防止に期待できるという点です。要は国税当局の調査の手間が省けるわけです。

政府は3月10日、マイナンバーの金融機関への登録義務化を2021年をめどに検討する方針を明らかにしました。10日に閣議決定された「共通番号法改正案」では、金融分野でマイナンバーを利用することが可能とする規定を盛り込み、2018年に運用を開始、登録をするかどうかは当面、預金者の任意にしていく方針です。ただ、その後の状況により登録を促し、3年後をめどに義務化という流れのようです。

金融分野でのマイナンバー登録で、所得、金融機関情報が国税当局には筒抜けになります。国税当局では現在、財産及び債務の明細書、国外財産調書など、われわれの資産をすべて把握する方向で動いています。私個人としては、隠すほどの資産がないのですが、すべてを監視されるのはやはり抵抗があります。

マイナンバー制度が始まると、雇用保険や労災保険の手続き、健康保険や年金などの手続きでも利用されます。病歴なども分かってしまうため、国は国民一人ひとりのお金の流れから体まで把握できることになります。役人は、さまざまな行政手続きの効率化、公平・公正な行政サービスの提供が可能になるので、国民は便利になると言いますが、物は言いようですね。

今後のスケジュールとしては今年10月から個人番号と法人番号の通知が始まり、来年1月から順次、社会保障や税、災害対策の分野で運用を始める予定です。

ところで、マイナンバー制度導入により、企業においても給与・経理システムなどの既存データとマイナンバーを紐付けるなどのシステム改修が必要となります。

また、マイナンバーを含む個人情報は、「特定個人情報」として従来の個人情報以上に厳格な取り扱い義務が課せられます。企業がこれらの取り扱いに短時間で対応するには、社内規定の見直しなど体制や制度面での整備に加え、システムのセキュリティ強化を図る必要があるでしょう。クライアント情報を扱う会計事務所も例外ではありません。

会計人の中でも、マイナンバー制度を知らない人も少なくないようですが、情報漏洩のリスク面からも十分に理解しておく必要があります。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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