税理士業界トピックス

税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します

2015.09.08

相続案件は特化事務所でも占有率1%以下

相続増税となり、課税対象者が増えることで、会計事務所では相続税ビジネスに注目が集まっています。確かに、課税対象者が増える→申告件数が増える→税理士への依頼が増える、という構図が容易に考えられます。ただ、申告件数が増えても、課税対象者及びそれで報酬まで払って、会計事務所に仕事を依頼する人は増えるのか、個人的には疑問の目で見ていました。つまり、「適正報酬をいただけるお客は少ないのではないか?」と思っています。

ところが最近、相続ビジネスに力を入れている会計人と話をしていると、相続税の申告依頼件数が増え、「昨年の何割増しになった」「すでに昨年の件数を超えた」など、景気の良い話を聞きます。それも、「この数年にしては、高額報酬の依頼も少なくない」と聞いているので、相続マーケットは会計人にとって、やはり力を入れて取り掛かるに値するマーケットということなのでしょうか。

相続税の申告件数(国税庁発表)を見ていくと、結構面白いことが分かってきます。平成25年分(平成25年1月1日から同年12月31日)の相続税の課税対象者は、全国で約5万4千人。この数字を多いと見るか、少ないと見るかはそれぞれの判断に任せますが、実は、相続に特化した会計事務所でも、まだこのマーケットでの専有率は1%もありません。

会計人業界はもちろん、世間的にもよく知られている相続特化事務所のひとつに、税理士法人レガシィ(東京・千代田区、代表社員=天野隆氏)があります。広告およびマスコミでの露出度を見ても、他の会計事務所を圧倒していますが、ホームページで紹介されている相続税申告件数を見てみると、平成25年で531件、有料相談件数238件と、相続絡みだの仕事で年間769件も取り組んでいます。一般の会計事務所ですと、年間5件以下というのが平均的でしょうから、この数字は驚異的です。

そのレガシィといえども、全国的に見てみると、申告件数の専有割合は0.97%に過ぎません。そう見ると、会計事務所にとって相続マーケットは、まだ大手事務所に独占されている市場ではなく、地元の先生方が頑張っている状況ということが分かります。やり方次第では、十分にビジネス拡大の可能性を秘めている仕事ということになります。

この数字を見てください。平成25年分の数字になります。

相続案件は特化事務所でも占有率1%以下

上記を見て思うのは、開業している税理士数に比べ、かなりの件数があるということです。 件数だけを見れば、平成25年時点でも、相続マーケットはまだ開拓の余地はありそうです。相続増税での影響も出てくるでしょうから、今年以降はさらに件数が増えるでしょう。 とはいうものの、相続マーケットでは、申告に関するニーズはかなり低価格になっています。15万円、20万円でサービスを提供している事務所もあるようです。 報酬が下がったとしても、利益率の高い仕組みにサービス内容を見直す必要があるでしょう。

アメリカの多くの会計人はすでに、信託を活用した相続・年金対策をビジネスにしています。ビジネスとしては、日本より5~10年先を行っているので、やはり相続関係ビジネスは日本でも発展するものと思われます。取り組んでおいて損はなさそうですね。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

公認会計士・税理士・経理・財務の転職は
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