税理士業界トピックス
税金・会計に関するニュースを分かりやすく解説します
2015.10.22
過払い金返還でも税金問題
今日もですが、ラジオから、弁護士事務所や司法書士事務所のコマーシャルをよく聴くようになりました。
とりわけ、耳に残っているのが、某司法書士法人のフレーズ「法務大臣認定司法書士 阿○×」「18歳?で世界一周・・・云々」というもの。 ○ディー○法律事務所のTVコマーシャルもよく見ます。女性弁護士が登場しているバージョンは、本物の所属弁護士だそうです。
法律の専門化でもないと、そんなに過払い金を取り戻せるのか、半信半疑の方も少なくないと思いますが、各事務所のホームページを拝見していると、数百万円単位で取り戻せるケースが多いようです。
そもそも、これだけ宣伝できるのは、儲かっている証拠。弁護士事務所の代表は「かつてのように相談案件がない中、勝ち残っていくためには広告宣伝で圧倒していく。広告費は億単位になる」と言っていました。こんな宣伝費使っているのは会計事務所ではないと思います。士業事務所も変わってきたものです。
基本的なことですが、司法書士と弁護士、どちらも過払い金ビジネスではライバル関係にありますが、どこか違うのかご存知でしょうか? この辺、知っている方は意外に少ないのが実情です。
司法書士の場合、実は債権額140万円までしか扱えません。債務が140万1円以上なら、司法書士には代理権がないのです。この領域は弁護士しかできない代理権になります。司法書士が代理をした場合は、弁護士法違反(弁護士法72条)です。 弁護士は債権額に上限なく代理人となれるのですが、司法書士は、簡易裁判所の管轄に属する事件についてしか代理人となることができず、140万円が上限となります。債権額によって依頼先を変える必要があるわけです。
ところで、裁判所の判決により支払ったグレーゾーン利息の返還を受けた場合、その金額の税務上の扱いはどのようになるのでしょうか? 過払い金はそもそも、「過払い金」の字のごとく、払う必要のないお金を払ったので取り戻しただけです。したがって、返還を受けたとしても、その年に発生した所得に該当しません。返還金に税金をかけられたら、納税者も怒りますよね。 ただ、返還金に法定利息(支払いから返還までの期間)が付されている場合は、ちょっと違ってきます。つまり、その利息については、その支払を受けた日の属する年の雑所得に算入する必要があるのです。
さて、ここで注意したいのが、制限超過利息の支払額が各年分の所得の計算上必要経費に算入されている場合です。それが不動産所得や事業所得、または山林所得を生ずる「事業」によるものであるなら、元本に充当された部分の金額の合計額を、判決のあった日に属する年分の総収入金額に算入しなければなりません。
また、その所得が「事業」によるものでない場合は扱いが異なってきます。制限超過利息の支払額が事業規模に至らない不動産所得、または雑所得を生ずべき業務にかかる必要経費に算入されているときは、その制限超過利息の支払額が必要経費に算入されないため、必要経費に算入した各年分の所得税について修正申告しなければなりません。
「過払い金で儲かった」と、簡単には喜べない税務上の面倒な部分もあるので、注意したいものです。
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Profile 宮口 貴志
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。
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