税理士業界トピックス
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2016.02.12
税逃れの確信犯に加重措置 重加算税を10%アップ
平成28年度税制改正で加算税が一部見直されます。「どうせまた厳しくなるんでしょ」というぼやきも聞こえてきますが、正しくその通り。
ただ、今回の見直しは、それだけではありません。
現状、当初申告後に過少申告が発覚し、修正申告書を提出したとしても、「更正予知」までであれば特にペナルティはありませんでした。無申告の場合でも5%の加算税で済んでいます。ペナルティは、「更正予知」後に、調査に基づく是正で過少申告となれば10%の加算税、無申告なら15%の加算税が賦課されている状況です。
それが今回の平成28年度税制改正では、「更正予知」の前であっても、事前通知から「更正予知」までの期間については、新たな加算税の対象になります。
新たな加算税は、過少申告なら5%、無申告なら10%となっています。ただし、過少申告加算税も無申告加算税も、それぞれ加重される部分に係わる加算税の場合は、たとえば、過少申告加算税なら、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を越える部分については10%となります。施行は平成29年1月1日。
なぜ、こんな見直しが行われるかというと、平成23年に国税通則法が改正され、事前通知が義務化され、これをよいことに事前通知直後に多額の修正申告を行い、加算税の賦課を回避するケースが多発しているからだと言います。つまり、とりあえず、過少に申告しておいて、税務署からなんらか指摘されることが分かったら、正しい申告に修正するというもの。「過少申告は確信犯」が多数出てきたというわけです。
課税庁から出された具体的な事例としては、会社役員で事前通知直後の自主修正による増差所得が2億1千万円(2年分)となり、修正による増差税額が3100万円(2年分)だったケース。また、不動産貸付業では、事前通知直後の自主修正による増差所得が5900万円(3年分)で、修正による増差税額が1500万円(3年分)にもなったケースが紹介されています。事例には、無申告のケースとして、飲食業で事前通知直後の自主修正による増差所得が6700万円(2年分)で、修正による増差税額が2100万円(2年分)というのもあり、どうみても「確信犯」的なにも目立っています。
このよう理由から、新たな加算税の対象は、当初申告のコンプライアンスを高める観点から行われるため、源泉所得税に係わる事前通知後の納付については対象外です。
さて、今回の新たな加算税については、「事前通知」の考え方が重要になってくることは明白です。どこまでを事前通知として考えるか、単に税務調査を行う旨を伝えたら、事前通知になるのか?この点、課税庁としては、「調査を行う旨」「調査対象税目」「調査対象期間を通知した後」について、新たな加算税の対象にするようです。
このほか、今回の加算税の見直しでは、短期間に繰り返して無申告または仮装・隠ぺいが行われた場合において、重加算税の加重措置の対象になるとされています。
現行では、無申告の場合、無申告加算税が15%ですが、これが25%に。仮装・隠ぺいの場合は、重加算税(過少・不納付)35%から45%、重加算税(無申告)は40%から50%と、10%アップします。
上記の新たな加算税の要件としては、「意図的に無申告または仮装・隠ぺいを繰り返す」常習犯に限定しています。
この悪質な常習犯については、過去5年以内に無申告加算税また重加算税を賦課された人が、再び「無申告また仮装・隠ぺい」に基づく修正申告書の提出を行った場合としています。
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Profile 宮口 貴志
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。
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