税理士業界トピックス

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2016.02.16

国税庁が重視する通達、事務運営指針、文書回答・・・
公務員が縛られる絶対的取り扱い

お役人に取材していると、よく出てくる言葉に「通達(つうたつ)」「事務運営指針(じむうんえいししん)」があります。

一般には耳慣れない言葉だと思いますが、おおざっぱに言ってしまえば、両方とも、行政機関内部での上部組織から下部組織への“お達し”。お役所内部のことなので「一般には関係ない」と考えがちですが、税務行政においてはこの二つ、かなり重要であり、私たちの生活の中にとけ込んでいます。
このほかに、最近良く出てくるワードが、「文書回答事例」「質疑応答事例」「タックスアンサー」。国税庁のホームぺージ(https://www.nta.go.jp/index.htm)を閲覧してもらうと、左側コーナーに、前述したコーナーを発見できます。

さて、これらワードが何を意味しているのか?実は「通達」も「事務運営指針」も「文書回答事例」「質疑応答事例」「タックスアンサー」も、当局内部でどのように税務行政上取り扱っていくかを示している、大変に重要な情報なのです。
まず、通達と事務運営指針ですが、
・通達:「法令解釈」を行うにあたって課税庁が守るべき統一的な解釈
・事務運営指針:課税庁の「内部事務」を行うにあたって、課税庁全体が守るべき統一ルール。
通達は、法律・政省令や告示などとは異なり、行政機関内部における指針に過ぎませんが、課税庁はこれに沿って事務を行うので、事実上新たに義務を課したり、規制を設けたのと同じ効果があります。そのため、世間的には批判もこめて「通達行政」と呼ぶことがあります。

とくに、税務行政においては、法律、政省令だけでは具体的にどう考えたらよいのか判断に迷うことがあります。たとえば、相続財産となる宅地の評価においては、一定要件をクリアしていれば評価が8割減になる特例があるのですが、租税特別措置法第69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)にある、「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲」をどのように捉えたらよいのかが明確には判断できません。そこで、通達で「69の4-7 措置法第69条の4第1項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(以下69の4-8までにおいて「居住用宅地等」という。)とは、次に掲げる宅地等をいうものとする」として、説明をしています。
⑴ 相続の開始の直前において、被相続人等の居住の用に供されていた家屋で、被相続人が所有していたもの(被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族が居住の用に供していたものである場合には、当該親族が被相続人から無償で借り受けていたものに限る。)又は被相続人の親族が所有していたもの(当該家屋を所有していた被相続人の親族が当該家屋の敷地を被相続人から無償で借り受けており、かつ、被相続人等が当該家屋を当該親族から借り受けていた場合には、無償で借り受けていたときにおける当該家屋に限る。)の敷地の用に供されていた宅地等・・・以下所略
(詳細https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/sozoku/140115/pdf/01.pdf)

次いで「事務運営指針」ですが、要は税務調査などでバラバラな対応を職員がしないように、全職員が「守らなければならないルール」を定めたものです。
通達も事務運営指針も、役所内部の「内規」みたいなものなので、納税者を拘束するものではありません。しかし、課税庁の職員は、これを絶対守らなければならないのです。
「国家公務員法第98条」(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止) 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

これがどういう意味を持っているかというと、課税庁側の考え方は、ほとんど公開されているということです。手の内は見せているのですが、役人はこれらに縛られるわけですから、法律・政省令や告示同様に、重要な意味合いが有るのです。 このほか、課税庁が情報公開するようになって重視しているのが「文書回答事例」「質疑応答事例」「タックスアンサー」です。それぞれ、税務処理について質問を受け付け、その取り扱いで構わないか回答しているもの。文書回答事例は、より個別性が強く、質疑応答事例は、納税者から寄せられた照会等の中から他の納税者の参考となるものを税目別に整理し、照会事項及び回答をポイントが分かりやすいようにまとめて掲載されています。

タックスアンサーは、国税に関するインターネット上の税務相談室。税目ごとに調べることができ、平成24年度(平成24年4月~平成25年3月)だけでもアクセス件数が約5334万件もあります。 税務行政においては、法律、政省令以外にも、ざっとこれだけのものが関係してきます。税理士や公認会計士など税の専門家は、実務上、常日頃からこれだけのものを勉強しておかなければなりません。当然、税務裁判の判例や国税不服審判所の採決(裁判では判決といえるもの)事例も研究しておく必要があります。
勉強、勉強、また勉強、、、これが税理士、公認会計士の日常です。税理士、公認会計士を辞めるまで、この勉強が続きます。皆様、本当に勉強好きです。

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Profile 宮口 貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。フリーライター及び会計事務所業界ウオッチャーとして活動。株式会社レックスアドバイザーズ ディレクター。

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