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税理士の年収は独立開業、勤務先の所属法人、年齢や資格の有無によって違いが現れます。
税理士とは税務に関する専門家で、税理士法に定められた国家資格です。
難関資格であり、年収も高くなるイメージがあるでしょう。
実際にいくらもらえるのかは税理士を目指す上で気になるポイントです。
税理士という仕事には、年齢や働き方によって大きな違いがあります。
自分の理想と現実が乖離していることもあるかもしれません。
年齢や性別、他の職業などと比較しながら解説します。
1.税理士の平均年収は?
厚生労働省によって行われた、令和3年(2021年)賃金構造基本統計調査によると、税理士・公認会計士の平均年収はおよそ659万円です。
産業計における平均年収が489万円であり、税理士・公認会計士の平均年収は高い水準にあります。
税理士は、独占業務として「税務の代理」・「税務書類の作成」・「税務相談」を行っており、業務の専門性が著しく高いので、誰でもできる仕事ではなく、平均年収も高くなっています。
2.税理士の年齢別の平均年収
まずは税理士の年齢別の平均年収を見てみましょう。
税理士の平均年収を考えるにあたり、年齢別でどのように変化するのかに着目しておくと有用と言えます。年齢別の平均年収は以下の通りです。
年齢(歳) | 年収 | 人数(人) |
20~24 | 298万円 | 7 |
25~29 | 508万円 | 130 |
30~34 | 651万円 | 104 |
35~39 | 687万円 | 147 |
40~44 | 646万円 | 123 |
45~49 | 801万円 | 157 |
50~54 | 730万円 | 132 |
55~59 | 913万円 | 43 |
60~64 | 605万円 | 82 |
65~69 | 434万円 | 57 |
70~ | 326万円 | 15 |
出典:e-Stat「賃金構造基本統計調査 / 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
税理士の平均年収は国民全体の平均年収と比較して、どの年齢層においても約2倍ほど高いことがこの図表からわかるでしょう。
ただ、この統計には公認会計士も含まれています。
税理士のみの平均年収はこの結果よりも若干低い可能性があります。
3.税理士の性別ごとの年収の比較
性別でみるとどうなっているのでしょうか。
年齢と性別ごとの平均年収は以下の通りです。
(単位:万円)
年齢 |
男性 |
女性 |
20~24 |
335万円 |
281万円 |
25~29 |
491万円 |
330万円 |
30~34 |
638万円 |
450万円 |
35~39 |
698万円 |
420万円 |
40~44 |
715万円 |
557万円 |
45~49 |
848万円 |
528万円 |
50~54 |
610万円 |
695万円 |
55~59 |
1,133万円 |
474万円 |
60~64 |
569万円 |
569万円 |
65~69 |
434万円 |
― |
70〜 |
314万円 |
360万円 |
出典:e-Stat「賃金構造基本統計調査 / 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
税理士は資格職です。
女性は結婚・出産などで、時にはブランクが生じます。
そうしたケースでも、復職しやすい職業といえるでしょう。
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4.税理士の勤務先による年収の比較
税理士の年収は、勤務先によっても大きく異なります。
- 開業税理士……自身で事務所を開き、所長として業務を行っている税理士
- 社員税理士……税理士法人の社員として働く税理士
- 所属税理士……税理士事務所や税理士法人に雇用されている税理士
という区別があります。
勤務先別の具体的な年収について詳しく解説していきます。
参考:日本税理士連合会「第6回税理士実態調査報告書」
Big4税理士法人
Big4税理士法人とは、世界規模に展開する会計事務所のメンバーファームです。
- 「デロイトトーマツ税理士法人」
- 「KPMG税理士法人」
- 「EY税理士法人」
- 「PwC税理士法人」
の4つを指します。
これらの税理士法人に勤めている税理士の年収の目安は、次のようになります。
スタッフの年収
新卒で税理士法人に入社した場合、スタッフからキャリアを始めることになります。
スタッフの年収は、450万~650万が目安です。
シニアスタッフの年収
入社3~4年目で、シニアスタッフに昇進します。
シニアスタッフの年収は、600万~800万が目安です。
マネージャー・シニアマネージャーの年収
入力7年目以降になると、マネージャーに昇進する方も出始めます。
マネージャー以上の年収は、業務内容や個人の成果によって幅がありますが、一般的には1000万以上となる場合が多いようです。
ただし、マネージャーに昇進すると管理職扱いとなるため、残業代が支給されません。
そのため、一時的に年収が下がることもあります。
ディレクター・パートナーの年収
一般的には、ディレクター・パートナーの年収は最低でも1500万と言われています。
時には、数千万を超えることもあるようです。
大手・中堅税理士法人
大手・中堅税理士法人の年収は、Big4税理士法人と比べると若干低い傾向にあります。
その代わり、ワークライフバランスは取りやすい法人が多いと言われているのが特徴です。
一般的な年収の目安を見ていきましょう。
まず、初任給は月20~25万であることが多いです。
入社4~5年目で一段階上のステップ、シニアスタッフ・シニアアソシエイトに昇進できる可能性があります。
その場合は、500~600万が目安です。
さらに、マネージャー職に就くと年収はアップ。
年収1000万を超える場合が多いです。
開業税理士
独立開業し、みずから事務所を構えている税理士の平均年収は、およそ740万円となります。
ただし、全体の割合では300万円以下が31.4%と最も多いです。
1000万円以上の割合の合計は34.9%となっています。
独立開業の場合、中央値があるというより、年収が二極化している傾向にあるようです。
一般企業
一般企業での税理士の年収は、業界や企業規模によりますが、400万~600万が目安となります。
一般企業で経理担当として働く場合、他の従業員と同じ給与体系に基づいて給与が支給されることが多く、税理士資格があまり評価されない場合もあります。
5.税理士試験の合格科目数と年収の関係
税理士試験は、科目合格制度を採用しています。
その特性ゆえに働きながら勉強を続け、税理士資格取得を目指している方も多くいます。
科目合格者の年収はやはり税理士資格保有者と比較すれば低くなる傾向にあります。
一般的な合格科目数と年収の目安を紹介しましょう。
- 1~3科目合格者……平均年収360~390万円
- 4科目合格者……平均年収約450万円
最終的に5科目合格(税理士資格取得必要合格科目数)となれば、税理士未登録でも約500万円が一般的な相場です。
税理士として登録をすると、600万前後。
場合によっては1,200万円、大幅な年収アップが見込めます。
もっと詳しく知りたいという方は、こちらもご覧ください。
6.税理士と他の国家資格の年収の比較
ここでは、税理士と他の国家資格の年収を比較していきます。
税理士のデータは先ほど述べた通りですが、独立した開業税理士か、企業に所属しているか、など、状況によって異なります。
おおむね400万~700万が平均値と考えられるでしょう。
中には1000万を超える税理士もいます。
経験を積み、自分を高めることで収入をアップさせられる可能性は高いと言えるでしょう。
税理士と医師との年収の比較
高収入と言われる医師の平均年齢は40代半ばです。
平均年収は1380万となっています。
ただし、年収は病院の規模や開業医かによっても違います。
勤務医の場合450万前後ということもあるようです。
税理士と弁護士との年収の比較
会計士・医師と同じ三大国家資格のひとつ、弁護士。
平均年収は945万となっています。
大手事務所か、開業弁護士かといった要因で、収入に違いがある職業です。
約15年前に「新司法試験制度」が導入されたことで、試験の合格者数は急増しました。
しかし、難関資格には変わりありません。
税理士と公認会計士との年収の比較
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」においては、税理士と公認会計士はひと項目として統計されています。
参考までに、BIG4と呼ばれる4大監査法人で初任給30万、年収500~600万程度が相場です。
監査法人で勤務する公認会計士の場合、給与形態がはっきりしています
7.税理士の将来性は低いのか
税理士は、帳簿の記録・財務諸表や税務書類の記帳代行、顧客の作成した帳簿を巡回して監査を行います。
専門的知識を有する業務は多いですが、AIの台頭により職域が脅かされているのが現状です。
特に単純作業に関しては、AIが得意としている分野であり税理士業務だと記帳代行は過去の記録を参考に会計処理できるので、対象になってきています。
また、不景気により顧問料は安くなり取引先である中小企業は、2021年6月時点で336万社として2016年6月時点より1年あたり4.3万社減少している結果です。
税理士の職域は奪われ、収入を得づらい状況において、将来性が低いと言われるのも無理はありません。
ですが、税理士の業務は形式的な過去の記録だけではなく、実質的な将来設計も含んでいます。
従業員や社長の考えを踏襲した意思決定、過去の経験から得られる感覚の活用など、柔軟性を必要とした定性的な考えはAIが苦手な分野です。
財務諸表や税務書類を閲覧しながら行う、経営者へのアドバイスや節税対策など、コンサルタントはAIに奪われづらい業務と言えます。
今まで主流となってきた記帳代行や巡回監査から、より経営を身近で支えるビジネスパートナーとして活躍していけるでしょう。
税理士の独占業務は、確かにAIの台頭で仕事が奪われる部分はありますが、逆にAIができる業務は任せることで、税理士は新たな職域で働いていけるようになります。
税金や会計の見地から高度な意思決定を行える税理士は、未だ社会的なニーズがあり、将来性を見据えて大学を卒業して20代から積極的に働ける職業です。
8.税理士になるためには?
税理士になるためには、日本税理士連合会の税理士名簿に登録をする必要があります。
登録を行うためには、基本的に国家資格を有している必要があり、税理士試験に合格しなければなりません。
試験合格以外にも、公認会計士や弁護士は一定の手続きを行うことで、税理士として登録可能です。
また、いずれにしても会計に関する事務などの実務経験が通算して2年以上必要であり、税理士となる資格を有していても実務経験がなければ、登録できない点に注意しなければなりません。
税理士の業務内容
税理士の業務は、独占業務である税務を基本として、税務に必要な帳簿書類や財務諸表の作成、巡回監査や保険提案を行う場合もあります。
個人や会社のコンサルティングで、経営に関する問題発見・問題解決していくためのアドバイスをするのも税理士の業務です。
また、社外取締役として適切な会計処理の作成を手助けしたり、会計参与として財務諸表を共同で作成して株主や債権者の要請で開示します。
税理士は、業務を通じて得た税金や会計の知見を活用して、社会的に有益な業務を行っているのです。
関連リンク:税理士の仕事内容を詳しく紹介
税理士試験の概要
税理士試験の科目は、「簿記論」と「財務諸表論」の会計科目とその他税法科目が9科目の合計11科目です。
合格するためには、「簿記論」と「財務諸表論」、「所得税」または「法人税」で3科目の合格を必須として、5科目取得しなければなりません。
科目合格制なので、1科目ずつ受験できますが合格率は15~20%程度であり5人に1人しか合格できない難関資格です。
各科目の合格基準点は、満点の60%とされていますが相対評価の試験であり、毎回変動するので60%前後が合格基準点とされます。
令和5年(第73回)より会計科目である「簿記論」と「財務諸表論」に関しては受験資格がなくなりましたが、他の税法科目は未だ受験資格が必要です。
関連リンク:税理士試験の試験科目を紹介!
税理士試験の受験に必要な資格
税理士試験の受験に必要な主な資格は、「学識」・「資格」・「職歴」により分かれます。
「学識」による受験資格は、大学や短大等において一定の科目数や単位数の条件を満たしている者や、司法試験または公認会計士試験の短答式試験の合格者(平成18年度以降の合格者に限る)が該当します。
「資格」による受験資格は、日商簿記検定1級または全経簿記上級の合格者(昭和58年度以降の合格者に限る)です。
「職歴」による受験資格は、法人又は事業を行う個人の会計に関する事務、銀行・信託会社・保険会社等における資金の貸付や運用に関する事務、税理士・弁護士・公認会計士等における業務の補助事務、いずれかの業務を2年以上従事した者が該当します。
税法科目を受験する予定の人は、自分が受験資格を有しているのか、事前に確認を行っておくのが賢明です。
税理士試験に合格するための勉強方法
税理士試験の合格率は、15~20%であり闇雲な勉強では合格できないので、戦略的な学習が必要になってきます。
独学で合格するのも不可能ではありませんが、学習経験のない人が取り組むとどうしても非効率になりがちです。
専門性の高い学習なので、専門学校を活用してわからないところを相談できる環境で学んでいくのが望ましいと言えます。
試験日までに必要な行動を逆算して、緻密な学習スケジュールのもと学習を継続していくことが合格への近道です。
関連リンク:税理士試験に合格するためには大学で勉強するべき?
9.まとめ
税理士の年収について解説しました。
税理士の年収は、勤務先によって大きく異なります。
ただし、年収が低くても、忙しすぎず働きやすい勤務先であるというメリットも忘れてはいけません。
自分がどんな働き方をしたいのか、どんな税理士になりたいかを考えることが大切です。
就職や転職の際は年収以外の労働環境についても、よくリサーチすることをおすすめします。
転職エージェントを活用することを考えるのもひとつの方法です。
税理士として就職・転職を考えている人のひとつの目安になれば幸いです。
Profile レックスアドバイザーズ
公認会計士・税理士等の有資格者をはじめとする会計人材専門特化した人材紹介会社。
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