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この記事では、税理士法人について詳しく解説していきます。
監査法人・会計事務所・税理士事務所は、税理士法人と何が違うのでしょうか。
税理士法人とは
税理士法人とは、税理士法において「税理士業務を組織的に行うことを目的として、税理士が共同して設立した法人をいう」と規定されています。
ここでは、税理士法人について詳しく解説していきます。
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1. 税理士法人の性格
税理士法人とは、従来一人ひとりの税理士が個人で行ってきた税理士業務について、新たに法人形態でも行えるようにしたものです。
税理士業務を法人化することで、業務提供の安定性や継続性、より高度な業務への信頼性を確保することで、納税者利便の向上に資することを目指して2001年の税理士法の改正によって税理士法人を設立できるようになりました。
税理士法人の社員は全員が会社の業務進行、代表権限を有しており、全員が無限責任社員となります。
つまり、全員が会社の社長で会社の代表権があり、活動の結果について無限に責任を負うということです。
税理士法人は、法律上合名会社に準じた法人形態とされており、社員になれるのは税理士のみに限定されます。
2. 税理士法人の人的構成
税理士法人として活動するためには、その組織構成員は次のような者である必要があります。
- 社員は、税理士のみであること
(税理士法第48条の4第1項) - 社員の数は、2人以上であること
(税理士法第48条の1第2項) - 社員のうちに次のいずれかに該当する者がいないこと
①法第43条に規定する業務の停止の処分を受け、又は法第45条若しくは第46条の規定による税理士業務の停止の処分を受けた場合において、その業務停止期間を経過しない者
(税理士法第48条の4第2項第1号)
②法第48条の20第1項の規定により税理士法人が解散又は業務の停止を命じられた場合において、その処分の日以前30日内にその社員であった者で、その処分の日から3年(業務の停止を命ぜられた場合にあっては、当該業務の停止の期間)を経過しないもの
(税理士法第48条の4第2項第2号)
3. 税理士法人の業務内容
税理士法人の業務範囲は、税理士法で特別に設立が認められた特別法人であることを理由として、税理士法が定めた業務範囲に限定されています。
具体的に、税理士法人が行うことのできる業務は以下のとおりです(税理士法第48の5、第48の6)。
- 税理士業務(税理士法第2条第1項の業務)
- 税理士業務に付随する業務
(税理士法第2条第2項の業務) - 税理士法第2条第2項の業務に準ずるものとして財務省令で定める業務
- 税理士法第2条の2第1項の規定により税理士が処理することができる事務をその税理士法人の社員等に行わせる事務の受託
税理士法人は、個人の税理士と同様に、税理士法第2条第1項で規定されている税理士業務を基本的業務として行う(税理士法第48条の2)ことに加えて、定款で定めることによって、税理士法条第2項の業務、その他これに準ずるものとして財務省令で定める業務の全部又は一部を行うことができます(税理士法第48条の5、規第21条)。
税理士法第2条2項で規定されている業務(いわゆる2項業務)は、税理士業務に付随して行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務のことを言います。
この「その他財務に関する事務」のなかには、税務相談業務に付随して行う財務相談や、税理士業務に付随して行う社会保険労務士業務(社会保険労務士法第27条、同施行令第2条)なども含まれています。
また、法第2条第2項の業務に準ずるものとして財務省令で定める業務というのは、税理士業務に付随しないで行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務をいいます(基本通達48の5-1)。
ただし、付随しないで行う事務と規定しているものの、以下の点に留意してください。
- 税理士法人が税理士業務を組織的に行うことを目的として、税理士が共同して設立した法人であること(税理士法第48条の2)
- 法第2条第2項が税理士に与えられた会計の専門家という側面を尊重して設けられた規定であること
税理士法人は、税理士業務以外にも、様々な業務を行うことができますが、上記に照らして考えてみると、無用に業務範囲を広げることは適切ではないと考えられ、税理士業務と関係のない、例えば不動産貸付業や保険代理店業務等は行うことことは認められていません。
なお、2から4までは、あとで説明する定款記載が任意の事項であるものの、定款に記載がなければ、その業務を行うことができません。
つまり、税理士法人は2~4については、定款で定めていない限り行うことができません。
①記帳代行
ここからは、税理士法人で行うことができる業務内容について詳しく説明していきます。
記帳代行業務は、税理士法人においても行うことが可能です。
ただし、記帳代行を行う場合、税理士法人においては定款にあらかじめ定めていないと行うことはできないので注意してください。
②税務申告
税理士法人の最も基本となるのが税務申告です。
税務申告は、税務代理・税務署類の作成・税務相談を含みます。
この業務範囲は、税理士法第2条第1項で規定されているものです。
③巡回監査
巡回監査とは、税理士法人で契約を結んだ税務顧問先について、毎月もしくは期末の決算時に巡回を行って、会計資料並びに会計記録の適法性、正確性及び適時性を確保する取り組みのことを言います。
この業務は、税理士業務に付随して行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行に該当し、税理士法第2条第2項業務に該当します。
この業務に関しても、定款に定めが無いかぎり行うことができません。
④その他
税理士業務に付随して行う社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までの労働社会保険諸法令に規定する事務についても、税理法人は行うことができます。
ただし、行うことができるのは社会保険労務士法第2条第2項の業務のうち「その他財務に関する事務」のみであることに注意してください。
4. 税理士法人の業務執行
すでに説明したように、税理士法人で働くすべての社員は、すべての業務を執行する権限を有していると同時に、義務を負うことになっています(税理士法第48条11)。
この権利義務については、定款で定めても制限することはできません。
したがって、税理士法人で働くすべての社員は対外的な責任について無限責任を負うこととされています。
5. 社員の常駐
税理士事務所は、主たる事務所以外に事務所を設置することは認められていません。
しかし、税理士法人は主たる事務所とは別に従たる事務所を設立することができます。
ただし、主たる事務所とは別に従たる事務所を設置する場合には、その事務所の所在地を含む区域に設立されている税理士会の会員である社員を常駐させなければなりません(税理士法第48条の12、税理士法基本通達48の12-1)。
6. 社員の競業禁止
税理士法人の社員は競業禁止規定によって、他の税理士法人の社員となってはならないと規定されています(税理士法第4条の14)。
2つ以上の税理士法人の社員を兼ねてしまうと、税理士法人間で不要な利害対立を引き起こす可能性があり、納税者等依頼者との信頼関係からも禁止されています。
社員の競業禁止規定は、強行規定であるため、他の社員の同意があっても解除されることはありません。
7. 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び会社法の準用等
税理士法人は、会社法、特に持分会社のうち合名会社に関する多くの規定が準用されます。
税理士法人は何が違う?税理士法人の社会的意義を解説!
ここでは、税理士事務所、監査法人、会計事務所と税理士法人との違いを明確にしていきます。
税理士事務所との違い
税理士として登録する際に、税理士の方は、開業税理士、社員税理士、所属税理士(補助税理士)という3つの区分から選択して登録しなければなりません。
税理士法人に所属しているのは、基本的に社員税理士と所属税理士ですが、税理士事務所に所属しているのは、開業税理士と所属税理士です。
税理士事務所は、一人の税理士が開業税理士として活動しています。
一方、税理士法人は2人以上の税理士が共同で活動を行っています。
税理士事務所は2つ以上の事務所を持つことができませんが、税理士法人であれば、先にも説明したように、従たる事務所を設置することができます。
監査法人との違い
監査法人は、会社の監査を共同で行うことを目的に設立された会社であり、税理士法人は、税理士業務を共同で行うことを目的に設立された会社です。
したがって、会社が設立される目的が違うということになります。
会計事務所との違い
会計事務所は俗称であり、一般に会計事務所と呼ばれている会社は、税理士事務所であるケースが多いです。
したがって、会計事務所と税理士法人の違いは、税理士事務所と税理士法人の違いとほとんど同じです。
税理士法人で働くにはどうしたらよい?
税理士法人で働く条件として、税理士法人は、社員全員が税理士でなければならない法人です。
したがって、税理士資格を持っているかどうかが重要なポイントとなります。
税理士資格を持っている場合
税理士資格を持っている場合、税理士法人で働くためには、社員税理士として登録区分を変更する必要があります。
簿記資格を持っている場合
簿記資格を持っている場合、税理士試験に合格して税理士試験を突破しないと、税理士法人で働くことはできません。
アルバイトなど、有期雇用での契約はあっても、社員として働くことはできないので注意が必要です。
税理士法人の設立手続
ここまで、税理士法人は、合同会社という特殊な会社形態の会社であると説明してきました。
そのため、税理士法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記を行うことで成立します(会社法第48条の9)。
以下では、税理士法人の設立手順について解説していきます。
1. 定款の作成
税理士法人を設立する場合、会社のルールについて定めた定款(ていかん)を作成しなければなりません。
定款には、絶対的記載事項と呼ばれる、必ず記載しなければならない事項と、記載しなければ効力を生じない事項(相対的記載事項)、社員になろうとする税理士が任意に定められる事項(任意的記載事項)、という3つの要素を記載します。
税理士法人を設立する場合には、絶対的記載事項について記載しなければなりません。
税理士法人が設立の際に記載しなければならない絶対的記載事項は次のとおりです。
- 目的
- 名称
- 事務所の所在地
- 社員の氏名及び住所
- 社員の出資に関する事項
- 業務の執行に関する事項
※業務を執行する権限は税理士法人の社員全員にあり、その権利義務を制限することはできません。
※税理士法人は、税理士でない者に税理士業務を行わせてはなりません。
2. 税理士法人の設立登記
すでに説明したように、税理士法人は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します(税理士法第4 条の9)。
定款の作成・認証、出資金の払込みその他設立に必要な手続きが完了したあと、主たる事務所の所在地において登記を行うことで、税理士法人として認められます。
3. 日税連への届出
設立登記をした税理士法人は、税理士法第4条の6第3項の規定によって、税理士会の会員となります。
日税連への届出は、登記の日から2週間以内に届けなければならないことになっていますので注意してください。
まとめ
税理士法人は、社員全員が税理士であり、無限連帯責任社員によって構成される組織です。
税理士事務所と違い、税理士法員は社員数が2名以上である必要があるので、少なくとも2名以上の税理士で設立することになります。
税理士法人の社員となるためには税理士であることが必要です。
税理士法人は、税理士事務所と同じ様に、税理士法第2条1項に定められた税務代理、税務書類の作成、税務相談を基本的な業務とする一方で、定款で定めることで、それに付随する業務についても行えるようになります。
定款で定めないと行うことはできないので注意してください。
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